悪質な訪問販売による被害にあわないためには、どうすればいい?

2020年04月20日
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悪質な訪問販売による被害にあわないためには、どうすればいい?

姫路オフィスの弁護士が所属する兵庫県弁護士会では、悪質な訪問販売を少しでも減らそうと、兵庫県と兵庫県警察本部の連名での「訪問販売お断り」のステッカーを作成しており、兵庫県弁護士会主催の消費者保護に関するイベントのほか、兵庫県弁護士会館や兵庫県弁護士会姫路支部、兵庫県弁護士会阪神支部の各窓口でステッカーを配布しています。

もし、「訪問販売員の勧誘がしつこい」「なかなか帰ってくれない」など悪質な訪問販売の被害はどう防げばいいのでしょうか。契約解除の方法とあわせて弁護士が解説します。

1、悪質な訪問販売の種類と手口とは

まずは、悪質な訪問販売の手口を中心に解説します。心当たりがある場合は、どうしたらよいのか、次項以降をご確認ください。

  1. (1)キャッチセールス

    キャッチセールスとは、路上などで「アンケートに答えてください」などと言って歩行者を呼び止め、その後営業所などにつれて行って高額な商品やサービスを契約させることを言います。被害の多い商品・サービスとしては、化粧品やエステティック、アクセサリー、美顔器、絵画などがあげられます。

  2. (2)アポイントメントセールス

    アポイントメントセールスとは、「あなたが当選しました」「このおたよりが届いた方だけお得に契約できます」などのはがきや手紙を送りつけて、営業所などに呼び出して契約をさせるものです。異性が出てきて親しげな態度で接して営業所に連れ込み、契約をさせるデート商法や金が手に入るような投機的な取引であるロコ・ロンドン金取引などの手口も報告されています。

  3. (3)点検商法

    訪問販売であることをあきらかにせず、自宅に上がり込んで「このまま放置していると危ない」と言ってリフォームなどの契約や、商品の購入を迫ることを指します。たいてい相場よりも高額であったり、後からよく考えたら不要なものであったりすることが多いのがその特徴です。

  4. (4)悪質な訪問販売の手口

    悪質な訪問販売の手口は、以下のようなものがあげられます。

    • 社名や勧誘目的を隠す
    • 会社にとって都合の悪いことを言わない
    • 契約書を出さない
    • 無理やり契約を迫る
    • 長時間居座る
    • 「契約解除できない」「違約金がかかる」と言ってくる
    • 進路を妨害してつきまとう

2、訪問販売ルールが変更に

平成21年、特定商取引法や割賦販売法の改正により、訪問販売のルールが変更になりました。この変更により、より消費者被害から消費者が守られるような規定が設けられています。ここでは、その内容について解説します。

  1. (1)すべての商品・役務が対象

    原則としてすべての商品・役務が訪問販売の規制対象となりました。これまで、法律により定められた商品・サービスのみが規制対象となっていましたが、近年は商品・サービスが多様化し、CO2排出権取引など規制対象外の商品・サービスを狙った訪問販売などが増加していました。そのため、新たな消費者被害を未然に防止するため、原則として、規制対象を拡大したのです。

  2. (2)一度断られたら勧誘できない

    近年では、高齢者の方を対象とした訪問販売が増えており、しつこく勧誘されてやむを得ず契約をさせられることが多くなってきています。そこで、事業者が消費者を勧誘した後に「契約しない」「いらない」と断られると、その後は一切勧誘ができなくなりました。

  3. (3)日常的に必要とされる量を著しく超えると契約解除できる

    サプリメントを飲みきれないほど購入させられる、何度も自宅にやってきて羽毛布団を購入させられるなど、日常的に必要とされる量を大幅に超えて契約をさせられた場合は、契約解除ができるようになりました。また、消費者が大量に購入する場合は、それだけの量が必要になる事情を業者側が確認しなければなりません。

  4. (4)クーリングオフ妨害にあったら商品を使用後でも契約解除できる

    「使用後はクーリングオフできない」「解約には違約金が必要」などと嘘や脅迫でクーリングオフを妨害された場合、消費者はいつでも契約解除ができるようになりました。なお、商品を開封したり使用したりしてしまった後でも、販売業者は代金を請求できないとされています。

  5. (5)カード会社との与信契約を解除すると販売契約も解除に

    クレジットカード決済で代金を支払った後、カード会社にクーリングオフしたい旨を告げると、販売業者との間の契約も自動的に解除になります。販売業者のほうにはカード会社のほうから通知してもらえるので、消費者が販売業者に通知する必要はありません。

  6. (6)支払い能力を超えていれば与信契約が禁止に

    カード会社に消費者の支払い能力を調査することが義務付けられました。たとえば、収入が少ないのに100万円の契約をした場合において、カード会社が支払い能力を超えていると判断したときは、与信契約や利用限度額の増額などができなくなります。

  7. (7)解約後の代金返済をルール化

    これまで、悪質な訪問販売をされて契約金を支払ってしまったら、返してほしいと言っても返金されることはほとんどありませんでした。しかし、法改正により、クレジットカード決済をした場合は、カード会社が販売業者の代わりに消費者に契約した金額分を返金し、立て替えたお金をカード会社から販売業者に請求する、というルールに変わりました。

  8. (8)罰則規定を強化

    また、罰則規定も強化されています。たとえば、商品名やサービス名を隠したり、重要事項を告げずに契約をさせたり、「今契約しないと大変なことになる」などと脅して契約させた場合は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金もしくはその両方が科せられることになりました。また、営業所などに連れ込んで複数の人間で消費者を取り囲み、契約を迫ったなどの場合も、1年以下の懲役または200万円以下の罰金もしくはその両方が科せられることになります。

3、悪質な訪問販売の被害を防ぐには

悪質な訪問販売から自分や家族の身を守るためには、どうすればよいのでしょうか。ここでは被害を防ぐための5つの方法をご紹介します。

  1. (1)家に入れない

    まずは、あやしいと思ったら家に入れないことが重要です。必ずインターホン越しに対応し、できるだけ相手との会話を録画や録音をするようにしましょう。また、「お話だけでも」などと言って会社名や氏名、訪問目的を相手が言わない場合は、「営業ですか?」「社員証を見せてください」などと伝え、相手の訪問目的や会社名・氏名を教えてもらうようにしましょう。

  2. (2)相手との会話を録音・録画する

    相手との会話を録音・録画しておけば、被害にあったときに相手方の違法行為を証明できます。最近では録画や録音のできるテレビモニター付きのインターホンも増えているので、あやしい業者が来たらそういった機能を活用しましょう。もし録音・録画機能のついていないインターホンしかないようなら、インターホンの近くにICレコーダーを常備しておくことをおすすめします。

  3. (3)きっぱりと断り、「帰ってください」と伝える

    商品やサービスがいらない場合は、きっぱり「いりません」と断ることが大切です。曖昧な態度を取っていると、相手方につけこまれることがあるからです。「結構です」という言葉も、相手方にYESの意味として受け取られる可能性があるので、そのような曖昧な言葉は用いないほうがよいでしょう。

    相手がなかなか立ち去ろうとしない場合は、「帰ってください」とはっきり伝えます。帰ってほしいと伝えているのにとどまろうとする場合は、不退去罪という犯罪が成立するので、ためらわずに警察に通報しましょう。

  4. (4)すぐに契約しない

    もし玄関ドアを開けて相手方の話を聞いてしまっても、すぐに契約書にサインすることはやめましょう。その場では本当に必要かどうか冷静な判断ができないためです。また、リフォーム工事やシロアリ駆除などは、同業他社に複数見積を取ることで相場がわかり、相手が悪質かどうかを見抜くこともできます。最寄りのリフォーム業者や害虫駆除業者がわからない場合は、市町村の窓口に問い合わせると、事業者団体の紹介を受けることが可能です。

  5. (5)玄関先やポストにシールなどが貼られていないかチェックする

    相手が帰った後は、玄関まわりやポストにシールが貼られていたり、何かのマークが書かれたりしていないかチェックしましょう。他の販売員に対し、家族構成や購入の見込みなどを知らせる目印にされている可能性があるからです。

4、悪質な訪問販売にあったらどうすべき?

基本的に、訪問販売はすべてクーリングオフをすれば契約が解除できます。詐欺や脅迫行為があるなど悪質な訪問販売の場合は、クーリングオフ期間に関係なく契約解除できることもあります。もし不必要なものを買わされたときは、泣き寝入りせず相談することが大切です。

  1. (1)クーリングオフ制度を利用

    「契約をしたけれど、後から考えてみたら不要だった」などの場合は、クーリングオフ制度を利用しましょう。クーリングオフは法定書面(契約書やクーリングオフの説明書など)を受け取った日から8日以内です。契約日や購入日ではないので注意が必要です。

    クーリングオフの手続きをするときは、後々のトラブルを防ぐため、電話ではなく、書面で行うべきです。法定書面を受け取った日から8日以内に発送すれば問題ありません。発送するときは、相手方にしっかりと届いたことを証明するために、配達証明付きの内容証明郵便で送るのが望ましいです。

  2. (2)詐欺や脅迫による契約は取り消しができる

    業者が嘘をついて事実と異なる説明をしたり、「このままでは大変なことになる」と脅したりして消費者に契約させた場合、その契約は取り消すことができます。契約が取り消しになると、最初からその契約は無効ということになります。

  3. (3)消費生活センターに相談する

    訪問販売の被害にあったら、最寄りの消費生活センターに相談しましょう。消費生活センターがどこにあるかわからない場合は、「消費者ホットライン188」(電話番号:188)に連絡すれば、自宅近くの消費生活相談窓口を紹介してもらえます。土日祝日など、消費生活センターが開いていない場合は、国民生活センターに電話がつながります。

  4. (4)根本的解決を目指すなら弁護士に相談

    上記の消費生活センターや国民生活センターでは相談には乗ってもらえますが、あくまでも相談を受けるのみであり、根本的に問題を解決してくれるわけではありません。

    根本的に問題を解決するには、やはり弁護士に相談したほうがよいでしょう。弁護士であれば、販売業者と交渉し、契約解除できたり返金を受けられたりする可能性が高くなります。また、消費者団体訴訟制度を利用できることもあります。訪問販売でトラブルが起こったときには、消費生活センターだけでなく弁護士にも相談されることをおすすめします。

5、まとめ

時代の変化に伴って新しい商品やサービスが出てきたためか、それに目を付けた悪質な販売業者による消費者被害は拡大しています。被害にあわないようにするためには、相手を家に入れない、ドアを開けなくても外の様子がわかるようモニター付きインターホンを設置するなど、自衛をすることが重要です。

しかし、それでも被害にあってしまったなどという場合には、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスまでご相談ください。消費者被害の経験豊富な弁護士が対応策を考え、問題解決に導きます。お一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています