離婚時夫婦で買った墓はどう処分すべき? 熟年離婚で気にするべきこととは
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姫路市が公表している統計資料によると、令和2年の姫路市内での離婚件数は1338件でした。離婚時の夫婦の年齢は公表されていませんが、熟年離婚を選択した夫婦も一定数いるものと思われます。
婚姻期間が長い夫婦だと死後のことを考えて、早めにお墓の購入を検討している夫婦もいるかもしれません。夫婦関係が円満であれば特に問題はありませんが、何らかの事情で熟年離婚をすることになった場合には、購入したお墓の扱いに困ることもあるでしょう。離婚をした場合には、夫婦で購入したお墓はどのように扱われるのでしょうか。
今回は、熟年離婚とお墓の問題や熟年離婚をする場合に考えておくべき問題について、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。
1、夫婦で買った墓は、離婚時どうなるのか
離婚をした場合には、お墓はどのように扱われるのでしょうか。以下では、離婚とお墓の問題について説明します。
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(1)先祖から引き継いだお墓は財産分与の対象外
財産分与は、婚姻期間中に夫婦が築いた財産を分け合い、清算する制度です。
財産分与の対象となる財産は、夫婦の協力関係に基づいて維持・形成した「共有財産」に限られます。これに対して、夫婦の協力関係に基づかずに取得した財産を「特有財産」といい、特有財産は、財産分与の対象外となります。
したがって、夫婦のどちらか一方、または双方が先祖からお墓を引き継いだとした場合、夫婦の協力関係とは無関係に取得した財産、すなわち「特有財産」にあたり、財産分与の対象外となります。このようなケースでは、離婚をしたとしても、お墓を分けることはありません。 -
(2)婚姻中に夫婦で購入したお墓はどうなるの?
「お墓を購入する」というと、一般的な不動産と同様、墓地の所有権を取得するものと考える方も少なくありません。しかし、墓地の購入は、霊園やお寺などの管理者から墓地の永代使用権を購入しているに過ぎません。
そのため、お墓を購入したとしても、墓地の所有権を取得したのではなく、あくまでも使用権を取得しただけということになります。このような永代使用権については、一般的に譲渡が禁止されていますので、夫婦の財産分与によって分与することはできません。
また、相続が発生した場合には、お墓は相続財産とは区別された「祭祀財産」としての扱いになるため、夫婦の財産に含めて財産分与の対象にするのはふさわしくないとも考えられます。
そのため、婚姻中に夫婦で購入したお墓についても、財産分与の対象外といえます。ただし、夫婦の話し合いによって、お墓を引き継ぐ側が手放す側に対して、購入費用の一部を財産分与として支払うことは可能です。
2、熟年離婚で考えるべき、墓以外のお金の問題
熟年離婚をお考えの方は、お墓以外にも以下のようなお金の問題を検討する必要があります。
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(1)退職金
すでに会社を定年退職している場合には、退職金が支払われていますので、手元に残っている退職金については当然財産分与の対象になります。
定年退職前であっても、定年退職が近ければ、将来退職金が支払われる見込みが高いといえますので、将来配偶者に支払われる退職金についても財産分与の対象に含めることができます。
婚姻期間が長い夫婦の場合には、財産分与の対象に含まれる退職金も高額になる傾向にありますので、離婚時にはしっかりと権利を主張して財産分与を求めていくことが大切です。
ただし、財産分与の対象となる退職金の金額は、別居時または離婚時に退職した場合の金額となることが多いです。定年退職の際の退職金をそのまま請求できる訳ではないので、その点は注意が必要です。 -
(2)年金分割
年金分割とは、婚姻期間中の夫婦の保険料納付額に対応する厚生年金記録を分割し、自分の年金にすることができる制度です。
熟年離婚を検討している女性の多くが離婚後の金銭面に不安を抱えています。専業主婦が離婚をした場合には、老後にもらうことができるのはわずかな国民年金(老齢基礎年金)だけですので、厚生年金(老齢厚生年金)をもらうことができる夫との間で不公平な結果となってしまいます。
そこで、離婚後に年金分割を請求することによって、婚姻期間中に支払った保険料は、夫婦が共同で支払ったものとみなして将来の年金額を計算することが可能になります。
年金分割は、離婚した日の翌日から2年を経過すると請求することができなくなってしまいますので、離婚後は早めに手続きを行うようにしましょう。
3、熟年離婚で考えるべき、住まいの問題
熟年離婚をする場合には、離婚後の住まいの問題もしっかりと考えておかなければなりません。
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(1)離婚後の住居
離婚時の財産分与で自宅を受け取ることができればよいですが、そうでない場合には、新たに家を借りて生活をしていかなければなりません。
離婚時に正社員で仕事をしていれば、十分な収入もあり、賃貸住宅の審査にも問題なく通るはずですが、熟年離婚の場合には、すでに仕事を退職している、非正規雇用であるなどの理由から審査に通らない可能性もあります。
このような場合には、公営住宅も選択肢のひとつに入れる必要があります。また、単身の高齢者が安心して生活することができる「サービス付き高齢者向け住宅」も増えてきていますので、ご自身の状況に応じて検討してみるとよいでしょう。 -
(2)住宅ローンと財産分与の関係
婚姻期間中に購入した自宅については、基本的には財産分与の対象である共有財産に含まれますので、離婚時には、自宅をどちらが取得するのかを考えていかなければなりません。
住宅ローンをすでに支払い終えている場合には、自宅をどちらが取得するのかだけを考えればよいですが、住宅ローンが残っている場合には住宅ローンについても別途検討が必要になります。
熟年離婚の場合には、自宅の評価額が住宅ローンの残額を上回るアンダーローンの可能性が高いでしょう。その場合、選択肢としては、以下の3つが考えられます。① 不動産を売却して売却費用から住宅ローンを控除した金額を分ける方法
アンダーローンの場合には、自宅を売却したとしてもローンが残ることはありませんので、自宅を売却して、売却代金を分けるという方法をとることができます。離婚して一人で生活するには広すぎるという場合には、売却も検討するとよいでしょう。
② 自宅およびローンの名義はそのままで、名義人がそのまま住み続ける方法
自宅およびローンの名義はそのままにし、名義人がそのまま住み続けるという場合には、自宅の評価額から住宅ローンの残額を控除した金額の2分の1を財産分与として相手に支払う必要があります。
たとえば、自宅の評価額が3000万円で住宅ローンの残額が1000万円であった場合には、2000万円が財産分与の対象となりますので、その2分の1である1000万円を相手に支払わなければなりません。
③ 自宅およびローンの名義を変更して、名義人が自宅を出ていく方法
自宅およびローンの名義人が家を出ていくという場合には、自宅の名義および住宅ローンの名義を変更する必要がありますが、熟年離婚の場合には、住宅ローンの名義変更で苦労をすることがあります。
住宅ローンの名義変更は、夫婦の合意だけではなく、必ず金融機関の同意が必要になります。熟年夫婦だと年金以外に収入がないというケースも少なくありませんので、そのような場合には、住宅ローンの審査に通らない可能性があります。
住宅ローンの審査を通すためには親族に連帯保証人になってもらうなど、何らかの手段を考える必要があります。
4、熟年離婚の問題は弁護士に相談がおすすめ
熟年離婚の問題は、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)熟年離婚で生じ得る問題についてアドバイスがもらえる
熟年離婚をする場合には、婚姻期間の短い夫婦に比べてさまざまな問題が生じる可能性があります。熟年離婚に関する知識がないまま離婚をしてしまうと、離婚後に思わぬ不利益を被ってしまう可能性もあります。
離婚をする場合には、事前にしっかりと準備をしたうえで手続きを進めていくことが大切です。そのためには、離婚問題の実績がある弁護士に相談をして、ご自身の状況に応じたアドバイスを受けながら進めていくようにしましょう。 -
(2)適切な条件で離婚できるようサポートしてもらえる
離婚をする場合には、離婚をするかどうかだけではなく、慰謝料、財産分与、年金分割などの離婚条件を決めていかなければなりません。熟年離婚をする夫婦の場合には、共有財産の総額も高額になる傾向にありますので、離婚後の生活の不安を少しでも解消するためにも有利な条件で離婚をすることが大切です。
弁護士であれば、退職金、住宅ローンなど複雑な財産分与であっても法的観点から適切な離婚条件を導くことが可能です。離婚後に後悔することがないようにするためには、離婚トラブルの解決実績のある弁護士のサポートが不可欠といえるでしょう。
5、まとめ
熟年夫婦が離婚をする場合には、婚姻時に購入したお墓の他にも退職金、年金、自宅をどうするのかなどさまざまな問題が生じます。これらを適切に処理していくためには法的知識が不可欠となりますので、不利な条件で離婚をしてしまう前に弁護士に相談することをおすすめします。
離婚に関してお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています