早出残業とは|早く出勤しても残業代ナシは違法! 行うべき対応
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姫路市を管轄する兵庫労働局の発表によると、令和4年度中に長時間労働が疑われて監督指導を行った事業場は1776事業場もありました。内、賃金不払い残業があった事業所は111事業場にものぼるようです。
早出残業とは、本来の始業時間より前に会社から出勤を命じられて仕事をしたケースを指します。残業は「残って業を行う」と書きますが、早く出勤したケースも「残業」にあたるのです。この早出残業分の賃金が会社から支払われていないというケースは少なくないでしょう。
そこで、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が、早出残業の概要から残業代の計算方法、未払い分がある場合に会社へ請求していく手続きの流れについて解説します。
1、始業時間前の労働は残業と考えることができる?
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(1)始業時間前の労働は残業になり得る
始業時間より前に労働をした場合、その時間に対して残業代は支給されるのでしょうか。結論からいえば、その勤務が「労働時間」に該当すると判断できる場合には残業扱いとなり、残業代の支給対象となります。
残業には、会社が就業規則などで独自に定める所定労働時間を超える残業と、労働基準法で定める法定労働時間を超える残業の2種類があります。
労働基準法で定める法定労働時間は、原則として、1日8時間・1週間に40時間であり、これを超えた労働時間に対して会社は割増賃金(残業代)を支払う必要があります。 -
(2)そもそも早出残業とは
早出残業とは、始業時間より前に勤務して発生した残業のことをいいます。
具体例として、平日9時始業、18時終業(休憩時間1時間を含む)で1日8時間の労働時間を定時としている会社のケースで考えてみます。
この会社で定時の勤務時間に加えて7時からの早朝勤務が強制されていたような場合には、
法定労働時間の8時間を超える16時から18時までの2時間について時間外労働として残業代が発生することになります。
そのためこの場合には、2時間分早出残業が発生することになります。
しかし7時の早朝出勤をしても定時の18時より2時間早い16時に退社するのであれば、8時間と法定労働時間内の勤務となり早出残業は発生しないので注意が必要です。
2、早出残業となり得るケースとは?
ご説明したように始業時間前の勤務が「労働時間」に該当すると判断できる場合には、早出残業として残業代を請求できる可能性があります。
では「労働時間」になるかどうかは、どのように判断するのでしょうか。
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(1)労働時間とは
労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれた時間」をいいます。
「使用者の指揮命令下」とは、会社から明示または黙示に業務の指示があることをいいます。
そのため早出残業となるかどうかの判断は、始業前の勤務について会社から明示または黙示に業務の指示があったといえるかどうかがポイントになります。 -
(2)早出残業となり得るケース
始業前の勤務が労働時間に含まれる可能性があるケースとしては、次のようなものが挙げられるでしょう。
- 上司から「早朝出勤してこの仕事を終わらせてほしい」と言われたケース
- 始業前に強制的にラジオ体操や掃除や朝礼などが義務付けられているケース
- 始業前に制服や作業服を着用する必要があるケース
- 始業前の日々の開店準備が業務として行われているケース
このようなケースのほかに、強制的とはいえなくてもラジオ体操などに参加しなければ異動や昇進で不利益を受ける可能性があるような場合には黙示の指示があったと認められ、早出残業になる可能性があります。
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(3)早出残業にならないケース
一方で始業前の任意の勤務を自発的に行っている場合には、労働時間にはカウントされず早出残業にはなりません。早出残業にならないケースとしては、次のようなケースが挙げられます。
- 朝の通勤ラッシュを避けるために自発的に早く出勤しているケース
- 職場にある新聞をゆっくりと読みたいので早めに出勤しているケース
- 会社から早朝出勤を注意されているのに自ら出勤しているケース
早出残業になるかどうかの判断はご自身で判断することが難しいケースがあります。そういった場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
3、早出残業の残業代の計算方法
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(1)残業代の計算方法
早出残業に関する残業代の計算方法は、通常の残業代を計算する方法と同様です。
労働基準法で定める法定労働時間を超える残業時間については、会社は労働者に対して割増賃金を支払わなければなりません。
法定時間外労働に対しては、1.25倍割り増しした賃金が基本となります。
例外として、1か月60時間を超えた法定時間外労働に対しては1.5倍以上、深夜労働かつ法定時間外労働に対しては1.5倍以上などとそれぞれ異なる割増率が定められています。
なお、時間内の労働でも、深夜労働に対しては1.25倍以上、休日労働は1.35倍以上割り増しした賃金の支払いが必要とされます。
残業代は、これらの割増率を確認し基本的には次のような計算式で求めることができます。
残業代=1時間あたりの賃金×残業時間数×割増率 -
(2)早出残業の残業代計算の具体例
参考までに、早出残業をした場合の残業代の計算を分かりやすくした一例をみていきましょう。
たとえば1時間あたりの平均賃金が、兵庫県の1時間あたりの最低賃金額の1052円(令和6年10月1日から適用)であったとします。
そして毎日1時間早く出勤して、法定労働時間を超えて上司から指示された仕事をこなしていたとします。
この場合、出勤日が1か月に22日間あったとすると、1か月あたりの残業代は1052円×22×1.25=28930円になります。
つまり、毎月2万9千円ほどの残業代を請求できることになります。
もしこういった早出残業が何年も続いているようならば、残業代はさらにまとまった金額となります。
ただし、一定期間が経過すると、未払い分の残業代を請求できる権利は時効が完成してしまうため、請求ができなくなってしまいます。
具体的には以下の通りです。
<時効が完成する期間>
●令和2年3月31日より前に発生した未払い分の残業代……請求できる状態になってから2年
●令和2年4月1日以降に発生した未払い分の残業代……請求できる状態になってから3年
したがって、残業代が次々と時効が完成し、請求できる金額が減少する可能性があります。過去の残業代について請求をお考えの場合は、早めに弁護士に相談するなど、できるだけ早期に対処する必要があるでしょう。
お問い合わせください。
4、早出残業はどのように請求したらよい?
未払いになっている労働の対価を求めることは、労働者の正当な権利です。
早朝出勤を指示されている、または余儀なくされているような場合には、会社への残業代の請求を検討するべきでしょう。
以下では、早出残業の残業代はどのように請求していくのかを大まかにみていきます。
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(1)残業の証拠をそろえる
まずは労働時間を証明する証拠を収集しておきます。
証拠としては、雇用契約書や就業規則や給与明細やタイムカードなどをそろえます。
定時での打刻を職場で指示されているなど、タイムカードで正確な労働時間を証明できないような場合には、メールの送信記録やご自身で記載した勤務時間のメモなども証拠になり得ます。 -
(2)残業代を計算する
次に、労働時間に関する証拠に基づいて残業代を計算します。割増率などに注意しながら計算して、請求額を確定させていきます。
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(3)会社と交渉する
残業代の計算が終わったら、未払いになっている残業代の支払いをご自身で直接会社に求めるのもひとつの方法です。
なお書面で請求を行うことで、後に争いになった場合でも請求の証拠を残すことができます。特に内容証明郵便は、日本郵便が文書の内容を証明してくれるサービスで有力な証拠になります。 -
(4)弁護士に相談する
会社に交渉しても合意が得られない場合やそもそも相手にしてくれないような場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、法的に有効となり得る証拠の集め方から残業代の計算まで対応することができます。また弁護士の名前で内容証明郵便を会社に送付したり、代理人として会社と交渉を進めたりしていきます。
個人で交渉しても相手にされないような場合でも弁護士が介入すれば会社も真剣に対応しなければならないと考えますし、一定のプレッシャーを与えることができるため、早期解決につながる可能性が高まります。
5、まとめ
「先輩も皆、早朝出勤している」「請求しづらい雰囲気がある」「1時間に満たない早朝勤務だから」など、早朝勤務によって発生する残業代を諦めてしまうケースが少なくないようです。しかし、短時間の早朝勤務も重なれば、まとまった額の残業代になります。また、説明してきたように、早出だからといって、残業にならないわけではありません。
早出残業を強いられているにもかかわらず賃金に換算されていない方、未払い残業代を請求したいとお考えの方は、一度、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスまでご相談ください。労働問題についての知見が豊富な弁護士が、お客さまの悩みをしっかりと伺った上で、解決に向けてサポートします。
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