子なし夫婦の離婚はどう進める? メリット・デメリットはあるか
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姫路市が公表する「数字で見る姫路市の位置」によると、姫路市では令和3年度に940組の夫婦が離婚しています。厚生労働省が公表している「人口動態調査」によると、全国で22番目に離婚が多かったようです。
離婚する夫婦の家庭環境は、子どもがおらず夫婦だけの世帯であったり子どもがいたり、二世帯住宅であったりとさまざまです。そこで本コラムでは、子なし夫婦が離婚をするメリット・デメリットから、離婚を進めるための手順や注意点について、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。
1、統計からみる「子なし離婚」
未成年の子どもがいる夫婦と子どものいない夫婦の離婚では、どのような違いがあるのでしょうか?
厚生労働省が公表する「令和4年度 離婚に関する統計の概況」によると、令和2年中に離婚した夫婦のうち、親権を行使する必要がある子どもがいない夫婦の離婚は全体の42.39%を占めます。子はかすがいということもありますが、子どもの有無と離婚の間に大きな関係はなさそうといえるでしょう。
また、子どもの有無にかかわらず、同居期間別の離婚率をみると、同居期間「5年未満」の離婚率が最も高く、以降は同居期間が長くなるにつれて離婚律は減っている傾向があるものの、同居年数「35年以上」を超えると再び離婚率が増加する傾向があるようです。なお、最も多い離婚理由は、男女問わず「性格の不一致」です(出典:「令和4年度 司法統計年報 家事編 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所」)。
2、子なし離婚のメリット・デメリットとは
子なし離婚のメリット・デメリットは、どのような点にあるのでしょうか。
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(1)メリット
子なし離婚のメリットには、まず「再婚しやすいこと」が挙げられるでしょう。
再婚にあたっては、現在はお互いの子どもを連れて再婚するステップファミリーのような家族の形もあります。しかし交際相手だけでなく、血縁関係にない子どもとも家族になることは、そう簡単なことではありません。
その点、子なし離婚の場合には当然子どもに関する事情を考慮する必要がないため、子あり離婚の相手と再婚するよりも、再婚までのハードルは下がるといえます。
また子なし離婚では、「離婚までに決めることが少ない」というメリットもあります。子どもがいれば、親権や養育費、面会交流などについても決める必要があります。その上、未成年の子どもがいる夫婦は、親権者が決まらなければ離婚することができないので、離婚まで時間がかかる可能性があります。 -
(2)デメリット
子なし離婚のデメリットは、「経済的に自立しなければならなくなること」が挙げられるでしょう。たとえば結婚している間は、専業主婦(主夫)や扶養控除内で働くなど、家庭のために貢献していたとしても、離婚後は自身の収入で生活していかなければなりません。
しかし長期間のブランクがある状況であれば、新たに職を見つけようと思っても、簡単に見つかるものではありません。また職に就けたとしても、継続して雇ってもらえる保証もありません。
なお、今までは負担が軽減されていた年金保険料や各種税金についても、ご自身で直接支払っていかなければならなくなります。
また「バツイチになること」をデメリットと考える方もいることでしょう。近年は夫婦の3組に1組が離婚する時代ともいわれ、離婚は珍しいことではなくなっています。しかし交際相手やその周囲が初婚の相手を望むような場合には、離婚歴がデメリットになるといえるでしょう。
3、子なし離婚を決意したときにやるべきこと
離婚を決意したときには、相手に伝える前にやるべきことがあります。
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(1)経済的に自立する準備
離婚後には、基本的にはご自身の収入だけで生活していかなければなりません。しかし専業主婦(主夫)などであった場合には、急に十分な収入を得ることは難しいため、経済的に自立する準備を計画的に進める必要があります。
たとえば資格を取得したり、知人などを頼って就職先を探したりして、離婚後も収入を確保できるようにすべきといえます。
その際には、離婚後の家は借りるのか実家に戻るのかなど、具体的にシミュレーションして必要な生活費を計算して、どの程度収入が必要になるのかを把握しておくとよいでしょう。 -
(2)慰謝料や財産分与などの離婚条件を考える
子なし離婚では、子どものいる夫婦よりは離婚時に決めることは少ないものの、財産分与や慰謝料、年金分割など決めなければならない重要な問題があります。
財産分与と慰謝料は、混同している方も少なくありませんが、別のものです。
財産分与とは、夫婦が結婚生活で一緒に築いてきた財産について、離婚に伴ってそれぞれに分けることをいいます。財産分与の対象になる財産は、実質的に夫婦共有となる財産であればよく、財産の名義が夫婦のどちらになっているかは関係ありません。財産分与を行う場合の割合は、基本的に夫婦それぞれ2分の1ずつとされることが多いものです。
一方、慰謝料は、相手の不法行為によって精神的な損害を受けた場合にのみ請求できるものです。たとえば相手の不倫が原因となって、夫婦関係が破綻し離婚することになったのであれば、離婚慰謝料を相手に請求することができます。ちなみに離婚慰謝料は、不倫相手に請求することもできます。またDVやモラハラ、生活費を渡さないなどの悪意の遺棄なども、不法行為になり慰謝料請求できる可能性があります。
つまり財産分与は夫婦の財産の清算であり、慰謝料請求は相手に一定の非があるときにのみ認められるものということです。
相手に離婚の決意を伝えるときには、財産分与や慰謝料請求などの離婚条件も事前に考えておくと、スムーズに話し合いを進めることができます。 -
(3)証拠の収集
相手に離婚したいと伝えても、離婚を拒否される可能性もあります。
相手が断固として離婚を拒否し続けた場合には、「4、子なし離婚の流れ」でご説明しますが、最終的には裁判で離婚の可否を判断してもらうことになる可能性があります。
裁判では、証拠などから民法で定めた法定離婚事由に該当すると判断されたときには、離婚を認める判決が出されます。したがって、裁判などを視野に入れる前、離婚を申し入れる前の時点から離婚理由を裏付ける証拠を収集して、裁判になったときでも証明できるようにしておくことが望ましいといえます。
また慰謝料請求においても、相手が不倫などの不法行為があったことを認めない可能性もあるので、証拠を日頃から可能な限り収集しておくことは非常に重要です。
4、子なし離婚の流れ
最後に、子どもがいない夫婦の離婚の流れをみていきましょう。
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(1)協議離婚
離婚は、夫婦が協議してお互いに合意できれば、離婚届を市区町村役場に提出して成立させることができます(協議離婚)。子どものいる夫婦の場合には、離婚届に親権者の記載が必要になるので、離婚に合意していても親権者が決まらなければ離婚できません。
子なし離婚ではこのような問題は生じないため、相手が離婚に合意さえしていれば、離婚を成立させることはできます。
もっとも、早く離婚を成立させたいからといって、離婚条件を取り決めないでいたり、離婚後に取り決めるつもりでいたりすることは、おすすめできません。離婚後は、相手と連絡が取りにくくなり、条件の取り決めにも積極的に対応してもらえず、不利益を受ける可能性があります。
したがって離婚成立までに、財産分与や慰謝料などの離婚条件についても取り決め、離婚協議書などの書面を作成しておくことが大切になります。 -
(2)調停離婚
夫婦での話し合いがまとまらない場合や話し合いができない場合には、家庭裁判所の離婚調停を利用して解決を図ることもできます。
離婚調停では、調停委員が夫婦それぞれから話を聞いて、アドバイスや解決策の提示などを行います。しかし調停は、あくまでも当事者の話し合いによって解決する場です。そのため夫婦の一方が離婚に合意しなければ、調停は成立しません。
なお夫婦双方が調停で離婚に合意できた場合には、調停離婚が成立します。 -
(3)裁判離婚
離婚調停が不成立に終わったときには、裁判を起こして判決による離婚を求めることができます。離婚調停を経ずにいきなり離婚裁判を起こすことはできないので、注意が必要です。
裁判では、先ほど触れましたが、法定離婚事由の有無によって離婚の可否が判断されます。
法定離婚事由に直接的に当てはまらなかったとしても、さまざまな事実から「婚姻を継続しがたい重大な事由があること」という理由に該当すると判断される可能性はあります。
裁判は、特に法律の専門知識が必要になるので、弁護士に依頼して進めるケースがほとんどです。
5、まとめ
子なし離婚が離婚するケースでは、メリットやデメリットを検討する方もいるでしょう。何をメリットととるのかは個人の価値観によるところもあり、よく検討することが大切です。いずれにしても、離婚を検討している場合には、できる限り離婚条件や離婚後の生活もしっかりと考えて準備を進めていくことをおすすめします。
離婚の決意が固まったときには、スムーズに離婚するためにも、弁護士に相談することがひとつの選択肢になるでしょう。ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスでは、離婚における財産分与や慰謝料の問題を手厚くサポートしています。
弁護士が丁寧にお話をうかがいながら、ご依頼者にとってベストな内容で離婚を進められるように解決策をご提案します。ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています