好きなだけなのに……。ストーカーとして逮捕! どうすべきか弁護士が解説

2019年11月26日
  • 暴力事件
  • ストーカー
  • 逮捕
好きなだけなのに……。ストーカーとして逮捕! どうすべきか弁護士が解説

平成28年11月、姫路市在住の男性が交際を迫る手紙を女性の勤務先に30通以上も送付したとして、ストーカー規制法違反容疑で逮捕される事件が報道されました。

恋愛感情を伝えようとした結果、嫌がらせのつもりがなかったのに、相手に通報されてしまい、ストーカー規制法違反として取り締まりを受けてしまったというケースは少なくないようです。本コラムでは、ストーカー規制法違反に該当する要件から逮捕されたらどうなるのかについてベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。

1、ストーカー犯罪にあたる行為とは

ストーカー規制法の正式名称は、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」です。恋愛感情やそのほかの好意、もしくはその思いを満たされなかったことに対する怨恨の感情で行われる、8つの行為や行動を「つきまとい行為」として規制対象としています。

まずは規制対象となる行動について解説します。

  1. (1)規制対象となる8つの行為

    規定されている8つの行為によって、相手が身に危険を覚えたり、平穏な生活が脅かされたり、行動の自由が奪われていると感じたりすると逮捕される可能性があります。

    ●つきまとい、待ち伏せまた押しかける行為
    相手につきまとう行為や待ち伏せ、立ちふさがりや見張り、住居等に押しかける行為や進路をふさぐ行為が禁止されています。本人に接触しなくても、付近をうろつくことも規制の対象です。

    ●監視していると告げる行為
    監視していると告げる行為とは、「いつもみているよ」とメールや電話で告げる、帰宅したら「おかえりなさい」と電話するなどの行為です。直接告げなくても相手がいつも見ているSNSや掲示板へ同様の書き込みをする行為も、監視行為に該当します。

    ●面会や交際を要求する行為
    相手に会いたいや、付き合いたい、復縁したいなどと伝え、強要する行為もストーカー規制法が禁じています。相手が拒絶しているのに、プレゼントを受け取るように強制することも規制対象です。

    ●暴言、乱暴な行為
    相手の目の前で暴言を吐いたり、叫んだりクラクションを鳴らしたりする行為も禁じられています。直接暴言を伝えなくても、相手の家や学校の前で暴言を吐いたり、メールを送ったりすると逮捕される可能性があります。

    ●無言電話や、連続して電話やファックス、メールなどを送る行為
    無言電話や何度も電話をする行為、メールやファックスなどへメッセージを連続して送信する行為は禁じられています。SNSで執拗にメッセージを送信する行為も、相手が拒否していれば違法になる可能性があります。

    ●汚物や動物の死体を送るなどの行為
    自宅や会社などに、汚物や動物の死体などを送付する嫌がらせもストーカー規制法違反です。

    ●名誉を損ない傷つける行為
    相手の職場や自宅、インターネットなどに誹謗中傷して名誉を傷つける書き込みをすることも禁じられています。「○○はうそつきのひきょう者だ」などの書き込み行為が該当します。

    ●性的羞恥心を侵害する行為
    相手の自宅やメールアドレス、SNSなどにわいせつな写真や動画を送りつけたり、性的な羞恥心を害するような話を電話したり、メールや手紙で送信、またインターネット上に書き込んだりする行為も禁じられています。

  2. (2)ストーカー行為の定義は?

    同法では、繰り返しつきまといなどの行為を反復して行うことがストーカー行為と定義されています。ストーカー行為による容疑で逮捕された場合は、より重い罪が問われることになるでしょう。

2、ストーカー規制法違反で科せられる処罰

次にストーカー規制法違反で逮捕されて、有罪になった場合に下される可能性がある刑罰について解説します。

多くの場合、相手側が警察にストーカー被害を相談することで事件が認知されます。その後、状況によって警察から「警告」や「禁止命令」が出されることになるでしょう。相手が身の危険を覚える事態であれば、警告などがなくとも現行犯逮捕される可能性が出てくるでしょう。

まず、ストーカー行為の容疑で逮捕され、刑事裁判で有罪になった場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます。

さらに、禁止命令が出されたにもかかわらず、ストーカー行為を続けて逮捕された場合はもっとも罪が重く、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科される可能性があります。また、ストーカー行為自体はやめたものの、その他の禁止命令に従わなかった場合には、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があります。

なお、被害者に暴力を振るうと暴行罪や傷害罪、相手の自宅の敷地内に入ると住居侵入罪に該当することがあるでしょう。そのほかにも、相手の衣服の下や下着の写真を撮影した場合は、状況に応じて都道府県の迷惑防止条例違反や、軽犯罪法違反に問われる可能性がある点も忘れてはなりません。

3、逮捕されたらどうなるのか

次にストーカー規制法違反容疑で逮捕された場合の流れを解説します。

  1. (1)逮捕までの流れ

    まず、多くのパターンで警察による警告や禁止命令が出されます。禁止命令に違反すれば、ストーカー行為までに至らなくても逮捕されることがあります。口頭での警告や禁止命令を出さずに、そのまま逮捕することを被害者が望めば、警察がしかるべき捜査を行った上で逮捕するケースもあるでしょう。

  2. (2)最長23日間、身柄は拘束

    逮捕された場合、いわゆる容疑がある方は「被疑者」と呼ばれる立場となり、逮捕から最長48時間、警察によって身柄が拘束されて取り調べが行われます。

    嫌疑が晴れない場合は検察官に事件が送致され、最大24時間の間に「勾留」が必要かどうかを判断されます。逮捕から勾留が決定される最長72時間のあいだは家族や友人などと面会することができません。弁護士のみが接見可能です。

    勾留とは、身柄を拘束したまま取り調べを行う措置です。検察官によって勾留が必要と判断し、裁判所が勾留請求を認めると、まずは10日間、必要に応じてさらに10日間延長されることがあるでしょう。

    勾留期間満期日、もしくは取り調べが終わり次第、検察官が起訴するかどうかを判断します。不起訴になれば、前科がつくことなく身柄の拘束が解かれ、晴れて自由の身となります。

    起訴すると判断されれば刑事裁判が開かれます。日本の刑事裁判の有罪率は99.9%と非常に高く、起訴されてしまうと有罪になる可能性が非常に高いため、前科がつかないようにするためには起訴の回避を目指すことになるでしょう。

4、早期に弁護士を依頼すべき理由

ストーカー規制法違反に該当する行為をしてしまった場合、相手側と示談で問題の解決を図るにしても、あるいは裁判の場で争うにしても、できる限り早い対応をする必要があります。

まずは刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士に相談をして、的確なアドバイスを受けることをおすすめします。

  1. (1)迅速に弁護活動を開始して勾留回避

    ストーカー事件で前科がつかないようにするためには、警告や禁止命令の時点でストーカー行為を止めることに尽きます。しかし、すでに逮捕されてしまった場合は、身柄の拘束や起訴をされないように、起訴されてしまったら過剰に重い罪が科せられないようにと働きかけなければなりません。

    特に、スピードを要するのが、「勾留回避」のための弁護活動です。前述のとおり、ストーカー規制法違反で逮捕された場合は、逮捕されてから72時間以内に、勾留するかどうかが決定されます。勾留されると最大20日間身柄が拘束されてしまい、自宅や、会社に行くことができません。したがって、社会生活が破綻する可能性があります。

    そのような事態を回避できる可能性があるのが、弁護士による弁護活動です。逃亡したり証拠隠滅を図ったり、再度ストーカー行為をする危険がないことを検察官や裁判官に主張することや、被害者と示談を成立させることによって勾留を回避し、まずは帰宅できるように取り計らうことが可能です。

    そのためにも、逮捕されてからできるだけ早い段階で弁護活動を依頼することが、非常に重要になります。逮捕の影響を最小限に抑えたければ、いち早く弁護士に依頼して弁護活動をスタートしてもらいましょう。

  2. (2)示談交渉は専門家に依頼

    勾留回避や起訴の回避などにもっとも重要視されるのは被害者との示談です。刑事事件の場合、被害者と示談をしているかどうかが、起訴不起訴の判断に大きく影響します。被害者と示談が完了し、深く反省していれば不起訴処分になる可能性が出てきます。したがって、事件化した時点で速やかに示談交渉をスタートすることをおすすめします。

    しかし、本人は逮捕されてしまい身動きが取れませんし、そもそもストーカーの被害者は本人と連絡を取りたくないと考えていますので示談交渉には難航します。

    しかし、第三者である弁護士が介入することで、被害者も冷静に示談交渉に臨めるので、早期の示談が期待できます。今後ストーカー行為をしない念書とともに示談することで、被害者だけでなく検察官や裁判官の心証にも影響を与えられるでしょう。

5、まとめ

ストーカー行為で、逮捕されたもしくは逮捕される可能性がある場合、重要なのはいち早く弁護士に弁護を依頼することです。早く対応すればするほど、逮捕の影響を最小限に抑えることができます。

勾留を回避すること、被害者との示談を完了させて不起訴に持ち込むことで、本人の社会生活が守られる可能性を高めることができるでしょう。

ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスでは、あなたの状況に合わせて最適な弁護活動を、素早くスタートします。悩んでいるあいだに刻一刻と時間が過ぎてしまいます。ひとりで悩まず、まずはご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています