財産分与をやり直しはできる? やり直しができるケースと注意点
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姫路市が公表している統計資料によると、令和3年の姫路市内の離婚件数は、1329件でした。前年よりも9件減少していますが、ほぼ同水準といえます。
離婚をすることになった場合には、夫婦の財産は、財産分与によって分けることになります。離婚時にしっかりと財産分与の取り決めをしても、後になって、相手が財産を隠していたことが判明するケースもあります。このような場合、財産分与をやり直すことができるのでしょうか。
今回は、財産分与のやり直しができるケースと注意点について、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。
1、財産分与のやり直しはできるのか?
一度取り決めをした財産分与を後日やり直すことはできるのでしょうか。
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(1)財産分与のやり直しは原則としてできない
離婚をする際に財産分与の取り決めをした場合、後日、「内容が気に入らない」と思っても、原則として財産分与をやり直すことはできません。
財産分与は契約の一種ですので、一度当事者双方が合意して成立させた以上、契約による拘束力が生じます。そのため、一方的な理由で契約を破棄することはできないのです。
したがって、財産分与を行う際には、原則としてやり直しができないということを前提に、慎重に進めていくことが重要です。 -
(2)例外的に財産分与のやり直しができるケースとは?
財産分与は原則としてやり直しをすることができませんが、以下のようなケースについては、例外的にやり直しが認められる可能性があります。
① 当事者の合意がある場合
財産分与も契約の一種ですので、当事者双方が合意をしているのであれば、当初の財産分与契約を合意解除して、財産分与のやり直しをすることができます。
もっとも、財産分与のやり直しによって、相手が不利になるおそれがあるようなケースでは、相手の同意を得ることは難しいといえます。
② 新たな財産が発見された場合
財産分与後に、当事者が知らなかった新たな財産が発見されたという場合には、新たな財産を対象にして財産分与を行うことができる場合があります。
ただし、当初の財産分与において、「本合意書に記載されているものを除き、何らの債権債務がないことを確認する」といった清算条項が設けられている場合には、新たな財産を対象にした財産分与を行うことは原則としてできません。
この場合には、新たに発見された財産については、当該財産の名義人がそのまま取得することになります。
③ 相手が財産を隠していた場合
財産隠しをされると財産分与の前提となる財産の内容に誤解が生じ、誤った認識によって財産分与に応じてしまうことがあります。
どのような財産が財産分与の対象になるのかは、財産分与において重要なものであるといえますので、相手の財産隠しによって財産分与の基礎となる財産の内容に誤解が生じてしまった場合には、錯誤を理由として、財産分与を取り消すことが可能です(民法95条1項)。
財産分与の取り消し後は、隠されていた財産を含めて、財産分与のやり直しを行うことになります。
④ 相手から脅されて財産分与に応じた場合
財産分与の内容に納得していなかったけれども、相手から脅されて財産分与に応じてしまったという場合には、強迫を理由として財産分与を取り消すことができます(民法96条1項)。
2、相手の財産を確認するには
財産分与のやり直しは原則としてできませんので、財産分与をする際には、相手の財産を十分に確認することが大切です。
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(1)相手に財産の開示を求める
夫婦であっても相手の財産をすべて把握しているわけではありません。そのため、まずは相手に対して、すべての財産を開示するように求めていきましょう。
もっとも、相手によっては、財産分与で渡す財産を少なくするために、財産の一部を隠してしまうことがありますので注意が必要です。
相手の財産隠しを防ぐためには、普段から相手がどのような財産を持っているのかに注意を払うことが大切です。たとえば、郵便物や口座の出入金の記録などからもある程度の財産を把握することができます。 -
(2)弁護士に依頼して弁護士会照会を利用する
相手が任意に財産を開示しない場合には、弁護士会照会を利用することで財産を明らかにすることができる場合があります。弁護士会照会とは、弁護士だけが利用することができる特別な照会方法であり、弁護士会が官公庁や企業などの団体に対して、必要な事項を照会・調査する制度のことをいいます。
ただし、弁護士会照会を利用するためには、弁護士に離婚や財産分与といった具体的な事件を依頼することが必要になります。弁護士会照会だけの依頼はできませんので注意が必要です。 -
(3)裁判所の調査嘱託を利用する
手続きが調停や裁判にまで発展しているという場合には、家庭裁判所の調査嘱託という制度も利用することができます。調査嘱託は、裁判所が官公庁や企業などの団体に対して調査を嘱託し、必要な事項の回答を求めることができる制度です。
弁護士会照会では回答を拒否している団体でも、裁判所からの調査嘱託であれば応じることもありますので、財産隠しを明らかにするための有効な手段といえるでしょう。
3、財産分与を請求する時に注意するべきこと
財産分与を請求する際には、以下の点に注意が必要です。
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(1)財産分与の請求には除斥期間がある
財産分与請求権には、除斥期間という期間制限があります。除斥期間とは、一定期間の経過によって当然に権利が消滅する制度です。
除斥期間と似た制度に、消滅時効というものがありますが、除斥期間は、消滅時効のように時効援用の意思表示を必要とせず当然に権利が消滅するという点、消滅時効のように時効の更新・完成猶予により期間の進行をストップしたり、リセットしたりすることができないという点で異なっています。
財産分与の除斥期間は、離婚から2年とされています。そのため財産分与のやり直しをするには、離婚から2年以内に行わなければなりません。ただし、相手が財産分与のやり直しに合意してくれるのであれば、除斥期間を過ぎた後であっても財産分与のやり直しをすることができます。 -
(2)除斥期間経過後に財産隠しが判明した場合は損害賠償請求で対応する
除斥期間経過前であれば、錯誤を理由に財産分与を取り消して、財産分与のやり直しをすることが可能です。しかし、除斥期間を経過してしまうと、やり直すことができません。
このような場合には、相手が財産隠しをしていたことを不法行為として捉えて、本来得られるはずであった金額を損害として請求していくことが考えられます。もっとも、不法行為として請求する場合でも、財産隠しに気付いてから3年で時効になりますので、早めに対応する必要があります。
4、財産分与で後悔しないために弁護士に相談を
財産分与で後悔しないようにするためにも、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)相手が隠している財産を明らかにすることができる
財産分与を行う場合には、お互いが持っている財産をすべて開示することが必要不可欠となります。しかし、離婚相手の隠した財産を明らかにすることは容易ではありません。
弁護士であれば、弁護士会照会という制度を利用することによって、相手が財産を隠していたとしても、それを明らかにすることができます。また、弁護士は、どのような機関・団体に照会をすれば、どのような情報が得られるのかを熟知していますので、スムーズに相手の財産を明らかにすることができます。
相手が財産を隠している疑いがある場合には、まずは弁護士にご相談ください。 -
(2)財産分与のやり直しが可能か判断してもらえる
財産分与の取り決めをしてしまった場合は、原則として、やり直しはできません。
財産分与のやり直しをすることができるのは、例外的なケースに限られていますので、財産分与のやり直しができるかどうかを判断するためには、法的な専門知識が必要となります。
弁護士であれば、財産分与の経緯などから財産分与のやり直しが可能なケースであるかどうかを適切に判断することが可能です。 -
(3)有利な内容で財産分与を行うことができる可能性が高くなる
財産分与の割合は、原則として2分の1とされていますが、財産形成・維持に関する夫婦の貢献度に差があるといえる例外的な場合には、この割合を修正することができる可能性もあります。
また、財産分与に不動産などが含まれている場合には、それをどのように評価するかによって、財産分与で得られる金額も大きく変わってきます。
このように財産分与は、専門家である弁護士が関与して、適切な主張立証をしていくことによって、より有利な内容の財産分与にすることができる可能性が高くなります。少しでも多くの財産をもらいたいという場合には、弁護士に相談をするとよいでしょう。
5、まとめ
財産分与をした後は、原則としてやり直しをすることができません。
しかし、相手によって財産隠しが行われていたようなケースでは、例外的に財産分与のやり直しをすることができる可能性があります。財産分与のやり直しをする場合には、除斥期間である離婚後2年以内に行う必要がありますので、相手の財産隠しに気付いた場合には早めに弁護士に相談をするようにしましょう。
離婚や財産分与の問題でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています