盗撮した後日逮捕されることはある? その前にできることとは
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令和元年6月、JR西明石駅の階段や自宅内トイレで盗撮をした姫路市在住の男を、兵庫県警生活安全特別捜査隊と同県警姫路署が逮捕したという報道がありました。
この事件では、駅階段や自宅内での犯行時には現行犯逮捕されていません。捜査を進めた上で犯行の半年近くあとに逮捕されました。このように後日逮捕されることを「通常逮捕」といいます。
今回は、盗撮による後日逮捕について、姫路オフィスの弁護士が説明します。
1、盗撮がばれたら、後日逮捕される?
電車内をはじめとした公共の場で行われる盗撮は、「迷惑防止条例違反」に問われる可能性が高い犯罪です。この条例は都道府県ごとに定められているため、内容にも違いがあります。兵庫県の場合は、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(兵庫県版の迷惑防止条例)の第3条の2に規定されています。
痴漢行為の場合は現場で被害者や、周囲の人間が犯行に気付きやすく、現行犯逮捕の可能性も高いものです。しかし、盗撮の場合は犯行手法によっては犯人と被害者の特定が難しくなることもあります。特に小型のカメラを設置しての盗撮は、カメラを誰が仕掛け、誰が盗撮されているのか突き止めるのが困難な作業になることもあるでしょう。
しかし、近年では、駅周辺やショッピングモール、繁華街などに高性能な防犯カメラが設置されているケースが増加しています。「証拠はないはずだ」と過信することはできません。警察は十分な捜査をし、証拠をそろえた上で裁判官に逮捕状を出してもらい、後日罪を犯した可能性がある「被疑者」の自宅などへ、逮捕に向かうことになるのです。
逮捕されたら、身柄の拘束を受け、まずは検察に送られる(送致)までの最長2日間、警察の取り調べを受けます。その後、検察へ送致されたら、検察は送致から24時間の間に「勾留(こうりゅう)」と呼ばれる、身柄拘束を行ったまま取り調べを行う措置の必要性を判断します。逮捕から、勾留の有無が決定する3日間は、ご家族や友人と連絡を取ることや面会することもできません。直接会って話ができるのは、依頼を受けた弁護士に限られます。
検察による勾留請求が裁判所に認められ、勾留が決定すれば、まずは10日間、最長20日間も身柄の拘束を受けることになります。長期にわたり仕事を休むことになるため、職場や学校などに事態が明らかになってしまうケースがほとんどです。また、地方紙などに実名が掲載されてしまうこともあり得ます。場合によっては将来にわたる影響を受けてしまうことになりかねません。
2、盗撮で後日逮捕されるとき、警察はどう動く?
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(1)後日逮捕に至るまでの流れ
後日逮捕の場合、警察はまず裁判所に逮捕状を請求し、これが認められれば被疑者宅に出向き、逮捕(通常逮捕)します。
そもそも「逮捕」という行為は、一定期間個人の身柄を拘束する、特別な処分のひとつです。捜査上必要と判断されなければ逮捕することができないよう、刑事訴訟法で定められています。
具体的には、ある程度犯行の証拠があり、「逃亡を図ったり、証拠を隠滅したりする可能性」があると判断されると、逮捕状が発行されることになります。また、逮捕前に「今から逮捕しに行きます」などという連絡はありません。
他方、「現行犯逮捕」とは、捜査を行ったり犯行をやめさせたりするため、犯行中もしくは犯行直後に身柄を拘束する行為です。犯行が明らかであるため、逮捕状の発行を待つ必要がありません。よって、警察官はもちろん、近くにいた一般人の方でも犯人を逮捕することができます。 -
(2)任意の取り調べ
冒頭の事件のように、「盗撮犯人がその場での発覚から逃れた」というような場合には、「逃亡のおそれが高い」と判断されて逮捕状が出されるケースが多いと考えられます。しかし、逮捕とはそもそも、身柄の拘束を伴う特別な措置です。
場合によっては、逮捕されないまま、警察から呼び出しを受け、取り調べられ、最終的な処分が決定される可能性があるのです。これを、「在宅事件扱い」と呼ばれています。
取り調べを受けるということは、警察からは、「被疑者」または「参考人」として扱われていることになります。取り調べの際には「言いたくないことは言わなくていい」と、黙秘権を告知されます。また、警察からの呼び出しに応じるかどうかは任意です。応じる義務はありません。しかし、正当な理由なく取り調べに応じない場合は、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されてしまい、逮捕状が発行され、逮捕に踏み切られる場合もあります。その際は、警察が自宅や職場、学校に来るケースがあるでしょう。呼び出しを受けたとき、日程は常識的な範囲で調整することができます。よく考えて行動しましょう。
3、過剰に重い罪を科せられないためにできることは?
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(1)自首
盗撮をしてしまったが、捜査は受けていない、現場から逃走して逮捕されていないという状態で、いつ逮捕されるだろうかと悩んでいる方もいるでしょう。そのようなときは「自首」することで、少しでも罪を軽くできる可能性があります。
自首とは、「捜査機関がいまだ犯人を判明できていない」場合や、「そもそも犯罪自体が発覚していない」場合に、自らの罪を告白することです。つまり、被害者や犯人がすでに特定されている場合は本来成立しません。
しかし、すでにあなたが犯人だと特定されていたとしても、自ら警察へ出頭すること自体に意味があります。罪を認め、反省していると判断され、身元引受人などがいれば、逮捕という身柄拘束が伴う措置は行われずに、在宅事件扱いとして取り扱われる可能性が出てきます。
在宅事件扱いになれば、場合によっては職場や学校などに知られずに事件の対応をすることが可能です。また、逮捕さえされなければ、地方紙などで実名報道されてしまう事態を回避できることもあるでしょう。 -
(2)被害者との示談交渉
盗撮事件を起こし、被害者との示談が成立することは、一般的に、被害者に対して謝罪を行い、償いを済ませ、被害者から許しをもらえたものとみなされます。警察や検察、裁判官は、被害者の処罰感情を重視するため、現状、「示談成立」が罪の軽減にもっとも有効な手段です。
捜査の段階で示談が成立すれば、起訴されることなく釈放へつながる可能性もあるでしょう。起訴されたとしても、示談内容によっては減刑や執行猶予判決になるケースも多々あり得ます。
被害者との示談交渉は、弁護士に依頼することをおすすめします。そもそも、被害感情から考えて、被害者が被疑者に対して連絡先を開示しないケースが多く、加害者本人や加害者の家族が直接示談交渉を行うことは難しいでしょう。もし、被害者の連絡先を知っていたとしても、当事者間の交渉はさらなるトラブルに発展する可能性を否定できません。
さらに、逮捕された上で勾留されていれば、最長23日で起訴になるか、不起訴になるのかが決定してしまいます。刑事事件はスピード勝負だとよく言われるのはこのためです。少しでも早いタイミングで示談を成立させることによって、早期解決への希望が生まれます。
まずは、弁護士に依頼して、示談交渉に対応してもらうことをおすすめします。
4、まとめ
盗撮をしてしまった場合、たとえ犯行日に逮捕されなくても、後日逮捕される可能性は残ります。つまり、「いつ逮捕されるのか」「捜査はどこまで進んでいるのか」という不安に駆られながら過ごすことになるでしょう。
なお、逮捕された場合には身柄を拘束されるので、会社や家族に事情が知られ、職を失うなど深刻な事態にもなりかねません。影響を最小限にするには、弁護士へすみやかに相談してください。
ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスでは、逮捕された場合の対策や、自首や示談について、適切なアドバイスを行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています