引っ越しトラブルに遭ったら! 乗り越え方と相談先を弁護士が解説

2022年02月07日
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引っ越しトラブルに遭ったら! 乗り越え方と相談先を弁護士が解説

賃貸住宅にまつわるトラブルの代表例のひとつが「退去トラブル」です。平成31年3月に兵庫県東播磨消費生活センターが発信した広報紙でも「賃貸住宅の退去トラブルにご注意!」といった見出しで、実際に寄せられたトラブル事例や解決法を簡単に紹介しています。

賃貸住宅を退去する際は退去費用を清算することになりますが「高額な請求を受けた」「清算額が納得できない」といったトラブルはめずらしくありません。また、新居に引っ越した際にも入居後すぐにトラブルが起きたといったケースも考えられます。

引っ越しの機会に起きるおそれがあるトラブルの具体例や回避・解決に向けた対策について、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。

1、「引っ越し」で起きるトラブルの具体例

人生のなかのさまざまなイベントや仕事の都合などでは「引っ越し」を伴うことがあります。引っ越しの際には、不動産業者や物件のオーナー、引っ越し業者などとの関わりをもちますが、トラブルが発生するケースも少なくありません。

まずは「引っ越し」で起きるトラブルの具体例を挙げていきましょう。

  1. (1)旧居の退去トラブル

    これまで生活していた賃貸住宅から退居する際には「退居清算(精算)」と呼ばれる手続きを取ることになります。

    入居時に支払った敷金から物件の原状回復のための費用を精算しますが、ここでのトラブルは絶えません。

    • 敷金を返してくれない
    • 壁紙クロスや天井の汚損を指摘されて高額な修繕費用の請求を受けている
    • 借主に責任のない劣化などの修繕費用もあわせて請求された


    退居トラブルでよく登場するのが「原状回復」という用語です。国土交通省が示しているガイドラインによると、原状回復とは、借主の故意・過失・善管注意義務違反・そのほか通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧することと定義されています。

    ところが、原状回復という用語を「借主が入居する前の状態に戻すこと」という意味だと誤解しているオーナーも少なくないため、過剰な金額の請求を受けるトラブルが起きるのです。

  2. (2)引っ越し業者とのトラブル

    引っ越しは大変な作業なので、引っ越し業者にすべて任せるといった方も多いでしょう。頼りになる存在ですが、トラブルに発展するケースもめずらしくありません。

    国民生活センターに寄せられた事例をみると、次のようなトラブルがあるようです

    • 作業時に家具類を傷つけられた
    • テレビの液晶画面が破損した
    • 養生マットが汚れていたので住居が汚れた
    • 指定した新居に荷物が届かない
    • 業者側の不手際で作業が遅延したのに「残りは自分でやって」と言われた など
  3. (3)新居への入居後トラブル

    新たな引っ越し先は、新築であったり前入居者の退去時に修繕・クリーニングをしていたりするのが一般的なので、退去時のようなトラブルは起きにくいでしょう。

    ところが、内見時には気づかなかった電気・ガス・水道といったライフライン設備の不備、キッチンやトイレなど水まわりの不備、エアコンや給湯器といった機器の不良などが起きるケースもあります

    実際に生活してみたうえで転居するわけではないので、意外な騒音・日照・近隣トラブルに遭ってしまうことも少なくないようです。

2、引っ越しトラブルを回避するためには?

引っ越しトラブルがあるとせっかくの新生活が台無しになってしまうおそれがあります。できるだけ引っ越しトラブルを避けるためには、ここで挙げるような点に気をつけておきましょう。

  1. (1)退去時に気をつけたいこと

    退去時には「退去立会い」が行われます。立ち会いをするのは、物件オーナーから管理委託を受けた仲介の不動産業者になるのが一般的です。

    立ち会いといっても、すべての箇所を一緒に点検するのではなく、不動産業者が作成したチェック表に従って汚損・破損箇所の指摘を受けることになるでしょう。その際に、不動産業者から「ここは破損しているので借主負担で修繕する」「この汚損はクリーニングの対象なので全額負担を」などと求められると、納得できないと感じることがあるかもしれません。

    もし、退去立会いの際に納得できない点があれば、確認のサインを拒否しましょう。確認のサインをしてしまうと「汚損・破損を借主負担で修繕することを了承した」という意思表示になってしまいます。

    一方的に過大な負担を強いられて不利な状況に陥らないように注意しましょう。

  2. (2)引っ越し作業で気をつけたいこと

    引っ越し業者とのトラブルで多いのが家具類の破損や荷物の紛失です。破損しやすい家具類や高額な物品は引っ越し業者が作業を始めるよりも前に写真撮影しておく、貴重品のリストを作成しておくなどの対策を講じておきましょう

    「すべてお任せ」の引っ越しサービスを利用した際も、作業中や作業終了後はすぐに点検をすることが大切です。正式に依頼した際は必ず契約書を交わし、見積書や約款といった重要な書類はすべて保管しておきましょう。

  3. (3)入居時に確認しておくこと

    入居後のトラブルを避けるには、入居の際に設備などのチェックを尽くすことが大切です。

    入居時に発見した傷や汚れは写真撮影しておき、設備不良はどのような欠陥があるのかも記録しておきましょう。入居してすぐに使わないような設備でも、まずは試運転をして正常に作動するかをチェックしておけば安心です。

3、引っ越しトラブルの解決方法

引っ越しトラブルに巻き込まれてしまったときの解決方法も確認しておきましょう。

  1. (1)退去トラブルの解決方法

    退居清算のトラブルを解決するには、借主がどのような責任を負うのかの正しい知識を身につけておきましょう。

    まず、不動産業者や物件オーナーが、国土交通省が示すガイドラインを遵守しているかどうかをチェックしておくことをおすすめします。誤った解釈による不適切な原状回復を求められたら、直ちに窓口を開設している機関への相談を検討してください。

  2. (2)引っ越し業者とのトラブルの解決方法

    引っ越し業者による荷物の破損や紛失に気づいたら、直ちに引っ越し業者側にクレームを伝えるべきです。時間がたったあとでは「引っ越し作業中のトラブルではない」と否定されてしまうおそれがあります。

    引っ越し業者側が責任を認めない、交渉に応じないといったケースでは、まずは消費生活センターで相談し、サポートを求めるのが最善策です。

  3. (3)入居後すぐに起きたトラブルの解決方法

    入居後すぐに発覚した設備などの不備は、写真撮影・記録を残したあと、直ちに不動産業者にその旨を伝えましょう。

    不動産業者に不備を確認してもらい、修繕できるものは修繕を、修繕できない箇所は「入居時から不備があった」ことを不動産業者側の記録に残させるのが大切です

    この対策が、退居する際のトラブル回避につながります。

4、引っ越しトラブルに遭ったときの相談先

引っ越しは人生のなかで何度か経験するものですが、頻繁に経験するものでもありません。引っ越しのたびにトラブルに遭遇するわけでもないので、個人の知識や経験だけで解決するのは困難です。

引っ越しトラブルに遭ったときは、適切な相談先でアドバイスやサポートを受けることをおすすめします。

  1. (1)消費生活センター・国民生活センター

    引っ越しは生活に密着したイベントなので、引っ越しに関するトラブルは全国に配置された消費生活センターや国が管理している国民生活センターへの相談が可能です。消費生活センターと国民生活センターはPIO-NETというシステムを通じて情報を共有しているので、どちらに相談しても同じようにアドバイスが得られます。

    「まずは電話で相談したい」という方は、消費者ホットライン188の利用もおすすめです。局番なしの「188」に電話をかけるだけで最寄りの消費生活センターへとつないでくれます。

    窓口で直接相談したい場合は、自治体別に設置されている消費生活センターを訪ねましょう。兵庫県には2つの県立消費生活センターと44の市町消費生活センターがあるので、最寄りの窓口を訪ねると便利です。

  2. (2)自治体の生活相談窓口

    自治体でも引っ越しに関するトラブルの相談が可能です。

    姫路市では市民相談センターを開設し、消費生活だけでなくさまざまなトラブルに関するアドバイスを提供しています。市のホームページからウェブでの問い合わせも可能なので、気軽に利用できるでしょう。

  3. (3)不動産適正取引推進機構

    不動産取引に関する紛争の未然防止や解決を目的とする一般社団法人「不動産適正取引推進機構」でも、引っ越しトラブルの相談を受け付けています

    また、同機構では、特定紛争処理事業として裁判外紛争解決手続(ADR)による調整・仲裁を行っています。ただし、同機構によるADRは消費生活センターなどからの要請を経たうえで利用可能で、当事者からの直接申請は受け付けていないので注意が必要です。

  4. (4)弁護士

    各種の相談先からアドバイスを受けたうえで「裁判などの法的手続きによる解決が必要」という回答に至った場合は、弁護士に相談してサポートを求めましょう

    弁護士にサポートを依頼すれば、当事者の代理人として不動産業者や引っ越し業者との交渉を進めることが可能です。被害金額が大きいにもかかわらず、相手が交渉に応じない、請求を譲らない、責任を認めないといった状況があれば、裁判所の手続きを利用した解決を目指します。

5、まとめ

引っ越しに関するトラブルの多くは金銭的な問題を伴い、その金額も決して安くはないケースが多いので、深刻化しやすい傾向があります。特に発生しやすい退居清算トラブルや引っ越し業者による破損・汚損・紛失、入居時の設備不良などでは、無知であったばかりに損をして泣き寝入りしてしまう方も少なくありません。

引っ越しトラブルに巻き込まれてしまった場合は、まずは各種の相談先でアドバイスをもらい、法的手続きによる解決が必要となったときは迷わず弁護士にサポートを求めるのが最善策です。引っ越しトラブルの解決は、さまざまな消費生活に関するトラブルを解決してきた実績をもつベリーベスト法律事務所 姫路オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています