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ずっと家にある親戚からの預かり物がじゃま……勝手に処分していい?

2020年05月01日
  • 一般民事
  • 預かり物
  • 処分
ずっと家にある親戚からの預かり物がじゃま……勝手に処分していい?

荷物を預けたい人と荷物の預かりスペースを持つお店をつなぐ会社が、西日本旅客鉄道と業務提携を行い、系列の店舗で新たにサービスを開始するとの発表がありました。神戸や姫路の旅行代理店でもサービスを行うそうです。

これは会社が人の荷物を預かるお話ですが、親戚や友人・知人から荷物を預かっていて、処分をめぐってトラブルになるケースも少なくありません。持ち主が取りに来ない場合、勝手に処分してはいけないのでしょうか。預かり物を処分したときに起こりえるトラブルについて、姫路オフィスの弁護士が解説します。

1、ものを預ける・預かる契約「寄託契約」とは

友達同士、または親戚同士でものを預けたり、預かったりしたことのある方も多いのではないでしょうか。ここでは、預ける・預かるという行為にかかわる契約の「寄託契約」について解説します。

  1. (1)寄託契約とは

    寄託契約とは、一方が自分のものを相手方に預け、その相手方がものを預かって保管する契約のことです。もの預けるほうを「寄託者」、預かるほうを「受寄者」といいます。

    たとえば、友人宅で荷物を預かってもらうのも、寄託契約のひとつです。また、コンサートを聴くときに、ホールのクロークでかばんやコートを預かってもらうのも寄託契約になります。このように、普段なにげなく行っている「預ける・預かる」ことが、寄託契約となるのです。

  2. (2)寄託契約と混同しやすい契約

    同じ「預ける・預かる」行為であっても、寄託契約とは異なる契約になることもあります。たとえば、コインロッカーに荷物や貴重品を預けたり、車をコインパーキングに預けたりする行為は、その場所を借りることになるので、「賃貸借契約」になります。また、子どもを託児所に預ける行為は、「(準)委任契約」になります。

  3. (3)預かった者の義務とは

    受寄者(ものを預かった者)は、他人から預かったものを保管する義務を負います。保管とは、自分の家にただ置いておけばよい、ということではありません。紛失や盗難から守ったり、なくしたり傷つけたり壊したりすることなく、現状のまま保管できるような措置を講じなければならないのです。そうして、預かったときの状態で相手方に返すことができるようにしなければなりません。

    また、ホテルや銭湯などでお客さまから預かった貴重品や荷物を紛失・滅失したときは、基本的には、損害賠償責任を免れないことになります。そのため、ホテル等では、損害賠償責任を負わなくてもよいように「貴重品は自己管理でお願いします」と表示しているのです。

  4. (4)有償で預かっている場合

    相手方のものを有償で預かっているときと、無償で預かっているときとで、受寄者が払わなければならない注意の度合いが異なります。
    相手方から保管料を支払ってもらうなど、有償で預かっている場合は、善良なる管理者の注意をもって管理することが必要です。つまり、受寄者には善管注意義務が発生します。

  5. (5)無償で預かっている場合

    一方、無償で他人のものを預かっている場合は、自分の所有物や財産に対する注意と同じくらいの注意をもってそのものを保管すれば問題ないとされています。

2、預かっているものはどうすべき?

友人や知人、また親戚などから荷物を預かっていて、ずっと何年も引き取りに来ない場合は、どうすべきなのでしょうか。勝手に処分してもよいのでしょうか。それとも相手が引き取りに来るまで置いておかなければならないのでしょうか。

  1. (1)勝手に処分することはNG

    相手から預かっている荷物がかさばってじゃまになるからといって、勝手に廃棄物として処理することは許されません。相手の合意なく処分すれば、器物損壊罪が成立する可能性があります。「損壊」とはものを壊してしまうことだけを指すと思いがちですが、刑法上、壊さないまでもそのものを元のとおりに使えなくしてしまう行為のことを「器物損壊」というのです。器物損壊罪にあたる場合、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料に処せられます。

    刑事告訴はされないまでも、預かっていた荷物が相手にとってとても大事なもので、なくなると困るようなものであった場合は、民事上、損害賠償請求されるおそれもあります。したがって、相手からの預かり物を勝手に処分することは避けたほうがよいでしょう。

  2. (2)相手の住所がわかる場合

    相手方の住所がわかる場合は、「預かり物を早く引き取ってほしい」旨を記した内容証明郵便を送る、相手方に預かり物を直接送るなどの手段が採れます。内容証明郵便を送るときは、弁護士の名前で送れば、相手方も「無視はできない」と考え、何らかのレスポンスをしてくれる可能性が高くなります。内容証明郵便は書式が決まっているので、書式についてのアドバイスを受けるためにも一度弁護士に相談したほうがよいでしょう。

  3. (3)相手の住所がわからない場合

    相手方が引っ越してしまい、電話番号やメールアドレスも変わって連絡がつかなくなってしまった、共通の知人・友人も連絡先を知らないというときは、上記の方法は使えません。そのかわり、裁判所の「公示送達」を利用します。

    公示送達とは、相手に自分の意思を伝えたくても相手の住所や連絡先などの個人情報がわからないときに、意思を伝えるための手続きのことです。裁判所に公示送達申請書と必要な添付書類、収入印紙・切手を用意し、申請をします。その後、裁判所と市区町村役場の掲示板に公示送達の内容が掲示され、2週間後に相手方にその意思表示が到達したものとみなされます。

3、預かっているものに料金がかかっている場合

たとえば、家の建て替えやリフォームなどをしなければならなくなり、預かり物をトランクルームや引っ越し業者の倉庫に預けるときは、保管料が発生します。このように、預かり物に料金がかかるようになった場合は、どうすればよいのでしょうか。

  1. (1)保管料の請求

    保管料がかかるようになったら、かかった実費を相手方に請求します。トランクルームの場合は、月ぎめの料金のほか、会員登録料や事務手数料などが発生することもありますので、その分も請求額に入れましょう。請求方法は、電話やメール、手紙を送るほか、内容証明郵便を送って請求する方法もあります。

  2. (2)契約解除の意思表示をする

    保管料がかかるようになったあともしくは保管料がかかってくる前に、「預かり物を預かるのをやめる」のように、契約解除の意思表示を相手方にすることも可能です。保管料がかかる前であれば、お互いに料金の心配をしなくてすみますし、料金の請求のやり取りに伴うコストや精神的なストレスも減るでしょう。

  3. (3)競売にかけて保管料と相殺する

    「相手方に契約解除を呼びかけても反応がない」「相手方が行方をくらましてしまったので、住所も連絡先もわからない」などの場合は、先述の公示送達をした上で預かり物を差し押さえ、競売(けいばい)にかける方法もあります。そうすれば、競売で得たお金と保管料を相殺することもできます。検討してみるとよいでしょう。

4、寄託者・受寄者のいずれかが亡くなっている場合はどうする?

法律上、荷物を預けている側を「寄託者」、預かっている側を「受寄者」と呼びます。

預かり物を預かっているうちに、長い年月がたってしまい、預かり物が引き取られないうちに寄託者・受寄者のいずれかが亡くなってしまうケースも少なくないでしょう。その場合はどうすればよいのでしょうか。

  1. (1)寄託者が死亡した場合

    寄託契約は所有権に関する契約なので、寄託者・受寄者のどちらが死亡しても、自動的に寄託契約が消滅するわけではありません。寄託者が亡くなった場合は、寄託者の地位は原則として相続人に引き継がれます。たとえば寄託者Aに子どもBがいる場合は、Aの死後はBが寄託者となります。

    なお、倉庫に預けている場合は、倉庫業者との契約で「契約者の遺言により遺言執行者がある場合は、その遺言執行者を継承人として扱う」とされるケースもあります。

  2. (2)受寄者が死亡した場合

    受寄者が死亡した場合も、受寄者の地位は一身専属のものではないので、法定相続人にそのものを保管する義務が引き継がれます。

  3. (3)美術館に寄託していた特定美術品は相続税が猶予に

    平成31年4月1日より、相続税制が改正され、美術館に寄託されていた特定美術品に関する相続税の納税が猶予されることになりました。一部の重要文化財や登録有形文化財に指定された美術品(特定美術品)が対象で、その美術品を美術館に寄託していた個人が亡くなった場合、相続人に対し、課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。

    ただし、猶予されるまでにその美術品を第三者に譲渡したなどの場合は、その税額に加えて利子額も支払わなければならなくなるため、注意しましょう。

5、預かり物の処分をめぐるトラブルは弁護士に相談

預かり物を預かる期間が長くなればなるほど、預けたほうと預かったほうとの間でいさかいが生じやすくなります。そのため、ものを預かったほうも、預けたほうも、トラブルになりそうな場合は早い時期から弁護士に相談したほうがよいでしょう。

  1. (1)民法改正で寄託契約が諾成契約化

    以前はものを相手方に引き渡すことが寄託契約の成立要件とされていましたが、民法改正により、ものがなくても当事者同士の合意だけで契約が成立することとなりました。これを「諾成契約化」といいます。そして、無償で預かる場合、書面による合意を除いて、受寄者は預かり物を受け取るまではいつでも契約解除ができるようにもなりました。

    そのため、たとえば「今度〇月〇日から荷物を預かってよ」と言われてそれに口頭で「いいよ」と合意した場合、その日が来るまでに預かる側が一方的に「やっぱりやめた」と言うことができるようになるわけです。そうなると、荷物を預けようとしていた側は「あのとき、いいよと言ったじゃないか」と相手方に主張し、トラブルとなってしまう可能性があります。

  2. (2)弁護士に相談してトラブル防止を

    上記のようなトラブルを防止するためにも、できれば荷物を預ける、または預かる約束をする前に、弁護士に相談することが大切です。弁護士に相談しておけば、面倒でもあらかじめ書面で合意をしておくなどの方法がとれます。もちろん、その書面も相談者が不利にならないような内容にすることが可能です。

    「言った・言わない」のトラブルを防ぐためにも、弁護士に相談した上で書面で契約を交わしておくほうがよいでしょう。

6、まとめ

ものを預けているほうは預けていることを忘れてしまうこともあるかもしれません。しかし、預かっているほうは少なからず自宅のスペースをそのために割くことになるので、預かっている期間が長くなるほどストレスになるでしょう。

預かり物の処分について困ったり、トラブルになったりしそうなときは、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスまでご連絡ください。知見豊富な弁護士が、どういう対応策がベストなのか、一緒に考えて、ご提案します。ひとりで悩まず、まずはお気軽にご来所の上、ご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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