解決には弁護士のサポートが必要? 強制わいせつ罪の概要と対応について解説
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令和元年6月、姫路市で女性客に対して施術を装いわいせつな行為をした容疑で30代の男性が強制わいせつ致傷容疑で逮捕されたという報道がありました。
強制わいせつで逮捕されたら、警察署に身柄を拘束されて所定の手続きを経た上で刑事手続によって裁かれる可能性があります。余罪があれば再逮捕されて長期勾留に至る可能性もあるでしょう。そこで、本コラムでは、強制わいせつ罪の概要や逮捕後の流れ、弁護士ができることについて、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。
1、強制わいせつ罪の基礎知識
まずは強制わいせつ罪とはどのような犯罪なのかを知っておきましょう。
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(1)強制わいせつ罪とは
被害者の意に反してわいせつ行為をすることを、「強制わいせつ」と呼ばれています。相手の同意があれば強制わいせつにはあたりません。ただし、相手の年齢が13歳未満の男女の場合は「脅迫などがなくてもわいせつな行為をした」時点で強制わいせつ罪が成立します。
強制わいせつは加害者が男性、被害者が女性というイメージをお持ちかもしれません。しかし、同性への行為や、女性から男性に対する行為も強制わいせつに問われる可能性があります。
強制わいせつ罪で逮捕されて有罪になった場合は6か月以上10年以下の懲役に処されると規定されています。相手が泥酔していたなどの状態でわいせつな行為をした場合は、準強制わいせつ罪となります。法定刑は強制わいせつ罪と変わりません。 -
(2)何をしたら強制わいせつ罪に問われるのか
相手が嫌がっている、もしくは同意を得ていないにもかかわらず以下のような行為をすると強制わいせつ罪における「わいせつな行為」とみなされる可能性があります。
- キスをする
- 抱きつく、抱きしめる
- 胸や陰部を触る
- 自分の陰部を体に押し当てる
- 衣類を脱がす、着衣の中に手を突っ込む
など
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(3)親告罪から非親告罪へ
平成29年7月13日まで、強制わいせつ罪は被害者が告訴しなければ起訴できない親告罪でした。「親告罪」とは、被害者と加害者が示談して告訴を取り下げれば、起訴することができず、刑事裁判が開かれることはない犯罪のことです。
ところが、平成29年7月13日の刑法改正施行により強制わいせつ罪は非親告罪となりました。したがって、告訴が取り下げられたからといって必ずしも不起訴になるとは限りません。
なお、平成29年7月13日以前に発生した事件であっても、告訴がなくても起訴されることがあるでしょう。ただし、非親告罪でも起訴・不起訴を判断する際には、示談が完了しているかどうかが重要な判断基準になります。したがって、早急に示談を完了させる必要があるでしょう。
2、強制わいせつ罪にまつわる犯罪
行ったわいせつ行為の度合いや相手がけがをしているかどうか、などの状況に応じて強制わいせつ罪以外の罪に問われる可能性があります。ここでは、強制わいせつ罪にまつわる犯罪について解説します。
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(1)強制わいせつ致死傷罪
強制わいせつをする過程で相手にけがをさせてしまったり、死亡させてしまったりした場合は、強制わいせつ致死傷罪として罪に問われることになります。
擦り傷などの軽いけがでも、医師の診断書や写真などの証拠があれば強制わいせつ致傷罪に該当し、無期または3年以上の懲役刑に科せられる可能性があるでしょう。 -
(2)強制性交等罪(旧強姦罪)
強制性交等罪とは、暴行や脅迫を用いて,男女と性交などを行った際に、問われる可能性がある罪です。
13歳以上の男女と暴行や脅迫などを用いて無理やり性交などを行った場合、もしくは13歳未満の男女と性交渉を行った場合に、強制性交等罪が成立します。強制性交等罪で逮捕されて有罪になると、5年以上の有期懲役に処されます。
なお、強制性交等罪は、平成29年7月13日以前は「強姦罪」と呼ばれ、女性が男性に無理やり性交渉された場合に罪に問われていました。しかし、強制性交等罪になってからは、被害者の性別問わず、挿入を伴わない、口や肛門などを用いた行為を無理やり行ったケースも対象になります。 -
(3)痴漢(迷惑防止条例違反)
一般的に「痴漢」と呼ばれる電車の中や街中において服の上から胸や下半身を触るなどの行為は、各都道府県で定められている迷惑防止条例違反として罪に問われることになります。姫路市内で事件化し、迷惑防止条例違反として有罪になれば、兵庫県迷惑行為防止条例に基づき、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることになるでしょう。
ただし、下着の中に手を入れて直接胸や下半身を触るなどの悪質性が高い場合は、強制わいせつ罪に問われる可能性があります。
3、依頼を受けた弁護士ができること
強制わいせつ罪で逮捕された被疑者に対し、弁護士が解決に向けてどのようなアプローチで弁護活動を行っていくのかについて紹介します。
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(1)身に覚えがないなら無実を主張する
そもそもわいせつ行為をしていないのに強制わいせつ罪で逮捕されてしまうことがあるかもしれません。本当にわいせつ行為をしていないのであれば早急に弁護士に依頼してください。
強制わいせつ罪の場合は、えん罪だけでなく、当初は合意があったのに後から合意がなかったと相手が言い出すというケースが考えられます。無実を主張する場合、弁護士は「嫌疑なし」による釈放や「不起訴」、「無罪」を目指して客観的に合意があったと主張できる証拠を集めて弁護活動を行います。 -
(2)長期にわたる身柄拘束を回避する活動
強制わいせつにあたる行為をしたことが確かであれば、弁護士は早期釈放を目指した弁護活動を行います。
強制わいせつで逃亡や証拠隠滅の可能性があると判断されると、逮捕後72時間は警察署内の留置所に身柄が拘束されます。また、被害者の身の安全を守るために身柄拘束の措置をとることもあるでしょう。その場合は、警察から検察に送致されたのちも留置所に身柄を拘束される「勾留」という処置がなされる可能性があります。
勾留されると原則10日間、延長となれば最長20日間も身柄が拘束されてしまうため、社会的影響は甚大になりかねません。逮捕されたことが職場や会社に露見してしまい、長期間休むことで退職や退学を余儀なくされてしまうこともあります。そのような事態を避けるためには、逮捕後72時間以内に、弁護士が、勾留回避のための弁護活動を行うことが重要です。
具体的には検察官や裁判官に対して、「証拠隠滅や逃亡の恐れはなく、身元もしっかりしていることから勾留は不要である」と主張していくことになります。主張が認められれば、在宅事件扱いとなり、逮捕後72時間以内に身柄が解放されて自宅に帰ることができます。ただし、無罪になったわけではないため引き続き捜査や取り調べは続きます。 -
(3)被害者との示談交渉
強制わいせつは「非親告罪」になったため、示談が完了したからといって不起訴が確定するわけではありません。しかし、起訴するかどうかの判断で、示談が完了しているか、被害者が加害者を許しているか、処罰を望んでいるかどうかは大きな影響を与えます。したがって、早期に示談を完了させることが非常に重要です。
示談交渉は当事者でも行うことができますが、身柄を拘束されていれば不可能です。そもそも警察は、個人情報の問題があるため、被害者の住所や連絡先を加害者へ直接教えることはありません。また、たとえ知り合いだったとしても相手に対して恐怖感などを与えてしまうことになる可能性が高く、そうなればさらに立場が悪くなってしまいます。
しかし、弁護士であれば、警察から被害者の住所を確認し、早急に示談交渉をスタートすることができます。本人と冷静に話すことができない被害者であっても、弁護士であれば話に応じることが多く、交渉もスムーズに進みやすい傾向があります。
日本での刑事裁判の有罪率は99.9%と非常に高く、起訴されてしまえば有罪を免れることは困難です。しかし、不起訴になれば前科もつかず元の生活に戻ることができます。 -
(4)起訴されたら執行猶予付き判決を目指す
起訴が決定したとき、本当に罪を犯していないのであれば無罪を目指して弁護します。他方、罪を犯しているのであれば、執行猶予付き判決を目指した弁護を行います。
示談が完了していない場合でも、示談が順調に進んでいることを主張できれば、執行猶予付き判決を目指すことは不可能ではありません。示談を完了させるだけでなく、反省の態度を示すことや、カウンセリングや通院などで性的衝動をコントロールしている面を主張するなど、裁判官の心証がよくなるように働きかけることも重要です。
執行猶予付き判決が出れば、前科はついてしまいますが、刑務所に入らずにすみますので、早期の社会復帰ができるでしょう。
4、まとめ
強制わいせつ行為をしてしまった場合や、身に覚えのない強制わいせつ罪に問われてしまった場合、法律知識が乏しい個人の力で早期解決を図るのは非常に困難です。勾留期間が長引いたり、社会的制裁が加わったりすることで今後の社会生活に大きな影響が出る可能性は否定できません。
いかに早く弁護士に助けを求めるかが、社会復帰や無実の証明につながります。強制わいせつ容疑をかけられたら速やかにベリーベスト法律事務所 姫路オフィスで相談してください。強制わいせつをはじめとした刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士が、逮捕の影響が最小限にすむよう迅速に対応します。
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