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変形労働時間制の概要とデメリットは? 残業代の計算方法も解説

2021年04月15日
  • 残業代請求
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  • デメリット
変形労働時間制の概要とデメリットは? 残業代の計算方法も解説

令和元年10月、教員に変形労働時間制を導入することなどを盛り込んだ教職員給与特別措置法が提出されました。長時間労働が深刻化している教員の働き方改革をこれによって目指しているようです。

変形労働時間制は、すでに多くの業種で取り入れられている制度です。本記事では変形労働時間制を受け入れる上で知るべきデメリットと、変形労働時間制における残業代計算方法を姫路オフィスの弁護士が紹介します。

1、変形労働時間制とは?

  1. (1)変形労働時間制の制度について

    前述もしましたが、変形労働時間制とは労働時間の割り振りに自由度を持たせる制度です。全ての会社が毎日一定のリズムで働いているわけではありませんし、その必要がない会社もあります。そこで無駄な労働時間を減らすことで、労使共に効率よく働こうというのが本制度の趣旨です。

    たとえば1か月のうち月末が忙しくなるような会社の場合、月末の5日間の労働時間を10時間とし、それ以外の日を7時間とする、といった決め方ができます。

    変形労働時間制は1週間単位、1か月単位、1年単位で決めることができ、それぞれ次の制限があります。

    • 1週間単位の場合は1日10時間という限度で週40時間を自由に割り振る
    • 1か月単位の場合は週40時間という限度で月160~177.1時間を自由に割り振る(1か月の日数による)
    • 1年単位の場合は1日10時間、週52時間という限度で年2085.7時間または年2091.4時間を自由に割り振る


    ただし、1週間単位は「非定型的変形労働時間制」となり、規模30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店の事業において、労使が合意した場合のみ適用できる制度となっています。どの業種・規模でも適用できるわけではないので、注意しましょう。

    上記の制限内である上で、各日の所定労働時間は事前に労働者に書面等で「具体的に」通知されていなければなりません。つまり、当日の朝に「今日は10時間でよろしく」などと上司に言われたとしても、それは所定の労働時間とはならないのです。
    変形労働時間制が適用されるには、各日の所定労働時間(始業時間と終業時間)が明確に、指定の期日までに労働者に通知されていなければなりません。シフト表などがわかりやすい例でしょう。ただし、シフトが事前に決まっている場合も、シフトが頻繁に変わる場合や、当日にシフトを変更される場合などは、変形労働時間制の適用外となります。

    また、フレックスタイムも変形労働時間制の1種です。フレックスタイムはコアタイムだけを決めて、それ以外の時間(フレキシブルタイム)は自由に使えます。ちなみにフレキシブルタイムに働いた時間の合計が所定労働時間に満たない場合、来月に余った労働時間が繰り越されます。

  2. (2)通常の制度より総労働時間は長くならない

    変形労働時間制を導入する上での労働者の心配事といえば、「残業が長くなること」ではないでしょうか。確かに、変形労働時間制は日ごとの労働時間を自由に設定できる制度で、これまで時間外労働であった部分も所定労働時間になる可能性が高くなります。

    しかし、変形労働時間制はあくまで労働時間の前借りおよび後回しです。1か月あたり、あるいは1年あたりの法定労働時間が延びることはありません。

    したがって、残業代は減るかもしれませんが、総労働時間としてはあまり変わらないと考えられます。閑散期はすぐに帰れるようになるため、そこでバランスを取ることになります。

  3. (3)変形労働時間制でも残業代は請求できる

    通常の法定労働時間は8時間のため、1日の労働時間が10時間だった場合、本来であれば2時間分の時間外手当が残業代として労働者に支払われます。ところが変形労働時間制では、1日の所定労働時間を10時間とすることで、法定労働時間を超える2時間分について時間外手当がつかなくなるのです(ただし、1週間の労働時間が40時間以内である必要があります)。
    しかし、変形労働時間制であっても、所定の労働時間を超えた分の時間外労働手当ては支払われます。

    したがって変形労働時間制はサービス残業を推奨する制度ではありません。
    サービス残業は可能な限り拒否し、引き受けてしまった分も使用者に残業代請求可能です。

    混同しやすい制度に裁量労働制がありますが、裁量労働制は出退勤が自由であるため毎日出勤する必要もなくなります。その一方で、必要があれば会社の外でも働くことが求められる制度です。裁量労働制はサービス残業以前にシフトという概念がないのです。

  4. (4)導入には労使協定が必要

    使用者(企業の経営者や雇用主)が変形労働時間制を導入すると、すぐに変形労働時間制の働き方になってしまうと思っていませんか? しかし、その心配はありません。

    使用者が変形労働時間制を導入するためには労使協定が必要で、そこでの合意がなければ変形労働時間制を受け入れる必要がないです。また、変形労働時間制になる社員は明確に決めなければならず、就業規則に変形労働時間制の条文を定めておくことも必要です。36協定の締結も忘れずに行いましょう。

2、変形労働時間制のデメリットは?

  1. (1)繁忙期の時間外手当が減る

    まず、変形労働時間制のデメリットとして考えられるのが残業代の減少です。

    残業代は1日8時間、週40時間を超える労働に対して基本給の0.25倍である時間外手当てが上乗せされるのが原則ですが、前述の通り、変形労働時間制によって繁忙期の所定労働時間が増やされると、その範囲については時間外の割り増しが加算されません。よって所定労働時間が10時間でも、8時間を超える部分は基本給しか払われないのです。

    その分閑散期は早く帰れるメリットがありますが、残業代を当てにしていた労働者にとっては手痛いデメリットになります。

    ちなみに、変形労働時間制で定められる所定労働時間は、1日10時間が限度となります。それ以上は法令違反となりますので、事前に拒否するか、越えた分の残業代を請求しましょう。

  2. (2)閑散期でも残業は否定できない

    変形時間労働制で決められた所定労働時間は、あらかじめ決めた期間が終わるまで撤回や変更ができません。しかし、時間外労働が禁止されているわけでもありません。

    よって、繁忙期はもちろんとして閑散期でも思わぬ残業が生じることもあります。
    ただし、所定労働時間が8時間以下の閑散期についても、法定労働時間である8時間以内は基礎時給が、労働時間が8時間を越えればその分時間外手当がつくので、正しく支払われているか気をつけて確認するようにしましょう。

  3. (3)誤用・悪用の恐れあり

    変形労働時間制において一番のデメリットといえるのが、 使用者側の誤用や悪用です。
    変形労働時間制は、運用が難しい制度です。各人に合わせた勤怠管理が必要な上、残業代計算も個人個人の所定労働時間に合わせて行う必要があります。

    誤用・悪用の最たる例は「変形労働時間制だから残業代が出ない」です。確かに変形労働時間制は所定労働時間の割り振りで時間外手当を節約できるメリットが企業側にあります。しかし、時間外手当は通常の制度と同じく支払われるし、変形労働時間制においても1か月あるいは1年間の総労働時間は増えません。

    ほかには、深夜割増が通常通り払われることに注意が必要です。連勤にも限りがあり、1年単位の変形労働時間制においては6連勤が限度です。

    使用者の勘違いや悪用には毅然とした対応を心がけ、しかるべき対応をしてください。不安な場合は、弁護士へ相談するとよいでしょう。あなたの労働時間などの状況から適法かどうか確認し、必要な場合は会社との交渉や訴訟の対応などもしてくれます。

3、変形労働時間制の残業代計算方法

変形労働時間制の残業代計算方法を解説します。

通常の労働時間制であれば1日8時間または1週間40時間を超える労働時間に時間外手当を加算します。したがって1日7時間かつ6日働いた日は2時間が時間外労働となります。

  1. (1)1週間単位の変形労働時間制の場合

    1週間単位の変形労働時間制の場合は、次の手順で計算します。

    • 「所定労働時間が8時間を超えている日は、所定労働時間を超えた分全てを時間外労働とする。所定労働時間が8時間に満たない日は、8時間を超えた分だけ時間外労働とする。
    • ここまで計算した残業時間を除外した上で、週40時間を超えた労働時間に時間外手当を加算する。
  2. (2)1か月単位の変形労働時間制の場合

    1か月単位の変形労働時間制の場合は、次の手順で計算します。

    • 「所定労働時間が8時間を超えている日は、所定労働時間を超えた分全てを時間外労働とする。所定労働時間が8時間に満たない日は、8時間を超えた分だけ時間外労働とする。
    • ここまで計算した残業時間を除外した上で、週40時間を超えた労働時間に時間外手当を加算する。週40時間を超える所定労働時間でかつ残業がある場合は、所定労働時間を超えた分に時間外手当を加算する。
    • 日ごと、週ごとの残業時間を除外した上で、1か月の法定労働時間を超えた分に時間外手当を加算する。
  3. (3)1年単位の変形労働時間制の場合

    1年単位の変形時間労働制の場合は次の手順で計算します。

    • 所定労働時間が8時間を超えている日は、所定労働時間を超えた分全てを時間外労働とする。所定労働時間が8時間に満たない日は、8時間を超えた分だけ時間外労働とする。
    • ここまで計算した残業時間を除外した上で、週40時間を超えた労働時間に時間外手当を加算する。週40時間を超える所定労働時間でかつ残業がある場合は所定労働時間を超えた分に時間外手当を加算する。
    • 日ごと、週ごとの残業時間を除外した上で、1年の法定労働時間を超えた分に時間外手当を加算する。


    残業代は基本的に月払いですが、1年単位の変形労働時間制を採用した場合は1年あたりの法定労働時間を超えた分の残業代支払いを、期間が終わった直近の月に行います。

  4. (4)休日手当と深夜割増手当は通常通り計算

    休日手当と深夜割り増し手当は通常通り計算されるので、法定休日は就業規則などできちんと確認しましょう。変形労働時間を理由に深夜割り増しが否定されることもありません。

4、残業代請求で弁護士に相談するメリット

変形労働時間制の残業代請求は、通常の場合よりも難しいため弁護士へ相談することをおすすめします。ここでは弁護士に相談するメリットを紹介します。

  1. (1)複雑な計算をしてもらえる

    残業代の計算は複雑です。労働時間の計算は分単位で行う必要があり、時間外手当のほか休日手当や深夜手当の重複も考えなくてはいけません。そもそも法定休日はいつなのか? 深夜早朝の出勤を含め勤怠記録は存在するのか? といった計算の根拠をそろえるだけでも個人では難しいものです。

    弁護士は、判例や交渉事例に応じて適切な証拠集めをサポートし、複雑な残業代計算も丸ごと引き受けます。

  2. (2)聞き慣れない制度にも対応

    変形労働時間制をはじめ、労働者がなじみの薄い制度についても対応できる点が弁護士の強みです。弁護士を選ぶ際には、これらの制度について相談者にわかりやすく説明してくれることを基準にするのもよいでしょう。

  3. (3)交渉から訴訟まで代理可能

    弁護士は、会社との交渉から訴訟まであなたの代理ができます。会社の人と顔を合わせたくないときも、自分での訴訟が難しいときも力強いパートナーになってくれるでしょう。

5、まとめ

変形労働時間制はあなたの働き方を変えますが、しっかり運用されればデメリットは少ないです。ただし、企業側が正しく運用しない可能性があるため、注意が必要でしょう。また、残業が常態化している、サービス残業が多いといった問題は、働き方と関係なく放置すべきでない問題です。

変形労働時間制を理由として残業代が支払われていないなどといった場合には、残業代の不払いで不利益を被らないためにも、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスでご相談ください。経験豊富な弁護士があなたをサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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