万引き直後はバレなくても警察から電話が来て後日逮捕される?

2024年06月20日
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万引き直後はバレなくても警察から電話が来て後日逮捕される?

「万引きは現行犯でなければ捕まらない」「万引き程度では警察は操作しない」という噂があるようですが、それは間違いです。実際に、令和5年9月、姫路市より北東にある多賀町のコンビニで8月下旬から数日にわたり薬品などを万引きした容疑がある女性が逮捕されたという報道がありました。

店の従業員や警備員などにバレることなく万引きしたとしても、警察から「事情を聞かせてほしい」という呼び出しの電話がかかってくるかもしれないし、後日逮捕されてしまうおそれがあるといえるでしょう。

本コラムでは、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が、万引きをした後日に警察から電話がかかってくることはあるのか、電話がかかってきたあとの流れや取るべき対応などを解説します。


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1、万引きで後日警察から電話がかかってくることはあるのか?

万引きをするときは、従業員や警備員が見張っていないか、周囲にほかの客はいないか、防犯カメラが見える位置ではないかといった点に注意を払うはずです。

もし誰かに見つかっていれば警察から呼び出しを受けるかもしれませんが、うまく誰にも見つからないまま万引きに成功しても電話がかかってくることはあるのでしょうか?

  1. (1)万引きがあったことはほぼ確実に発覚する

    万引きをしたあとで同じ店を訪ねても、まるで万引きの被害に遭ったことに気づいていないかのような接客をするケースが一般的です。すると「どうやら自分が犯人だというだけでなく、万引きがあったことにも気づいていないようだ」と考えてしまうかもしれません。

    しかし、万引きがあったことが発覚する可能性は高いといえます。スーパーやコンビニエンスストアなどでは商品管理システムによって入荷数・販売数・在庫数が明らかになっているためです。

    「気づかれていない」と思っていても、すでに店側は万引きを把握しており、警察に被害届を提出済みかもしれません。再び万引きをしないか行動を監視されていたり、従業員の間で防犯カメラの画像をプリントアウトして共有していたりすることもあるので「すでにバレている」可能性は高いといえるでしょう

  2. (2)容疑者として特定されると警察から電話がかかってくることがある

    店側が警察に被害届を提出すると捜査が始まります。目撃情報や防犯カメラの記録などのほか、会員・ポイントカードの登録情報、クレジットカードやキャッシュレス決済の情報などから、容疑者として特定されるでしょう。

    容疑者として特定されると、警察は「本人を取り調べて事情を聞く必要がある」と考えます。
    特に、防犯カメラの映像が不鮮明であったり、目撃した状況があいまいであったりすると、いきなり逮捕に踏み切れば誤認逮捕の危険もあるので「まずは任意で事情を聞こう」という安全策を講じるケースはめずらしくありません。

    また、万引きはほかの犯罪と比べると被害額が小さくなりやすく、動機や犯行の方法も単純である場合が多い犯罪です。

    何度も万引きを繰り返して被害額が高額になっていたり、複数の共犯者による組織的な犯行であったりする特殊な状況がなければ、逮捕状を請求してまで強制捜査に乗り出すおそれは低いでしょう。

2、警察から電話がきた! すぐに逮捕される?

警察から電話がかかってきたら、誰でも気が動転してしまうはずです。万引きをした後日で身に覚えがあれば、なおさら不安が高まるでしょう。

警察から電話がかかってきたとき、どうしても頭に浮かんでしまうのは「逮捕」でしょう。すでに容疑者として特定されているなら、出頭すればそのまま逮捕されるのではないかと心配になるはずですが、逮捕の危険はあるのでしょうか。

  1. (1)素直に出頭すれば逮捕される危険は低くなる

    警察から電話がかかってきたなら、求めに応じて素直に出頭すれば逮捕される危険は低くなります。

    捜査の基本的な心構えやルールを定めた「犯罪捜査規範」の第99条には、捜査について「なるべく任意捜査の方法によって行わなければならない」という規定があります。

    取り調べに応じる姿勢を示しているという事実は「基本どおりの任意捜査でも取り調べが可能」ということの証明になるので、逮捕の必要性が低くなるのです。

  2. (2)警察から電話がかかってきたあとの流れ

    警察が電話をかけてくる理由は「容疑者本人を取り調べて事実を確認するため」です。

    電話の段階ではあまり詳しい質問を受けることはありませんが、心当たりがあるかどうかを確かめるために「スーパー〇〇での万引き事件について話を聞かせてほしい」くらいの様子見があるかもしれません。

    事件の後日、警察の求めに応じて自分で警察署などに出向くことを「任意出頭」といいます。出頭すると取調室に案内されて万引き事件に関する取り調べが行われ、当日の取り調べが終わると解放されます。

    一度の取り調べではすべての確認や「供述調書」の録取まで終わらないこともありますが、その場合は次回の期日を決めるか、改めて連絡を取り合い都合のよい日を選んで出頭するという流れが一般的です。

    このように、罪を犯した容疑がある人について、逮捕によって身柄を拘束するのではなく、任意で出頭してもらいながら捜査を進めることを「在宅捜査」といいます。

3、警察からの電話を無視したらどうなる?

「万引きをしたが警察にバレるかもしれない」という心当たりがあると、警察からの電話がかかってきたときに思わず無視してしまうかもしれません。

警察からの電話を無視すると、その後はどうなってしまうのでしょうか?

  1. (1)在宅捜査は不可能と判断されて逮捕の危険が高まってしまう

    警察からの電話を無視し続けても、残念ながら「連絡が取れない」とあきらめてくれることはありません。電話を無視する状況が続くと、任意出頭の意思はないと判断されてしまい、在宅捜査では事実が明らかにならないとして逮捕状が請求され、逮捕されてしまう危険が高まります。

    警察から電話がかかってくるという状況は「今なら任意出頭に応じれば在宅捜査で処理できる」という方針だといえるので、応答したほうが賢明です。電話がかかってきている間はまだ余裕があるかもしれませんが、電話がかかってこなくなったら危険信号だと考えましょう。

  2. (2)都合で電話に出られなかった場合はどうなる?

    無視する意図はなくても、仕事や学校の都合で電話に出られなかった、着信に気が付かなかったといったケースも少なくないでしょう。

    警察からの電話に気が付いたら、すぐに電話をかけなおすことをおすすめします。
    これは、万引き容疑をかけられているときだけでなく、心当たりがないときでも同じです。落とし物が見つかった、家族が交通事故に遭ったなど、まったく別件で緊急の連絡が入ってくる可能性も否定できません。

    もちろん、心当たりがあるなら連絡を急ぐべきです。1~2回程度着信に気が付かなかったからといって、すぐに「逮捕しなければ」という方針に変わるわけではないので、できるだけ早く連絡を取るように心がけてください。

    警察署は夜間でも緊急の届け出に対応するための窓口が開いているので、たとえ深夜でも電話をかけなおしましょう。

4、万引きをして逮捕や刑罰に不安を感じるなら弁護士に相談を

万引きをしたのが事実であり、警察からの電話がかかっている状況なら、窃盗事件の容疑者として特定されていると考えるべきです。

どのように対応するべきなのかわからない、その後の逮捕や刑罰に不安を感じているなどのお悩みがあるなら、弁護士にご相談ください。

  1. (1)店側との示談交渉による解決が期待できる

    万引きは、刑法の定めに照らすと「窃盗罪」にあたる犯罪です。10年以下の懲役または50万円以下の罰金という刑罰が規定されているので、決して「軽い」といえる犯罪ではありません。

    逮捕や厳しい刑罰を回避して穏便に解決するには、被害者となる店側との示談交渉が必須です。
    万引きをしたことについて真摯(しんし)に謝罪し、商品代金を支払うか、あるいは商品そのものを返還するといった対応が求められます。

    店側が示談に応じてくれれば、被害届や刑事告訴が取り下げられて事件が終結する可能性があるので、逮捕や刑罰の不安も解消されるでしょう。

    ただし、店側の方針によっては、示談交渉を断られてしまうケースもあります。特に、本社・本部によって必ず事件化するよう指示されている大型チェーン店や万引き被害が大きな問題になっている店舗では、再び万引きを犯さないよう強い反省を促す意味で、かたくなに拒絶されてしまうでしょう。

    加害者本人や関係者による交渉は難しいので、対応を弁護士に任せたほうが安全です。

  2. (2)警察への対応についてアドバイスが得られる

    警察から電話がかかってくると「どんなことを聞かれるのだろうか?」「取り調べで暴力や暴言、脅しを受けるのだろうか?」といった不安を感じるかもしれません。

    また、不用意な発言によって過度に不利な状況を招いてしまったり、ほかの万引き事件も余罪として疑われてしまったりするおそれもあります。

    警察による取り調べでは、ありのままの事実を述べるのが基本です。

    ただし、事件の内容や被害の程度などに応じて積極的に話すべきこと、不用意に話すべきではないことが異なるので、可能な限り取り調べに入る前には弁護士に相談し、アドバイスを得ておきましょう。事前にアドバイスを受けておけば、警察官による不当な取り調べの着眼点なども知ることができます。

  3. (3)加害者にとって有利な処分が期待できる

    穏便な解決が難しく、刑事事件としての処理が避けられない状況なら、少しでも有利な処分を目指すのが賢明です。

    深く反省したうえで謝罪・弁済を尽くした、再び万引きをしないよう家族が監督強化を誓約したなどの事情があれば、検察官が起訴を見送って不起訴とする、裁判官が刑を減軽するといった有利な処分を得られる可能性が高まります。

    どのような事情が加害者にとって有利にはたらくのかは、事件の内容や被害の程度、加害者本人の性格や環境によって千差万別です。法的な知識や経験が求められる難しい対応なので、弁護士に一任するべきでしょう。

5、まとめ

「万引き」をしてその場で見つからなかったとしても、遅かれ早かれ、店側は「商品が盗まれた」という事実に気が付きます。

店側が警察に被害届を提出すれば捜査が始まり、さまざまな証拠や資料から容疑者として特定されると、取り調べのために「警察署に出頭してほしい」という電話がかかってくる事態になるでしょう。

容疑をかけられていると知れば、逮捕や刑罰に対する不安が大きくなるのは当然です。

しかし、任意出頭を求める電話がかかっている段階で正しく対応すれば、逮捕や刑罰を回避できる可能性が高いので、過度に心配する必要はありません

万引き事件を穏便に解決するためには積極的な解決に向けたアクションが大切です。スピード対応が求められるので、警察から電話がかかってきたら今すぐベリーベスト法律事務所 姫路オフィスにご相談ください。刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています