財産分与の請求は2年経過後でも認められる? 時効と例外ケース
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姫路市が公表している「姫路市統計要覧」によると、令和3年の姫路市内の離婚件数は1329件でした。前年の離婚件数が1338件であったことからすると、ほぼ同水準の離婚件数で推移していることがわかります。
財産分与は、離婚後でも請求することができますが、2年以内という期限があることをご存じでしょうか。財産分与の請求期限は、非常に短いため、離婚後の新生活で忙しいとあっという間に期限を経過してしまうおそれがあります。
財産分与の請求期限を過ぎてしまった場合には、原則として財産分与を請求することができなくなりますが、例外的に財産分与を請求することができるケースも存在します。
今回は、財産分与の請求期限と2年経過後でも財産分与が認められるケースについて、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。
1、財産分与を請求する期限
財産分与には、原則として期限が定められています。そのため、期限内に財産分与の請求をしなければなりません。以下では、財産分与の請求期限について説明します。
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(1)財産分与は離婚後2年以内に請求しなければならない
財産分与は、離婚をするときに一緒に請求するのが一般的ですが、離婚後に財産分与だけを請求することも可能です。
しかし、離婚後に財産分与を請求する場合には「離婚が成立した日から2年以内」という、期限があります。離婚後の財産分与の取り決めをしようとお考えの方は、期限内に忘れずに財産分与の請求をするようにしましょう。
なお、離婚時に財産分与の取り決めをしていれば、取り決め内容に基づいて財産の引渡しを請求するのが離婚成立から2年経過したときであったとしても問題はありません。 -
(2)財産分与の期限の性質は「除斥期間」
財産分与の請求期限は、法律上「除斥期間」という性質の期間になります。除斥期間とは、期間の経過により、当然に権利が失われる期間のことをいいます。
法律上の期間には、除斥期間以外にも「時効」がありますが、時効の場合には、完成猶予や更新といった期間の進行をストップしたり、リセットしたりすることが可能です。しかし、除斥期間の場合には、時完成猶予や更新はありませんので、必ず、2年以内に請求しなければなりません。
なお、財産分与の請求期限が間近に迫っているという場合には、早めに家庭裁判所に財産分与請求調停を申し立てるようにしましょう。離婚が成立した日から2年以内に調停の申し立てをすれば、調停期間中に2年を経過してしまったとしても、調停で財産分与の取り決めをすることができます。
2、2年経過後も認められうるケース
財産分与請求権の期限である2年を経過してしまうと、原則としてそれ以降は財産分与を請求することはできません。しかし、例外として財産分与を請求することができるケースがあります。
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(1)合意による財産分与をする場合
財産分与の請求期限である2年経過後であっても、当事者双方が財産分与をすることに合意をしているのであれば、財産分与をすることが可能です。
民法768条2項では、財産分与の期限を定めていますが、これは、「家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求する」場合の期限です。すなわち、当事者同士の合意の上、財産分与をする場合には、2年経過後であっても法律上制限されることはないのです。
ただし、財産分与の請求期限が経過後だと、財産分与を請求された側としては財産分与に応じるメリットがありませんので、よほどの事情がない限りは、財産分与に応じてもらうのは難しいといえます。 -
(2)財産隠しがあった場合
離婚時に財産分与を請求したものの、相手方による財産隠しによって少額の財産しか分与を受けることができなかったという場合や、相手方から財産分与をするような財産はないと言われていたため、財産分与をすることなく期限が経過してしまったという場合はどうなるのでしょうか。
財産分与の請求期限の性質は、除斥期間ですので財産分与の請求期限である2年経過後は、たとえ上記のような事情があったとしても、財産分与を求めることはできません。
しかし、相手方は財産を隠すことによって、財産分与を請求する正当な権利の実現を不当に妨げたことになります。財産分与の請求者は、本来得られるはずであった財産を得ることができないという損害が生じていますので、不法行為に基づいて損害賠償請求をすることが可能です(民法709条)。
ただし、不法行為に基づく損害賠償請求をするためには、請求者の側で相手方が財産隠しをしたということを証拠に基づいて立証していく必要があります。
3、離婚時には財産分与以外にも決めるべきものがある
離婚時には、財産分与以外にも以下の項目について取り決めをする必要があります。
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(1)親権
夫婦に子どもがいる場合には、父または母のどちらか一方を親権者として定めなければなりません。親権者をどちらにするかは、夫婦の話し合いによって決めることになりますが、話し合いでは決まらない場合には、離婚調停または離婚訴訟によって決める必要があります。
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(2)養育費
親権を獲得して、子どもを監護する側の親は、非監護親に対して養育費を請求することができます。養育費の金額をいくらにするかについては、法律上の決まりはありませんので、当事者が自由に定めることができます。
その際には、裁判所がホームページで公表している「養育費算定表」を利用すれば、簡単に養育費の相場を知ることができますので、養育費の取り決めにあたって役に立つでしょう。 -
(3)婚姻費用
離婚が成立するまでは、夫婦はお互いに扶助・協力して生活をする義務があります。そのため、別居をすることになった場合には、収入の少ない方が多い方に対して、婚姻費用という別居中の生活費を請求することができます。
婚姻費用は、別居後から離婚成立までの期間支払われるものですが、経済的に不安定な状況では落ち着いて離婚の話し合いを進めることができませんので、忘れずに請求するようにしましょう。 -
(4)慰謝料
婚姻関係が破綻する原因を作った配偶者に対しては、慰謝料請求をすることができます。たとえば、不貞行為をしていた場合やDVがあったような場合が、慰謝料請求をできる代表的なケースです。
ただし、相手が不貞やDVを認めていない場合には、慰謝料請求をする側が証拠によってそれらの事実を証明しなければなりません。そのため、しっかりと証拠を集めてから慰謝料請求を行うようにしましょう。 -
(5)面会交流
親権を獲得することができなかった非監護親は、離婚後、子どもと離れて生活をすることになりますが、面会交流を行うことによって、定期的に子どもと会うことが可能になります。
面会交流は、離婚後トラブルになりやすい事項ですので、面会交流の取り決めをする場合には、面会交流の頻度、時間、場所、方法などできる限り具体的に定めておくことが大切です。
4、離婚は弁護士へ相談を
離婚についてお悩みの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)面倒な交渉をすべて任せることができる
離婚をする際にネックになるのが相手との話し合いです。離婚寸前の夫婦であれば離婚条件についてじっくりと話し合いをすること自体、困難なケースも少なくありません。
当事者同士で話し合いをするとどうしても感情的になってしまいますので、そのこともスムーズな話し合いを阻害する要因といえます。
弁護士に離婚の手続きを依頼すれば、相手との交渉や連絡などをすべて弁護士に任せることが可能です。離婚に伴う精神的な負担を少しでも軽減するためにも、面倒な交渉は弁護士に任せることをおすすめします。 -
(2)財産分与の期限が迫っているときでも迅速な対応が可能
財産分与の請求期限が迫っている場合には、財産分与請求調停を申し立てることによって、権利が失われるのを防ぐことができますが、調停の申し立てに慣れていない方では、申し立て方法がわからずに期限が経過してしまうおそれがあります。
弁護士であれば調停や裁判手続きを熟知していますので、財産分与の期限が迫っているような事案であっても迅速な申し立てによって権利の消滅を防ぐことが可能です。弁護士が調停期日に同行しますので、初めての調停という方でも安心して期日に臨むことができます。 -
(3)財産分与では財産調査と評価が重要
夫婦であっても相手の財産をすべて把握しているというわけではありませんので、財産分与をする前提としてすべての財産を開示する必要があります。
しかし、財産の開示を求めたとしても、素直に応じてくれるとは限らず、知られていないことをいいことに財産を隠そうとする方も少なからず存在します。
このような場合には、弁護士であれば弁護士会照会という特別な照会方法によって財産の存在を明らかにすることができますし、調停や裁判になれば調査嘱託、文書送付嘱託等という方法を利用することもできます。
また、財産分与の対象財産に不動産が含まれる場合には、複数の評価方法が考えられますので、どの評価方法を採用するかによって最終的にもらうことができる金額にも大きな影響を及ぼします。
このように財産分与をする際には、対象となる財産を確定するための財産調査とその評価が財産分与の金額を左右するほど重要な要素となります。離婚後に不安のない生活を送るためにも弁護士のサポートを受けながらしっかりと財産分与を請求することが大切です。
5、まとめ
財産分与請求は離婚後2年以内という期限がありますので、離婚後に財産分与を請求しようと考えている方は、忘れずに請求するようにしましょう。2年経過後でも財産分与を請求することができる場合もありますが、あくまでも例外的なケースですので、2年以内の請求が基本となります。
離婚時には、財産分与以外にも取り決めなければならない項目がたくさんありますので、一人では不安だという場合には、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています