身に覚えのない内容証明は無視してもいい? 対応方法を弁護士が解説
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内容証明郵便は、たとえば姫路市内から送付するのであれば、市内の郵便局窓口やインターネットで申し込みを行うことになります。郵便局で扱われているため、身近なサービスのように感じられるかもしれませんが、初めて内容証明郵便を受け取ったときは、多くの方が動揺するようです。なぜなら、「~を催告します」「法的手段をとります」など、一方的に通告されているような内容が記載されているケースが多いからと考えられます。
何かよくわからない書類が届いたからと、無視してはいませんか? あなたに内容証明郵便が届くということは、あなたに宛てて送付した方と何らかのトラブルが発生している可能性が高いと考えられます。そのトラブルを放置したままではトラブルのさらなる悪化すら招きかねません。これは相手方の単なる勘違いにより内容証明郵便が送付された場合であっても同様です。
そこで本コラムでは、内容証明郵便について基礎知識から、内容証明郵便を受け取ったときどうすべきかについて、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。
1、内容証明郵便とは
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(1)内容証明郵便とは?
「内容証明郵便」とは、送付者からの申し出により、送付される書面の内容を日本郵便が記録する郵便物のことです。ただし、普通郵便として届くことはほとんどありません。多くが、一般書留に配達証明を併用することにより配送されることになります。
内容証明郵便に配達証明を付けることにより、次の事実が客観的に証明されます。- いつ
- 誰が
- 誰に対して
- どのような内容の手紙を送付したか
これにより、内容証明郵便には、後日起こりがちな当事者同士による「言った・聞いていない」などのような水掛け論を防止する効果があります。
内容証明郵便が持つこのような性質から、内容証明郵便は法律が関係してくるトラブルにおいて、「催告書」や「通知書」などのタイトルを用いることにより送付者が自分の意思を強く表示する手段として多く用いられています。そのため、送付する人の代理人として弁護士などが作成しているケースは少なくありません。
なお、内容証明郵便は日本郵政によって謄本化(内容証明をコピーし、それぞれ1通を差出人および郵便局で保管すること)する方法が一般的です。この場合、内容証明郵便1ページあたりの字数と行数は日本郵便によって定められています。よって、内容証明郵便の本文は比較的大きな文字で書かれているため、視覚的にも受け取った郵便が内容証明郵便であることはわかりやすいといえます。 -
(2)内容証明郵便の効力とは?
誤解されやすいのですが、内容証明郵便はそれを送付することにより送付先に対して何らかの特別な法的拘束力が発生するというものではありません。
しかし、内容証明郵便を送付する場合には、以下の効果が期待できます。- 送付する人が相手に対して有する債権や債務について、時効の更新や、消滅時効を援用する効果
- 送付する相手に「自分は本気だ」というプレッシャーを与える効果
- 確定日付を得られるため、後日裁判などに発展した場合に、送付する人が特定の日に相手に対して何らかの催告をした事実を証明する効果
このようなことから、内容証明郵便は「ただの手紙」などといわれつつも、後日に裁判などが予想される法律トラブルにおいて送付する人から送付される人に対する「最終通告書」や「宣戦布告文」のような性質があるといわれています。
2、身に覚えのない内容証明郵便は無視してもいいのか?
内容証明郵便には、「○月○日までに○万円を○○銀行まで振り込み支払うよう催告します」「○月○日までに誠意ある回答を得られない場合には、法的手続きをとります」などと、期限付きで催告の内容が書かれていることがあります。
だからといって、内容証明郵便を送付された人が直ちに内容証明郵便に書かれていることを履行する義務が法律上発生することはありません。もちろん、受け取った内容証明郵便を無視したということを理由に法律上の罰則が発生することもないのです。
しかし、先述のとおり届いた内容証明郵便を無視することは、すでに生じているトラブル、あるいはさらなるトラブルに発展しかねない芽を放置しておくことと同じことになります。したがって、無視をすることはおすすめできません。
内容証明郵便を受け取ったら、まずこのような内容証明郵便がご自身に送付される理由があるかどうか、内容証明郵便に書かれていることは事実と相違ないか、冷静になって考えてみてください。そして、もし送付相手の勘違いなどによるものと考えられるのであれば、弁護士を交え送付した人と認識の相違について話し合うことをおすすめします。まったくご自身の身に覚えのない悪意のある内容証明郵便と判断できる場合であっても同様です。
なぜ当人同士で話し合わず、弁護士を交えたほうがよいのかといえば、送付した相手方に毅然とした対応を必要とするためです。相手が知り合いであっても、あなたの身に覚えがないことであっても、相手にとってはすでにトラブルが起きていると感じていると考えられます。その場合、直接当人同士で話し合うことによって新たなトラブルが起こってしまうケースがあります。したがって、冷静な観点で法トラブルに対応できる弁護士を交えて話し合いを行ったほうが、トラブル解決への近道となりえるでしょう。
3、内容証明郵便の受け取りを拒否するとどうなる?
送付された配達証明付きの内容証明郵便は、通常の郵送物と異なり郵便ポストに投函されるのではなく、日本郵便の局員から受領サインと引き換えに手渡しで受け取ることになります。
このとき、身に覚えがある・ないにかかわらず、郵便局員から内容証明を受け取ることを拒否しても、法的に何らの問題は生じません。ただし、内容証明郵便の受け取りを拒否した事実は、日本郵便により送付した相手に伝わります。したがって、後日裁判などに発展した場合、内容証明郵便の受け取りを拒否した事実が考慮される可能性があります。
また、あなたが内容証明郵便の受け取りを拒否することで、送付した人の態度を硬化させてしまうことも考えられるでしょう。その結果、もしかしたら当事者同士の話し合いで解決できたのかもしれないことが、裁判などの大ごとに発展しまう可能性もあるのです。
4、内容証明郵便が届いたら、何をするべき? やってはいけないこととは?
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(1)書面の内容をよく読む
内容証明郵便を受け取ったら、まずはしっかりと書かれている内容を読んでください。そして、送付した相手が何を主張しているのか、それは事実と整合性がとれているのか、そうでないのであれば何がご自身の認識と異なるポイントなのか、冷静になって確認してください。
内容証明郵便を送付した相手方と受け取ったご自身それぞれの認識の間に差異があるか否か、それが今後の対応を検討するうえでの重要なポイントになります。それを見極めるためには、送付された内容証明郵便の内容をしっかりと読むことが何よりも重要です。 -
(2)性急な行動は控える
内容証明郵便を受け取ると、気が動転してしまうかもしれません。しかし、内容証明郵便が届いたと驚くあまり、送付した相手方の要求に100%応じてしまわないよう気を付けてください。これは送付された内容証明郵便をよく読んでいない方も気を付けるべき点です。
先述のとおり、内容証明郵便が送られてきたからといっても、受け取った人に直ちにその要求内容を履行する法的義務が発生するわけではありません。内容証明郵便は相手からの要求事項が書かれているものですが、それは見方を変えると相手方との交渉のスタートラインであると考えることもできるのです。
相手方からの要求事項にまったく合理性がないこともあり得ますし、たとえば期限の延長や請求金額の減額などを交渉する余地が残っていることもあります。多くの内容証明郵便の場合、回答や対応に関する期限が設けられているはずです。その期限までに送付した人が何らかのアクションをとることはあまり考えられません。
記載されている期限までは余裕があります。送付された内容証明郵便に対してどのような対応をするのか、くれぐれも慎重に検討してください。 -
(3)弁護士に相談する
あなたに内容証明郵便が届いたという事実は、何らかの法的トラブルの芽があなたに存在している可能性があることを意味しているといっても過言ではありません。したがって、今後の状況が悪化することを防ぐためには、内容証明郵便を受け取った時点から適切な対応方針を考えておくことが重要です。
法律が関係するトラブルであれば、弁護士に依頼することにより、あなたの実情と内容証明郵便に書かれている内容について分析することができます。そのうえで、今後あなたがとるべき対応について適切なアドバイスを得ることが期待できるでしょう。
また、弁護士はあなたの代理人として、届いた内容証明郵便の内容に反論するための書面作成や送付した相手方との交渉を行うことができます。さらに、仮に事態が裁判や調停などに発展した場合であっても、あなたの代理人としてさまざまな書類の作成やあなたの代理人として裁判所に出頭するなど、あなたの利益の最大化を目指し弁護活動を行います。
決しておひとりで悩むことはせず、ぜひ弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
内容証明郵便が届いたら、無視をせず、まずは内容をしっかり確認してください。法律トラブルは、早めの対処が何よりも重要です。病気にかかったときに早めの医療機関受診が病気の悪化を防ぐように、法律トラブルも早めに弁護士のような専門家に相談することがのちのちのトラブルの悪化を防ぐことにつながるのです。
早期にトラブルを収束させるために、決しておひとりで悩んだり届いた内容証明郵便を無視したりすることはせず、早めに弁護士に相談して今後の対応を検討してください。ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスでは、内容証明郵便が届いた方への法律相談や代理人業務を承っております。ぜひお気軽にご相談ください。あなたのために、ベストを尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています