債務整理すると不動産を競売しなければならないの? 弁護士が解説
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借金が返せなくなると、自宅不動産などが競売にかけられてしまうのではないかと危惧している方は少なくないでしょう。
実際に、債務整理を行ったことが原因で、不動産が競売されてしまうケースはありますし、姫路市、相生市、赤穂市など近隣の市区町村で競売にかけられた不動産物件は、神戸地方裁判所姫路支部で取り扱っています。もし不動産の競売を避けたい場合には、弁護士に相談して債務整理の方法をよく検討することをすすめします。
本コラムでは、不動産が競売される場合のパターンや、競売手続きの流れ・任意売却のメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。
1、不動産が競売になる場合とは?
不動産が競売にかけられるのは、基本的には弁済期どおりに債務が支払われなかった場合です。
より具体的には、以下の3つのパターンに大別されます。
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(1)抵当権が実行される場合
抵当権とは、かみ砕いていえば、借りている方(債務者)が借金などを返せなくなった場合、貸していた側(債権者)が、債務者が所有する不動産を競売し、得た代金から優先して借金を返してもらう、という権利です。
債務不履行後、抵当権者が裁判所に担保不動産競売を申し立てると、競売手続がスタートすることになります(民事執行法第181条第1項)。債務者が競売を阻止するには、債務を弁済(借金などをすべて返済すること)するか、その他弁済をしなくてもいい理由(抗弁)を主張しなければなりません。
なお、破産手続き・個人再生手続きが開始した場合には、抵当権は手続外で実行できるとされています。 -
(2)強制執行が行われる場合
不動産に抵当権が設定されていない場合でも、何らかの債務が不履行となり、判決などでその支払義務が確定すると、債権者は裁判所に強制執行を申し立てることができます(民事執行法第22条)。
強制執行は、一部の差押禁止動産(同法第131条)・差押禁止債権(同法第152条)などを除き、債務者が所有するすべての財産が対象となります。具体的には、債務者の生活に欠かせない衣服や寝具などの生活用品や、生活費(現金66万円まで)、債務者の職業に応じた業務に必要なものなどは差し押さえされません。
つまり、法で定められている差し押さえを禁じるもの以外は差し押さえの対象となります。したがって、債務者所有の不動産はすべて強制執行の対象となり、申し立てがあった場合には競売にかけられてしまいます。 -
(3)自己破産した場合
自己破産の手続きが開始した場合、債務者所有の財産は、一部の自由財産を除いてすべて換価・処分され、債権者への配当に回されます。その際、債務者所有の不動産は、破産管財人によって競売にかけられることになります。
なお、個人再生手続きでは、抵当権などの担保権が設定されている場合を除いて、不動産が競売されることはありません。さらに、住宅ローンを減額の対象外とすることにより、抵当権付きのマイホームを手元に残すことも可能です。
また、任意整理の場合は、抵当権の被担保債権を整理の対象としない限りは、やはり不動産競売は行われません。
2、不動産競売の手続きの流れは?
不動産競売は、おおむね以下の流れで進行します。
以下は強制執行のケース(強制競売)を解説しますが、抵当権実行としての競売・破産手続き内の競売の場合も基本的に同様です。
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(1)不動産の差し押さえ
まずは、裁判所が強制競売開始決定を行い、債権者のために住宅などの不動産を差し押さえる旨を宣言します(民事執行法第45条第1項)。この決定がなされた旨は、もちろん債務者にも送られることになります(同条第2項)。
差押えの効力は、債務者への送達または差押えの登記のいずれか早い時点で発生します(同法第46条第1項)。
差押えの効力が発生したら、債務者は不動産を使用したり不動産から収益を得たりすることはできるものの(同条第2項)、不動産を自由に売却するなどの処分ができなくなります。 -
(2)執行官による現況調査
不動産の差し押さえが行われた後、売却基準価額を決定する際の参考とするため、執行官による不動産の現況調査が行われます(民事執行法第57条第1項)。
現況調査では、不動産の形状・状態などに加えて、周辺の状況や紛争の有無など、不動産の価値評価に影響する事情が全般的に調べられます。 -
(3)評価人による不動産の評価
執行官による現況調査の後、裁判所に選任された評価人(不動産鑑定士など)が、不動産の評価を行います(民事執行法第58条第1項)。
評価人は、以下の事情を勘案して不動産を評価しますが、その際競売であることを考慮したディスカウントが行われるケースもあります(同条第2項)。- 近傍同種の不動産の取引価格
- 不動産から生ずべき収益
- 不動産の原価
- その他の不動産の価格形成上の事情
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(4)売却基準価額の決定
評価人による評価が完了したら、執行裁判所がその結果を参考として「売却基準価額」を決定します(民事執行法第60条第1項)。
競売の入札は、売却基準価額の8割以上の金額で行われなければならないとされています(同条第3項)。 -
(5)入札
売却基準価額の決定後、裁判所により売却基準価額・売却の日時・場所が公告され、入札が開始されます(民事執行法第64条第5項)。購入希望者は、入札期間中に1回限りの入札を行い、もっとも高い金額を提示した人が落札します。
なお、競売の方法としては「競り売り(期間中に何度でも価格を提示できる方式)」も認められていますが(同条第2項)、実務上は入札方式に一本化されています。 -
(6)売却許可決定
入札によって落札者が決定された後、執行裁判所が売却決定期日を開催し、売却の許可または不許可を判断します(民事執行法第69条)。
無権限入札・資力不足・反社会的勢力該当などの「売却不許可事由」(同法第71条)に該当しない限り、売却許可決定が行われます。 -
(7)代金の納付・債権者への配当
売却許可の確定後、買受人は所定の期限までに、売却代金を納付する必要があります(民事執行法第78条第1項)。
代金納付の完了をもって、買受人に競売不動産の所有権は移転し(同法第79条)、代金は債権者への配当に回されます。
3、より有利な条件で売却するには「任意売却」が有効
競売手続きは、執行裁判所の主導で進められるうえ、実際の競売代金は市場価格よりも抑えられてしまうことが多いです。
債務者にとって有利な条件で不動産を売却したい場合には、競売ではなく任意売却ができないか、可能性を検討してみましょう。
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(1)任意売却とは?
任意売却とは、債務者自ら売却先を見つけて、相対交渉により不動産を売却することをいいます。
競売についてのルールが民事執行法で詳細に定められているのに対して、任意売却の交渉ルールは特に法定されていないため、柔軟な条件交渉を行えるのが特徴です。 -
(2)任意売却の方が高く売却しやすい
競売不動産は、原則として物件の内覧ができず、管理が不十分なケースも多いというイメージがあるため、市場価格よりもディスカウントされた価格で売却されてしまう傾向にあります。
これに対して、任意売却の場合は物件の内覧が可能であり、不動産の現況を見たうえで購入希望者が価格を判断できるため、市場価格に近い価格で売却できる可能性が高いです。
結果的に、競売よりも任意売却の方が、債務者(売主)に有利な価格で売却できる可能性が高いといえるでしょう。 -
(3)売却時期なども融通が利きやすい
競売のスケジュールは執行裁判所によって決められますので、競売が完了すれば自動的に立ち退かなければなりません。
一方任意売却の場合は、退去の時期も買主との交渉次第で調整できるため、引っ越しなどの都合をつけやすいメリットがあります。
4、債務整理を弁護士に相談すべき理由
債務の返済が困難となり、債務整理によって負担を軽減したい場合には、弁護士に相談したほうがよいでしょう。弁護士に対応を依頼することで得られるメリットを紹介します。
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(1)状況・希望に合わせた手続きを適切に選択できる
すでに解説したように、不動産競売の有無については、債務整理の手続きごとに取り扱いが異なります。
その他、債務者が所有する財産の内容・収入状況・連帯保証の有無などによって、自己破産・個人再生・任意整理のうち、どの手続きを選択すべきかが変わってきます。
弁護士に相談すれば、債務者の状況や希望を総合的に検討したうえで、適切な債務整理手続きを選択するためのアドバイスを受けられます。 -
(2)交渉や裁判手続きを代行してもらえる
任意整理をする際には債権者との交渉を、個人再生・自己破産をする際には裁判所での手続きを、それぞれ行わなければなりません。
不慣れな方にとっては、交渉や裁判手続きへの対応は大きな負担となりますが、弁護士に相談すれば、これらの対応をすべて代行してもらえるメリットがあります。
円滑に債務整理を行い、債務の負担を軽減するためにも、お早めにベリーベスト法律事務所の弁護士までご相談ください。
5、まとめ
債務不履行に陥った場合や、自己破産をした場合などには、所有する不動産が競売されてしまいます。競売を避けたい場合には、弁護士に債権者との交渉を依頼するとともに、不動産業者などと協力して任意売却の可能性を模索しましょう。
ベリーベスト法律事務所では、債務整理の方法に関するアドバイスや、実際の手続きの代行サービスをご提供するとともに、不動産の任意売却についてもサポートします。債務の負担に苦しむ不動産オーナーの方は、お早めにベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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