任意整理から個人再生に切り替えることは可能? メリット・デメリット
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裁判所が公表している司法統計によると、令和3年に神戸地方裁判所に申し立てのあった個人再生申し立て事件(小規模個人再生・給与所得者等再生)の件数は、539件でした。
債務整理には、主に、任意整理、自己破産、個人再生の3つの方法があります。最も利用されているのは返済期間を延長するなどして完済を目指す任意整理ですが、収入の減少やインフレによる生活困窮で、返済が苦しくなることもあります。
このような場合には、個人再生への切り替えができる可能性があります。では、任意整理から個人再生に切り替えた場合には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
今回は、任意整理から個人再生に切り替える際の条件やメリットとデメリットについて、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。
1、任意整理から個人再生に切り替えるための条件は?
そもそも任意整理から個人再生に切り替えることはできるのでしょうか。また、任意整理から個人再生に切り替えるためにはどのような条件を満たす必要があるのでしょうか。
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(1)任意整理から個人再生への切り替えは可能
任意整理とは、債権者との交渉によって、返済期間の延長など、無理のない返済方法を求めていく債務整理のひとつです。自己破産のように借金をゼロにする効果はないため、任意整理後は、新たな返済条件に従って返済を続けていかなければなりません。
しかし、その後収入が減少してしまった、収入源がなくなってしまった等により、返済を続けることができなくなるケースもあります。そのような場合には、任意整理から個人再生など、他の債務整理に切り替えができる可能性があります。 -
(2)任意整理から個人再生に切り替えるための条件
任意整理から個人再生に切り替えるときには、切り替えにあたって特別な条件が必要とされるわけではありません。
任意整理と個人再生は、別々の債務整理の方法となりますので、債務者の方が個人再生を利用する条件を満たしていれば、任意整理から個人再生への切り替えが可能となります。
個人再生を利用するための一般的な要件としては、以下のものが挙げられます。- 安定した収入を得ていること
- 再生計画に則した弁済が可能であること
- 住宅ローン以外の借金総額が5000万円以下であること
なお、給与所得者等再生の手続きを利用する場合には、上記の要件に加えて、給与またはこれに類する定期収入の見込みがあり、その変動が小さいことも要件とされます。
2、個人再生手続きへ切り替えた方が良いケース
以下のようなケースでは、任意整理から個人再生への切り替えを検討した方がよいでしょう。
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(1)債権者との合意が困難なケース
任意整理は、債権者との合意によって返済方法の変更をしていきます。債権者には、任意整理に応じる法的義務はありませんが、任意整理を行うためには債権者の合意が不可欠の要素となります。
そのため、債権者の合意が得られない場合には、任意整理の手続きを進めていくことは困難です。個人再生への切り替えを検討した方がよいケースといえるでしょう。 -
(2)想定よりも借金額が多かったケース
当初は任意整理の方針で手続きを進めていったものの、債権調査の結果、想定していたよりも借金額が多かったというケースがあります。任意整理は、主に将来利息のカットや月々の返済額の減額などによって、分割弁済を行っていく方法ですので、借金総額を減免する効果はほとんどありません。
そのため、当初想定していた借金額であれば返済の見込みがあったとしても、想定よりも借金額が多かった場合には、任意整理での返済が難しいことがあります。
このような場合には、債権調査の結果を踏まえて、任意整理から個人再生に切り替えを検討することになります。 -
(3)任意整理後に返済が困難になったケース
任意整理を行って、債権者との間で合意が成立した場合には、合意内容に従って月々の返済を行っていくことになります。借金総額にもよりますが、任意整理によってすべての返済を終えるまでには数年程度を要することが通常ですので、その間に転職や不景気の影響で収入が減少してしまうこともあります。
収入が減少してしまうと、当初の予定どおりの返済を続けていくことが難しくなりますので、任意整理から個人再生への切り替えを検討する必要があります。
3、任意整理から個人再生に切り替えるメリット・デメリット
任意整理から個人再生に切り替える場合には、以下のようなメリットとデメリットがありますので、それを踏まえた上で検討をすることが大切です。
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(1)任意整理から個人再生に切り替えるメリット
任意整理から個人再生に切り替えることによって、以下のメリットが得られます。
① 借金総額が大幅に減額される
任意整理とは異なり、個人再生では、借金総額を大幅に減額することができるというメリットがあります。どのくらい減額されるかは、借金の総額によって異なりますが、最大で借金の9割を削減することが可能です。
個人再生は、減額後の借金を原則3年、最長5年で返済をしていくことになりますが、大幅に借金が減額されることで、返済の負担も大幅に軽減されることになります。
② 債権者の意向に関わらず利用可能
個人再生は、裁判所を利用した法的手続きになりますので、債権者の意向に関わらず利用できます。一部の債権者からの合意が得られず、任意整理を諦めたケースであっても、個人再生であれば債務整理を実現することが可能です。
ただし、小規模個人再生の手続きを選択する場合には、債権者数の2分の1以上の反対があり、かつ反対した債権額が全体の2分の1を超えていると再生計画案は可決されません。
③ 住宅ローン特別条項の利用で自宅を残せる
個人再生では住宅ローン特別条項という制度があります。他の借金の負担が大きく、住宅ローンの返済が困難になっているような場合には、住宅ローン特別条項を利用すれば、自宅を残したまま住宅ローンを除いた借金の整理をすることができます。 -
(2)任意整理から個人再生に切り替えるデメリット
任意整理から個人再生に切り替えることによって、以下のようなデメリットが生じます。
① 保証人に請求がいってしまう
任意整理では、債務整理の対象に含める債権者を自由に選択することができますので、保証人付きの債権については任意整理の対象から除外するということも可能です。
しかし、個人再生は、すべての債権者を債務整理の対象に含めなければなりませんので、保証人付きの債権がある場合には、個人再生の対象に含めた結果、保証人に請求がいってしまうというデメリットが生じます。
② 官報に個人情報が掲載される
個人再生をすると官報に住所、氏名などの個人情報が記載されることになります。ただし、一般の方であれば官報を読むことはありませんので、官報に掲載されたからといって個人再生をしたことが周囲の人に知られるという可能性はほとんどありません。
4、債務整理の方法で迷われたら弁護士にご相談を
債務整理の方法で迷われている方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)最適な債務整理の方法を提案してもらえる
債務整理の方法には、任意整理、個人再生、自己破産の3種類があり、それぞれメリットとデメリットがありますので、ご自身の状況に応じて最適な債務整理の方法を選択することが大切です。
弁護士であれば、収入、資産状況、家族構成、負債総額などを丁寧にヒアリングした上で、最適な債務整理の方法を提案することができます。最適な債務整理の方法を選択することによって、借金の負担を軽減する効果もより高くなりますので、借金でお困りの方は、まずは弁護士に相談をするとよいでしょう。 -
(2)債権者との交渉や裁判所への申し立てを任せることができる
債務整理の手続きを弁護士に依頼すれば、その後の債権者とのやり取りや裁判所への申し立てなどの手続きはすべて弁護士に任せることができます。弁護士からの受任通知を受け取った債権者からは、一時的に取り立て行為がストップしますので、その間は安心して生活することができるといえます。
債務者個人でこれらの手続きをすべて行うのは非常に困難ですので、債務整理をお考えの方は、弁護士に依頼することをおすすめします。
5、まとめ
任意整理を選択した方の中には、その後の経済状況の変化によって返済を継続していくことが難しくなる方もいます。そのような場合には、任意整理から個人再生に切り替えて債務整理の手続きを進めていくことによって、従来よりも大幅に借金返済の負担を軽減することが可能になります。
ただし、個人再生を利用する場合には、安定した収入が必要などの要件もありますので、ご自身が個人再生を利用することができるかどうかについては、弁護士に判断してもらうのがよいでしょう。
最適な債務整理の方法を選択するためにも、まずは、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています