不倫したら裁判を起こされる? 訴訟の流れと適切な対応方法
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既婚者と交際していた結果、交際相手の配偶者から慰謝料請求をされてしまうことがあります。結果的に調停や裁判となる可能性についても、否定はできません。
しかし、結果的に不貞行為をしていたことが事実であっても慰謝料を払わなくてよいケースや、支払うにしても慰謝料額を抑えられる可能性があります。本コラムでは、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が、不倫と裁判について解説します。
1、不倫は法律上どのような罪になる?
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(1)不倫は犯罪ではない
不倫とは、配偶者以外の者と交際することを指す一般的な用語にあたります。法律上においては、配偶者以外の者と性行為を伴う交際をした場合、「不貞行為」と呼ばれ、不法行為と判断されるケースが一般的です。
ただし、不法行為イコール犯罪行為ではありません。かつて日本では、妻が不貞行為をした場合、犯罪(姦通罪)として規定されていました(男性(夫)の不貞行為は罪に問われない)。今となってはまったく不公平であるため、戦後、男女平等の観点から、刑法上から姦通罪の規定そのものが廃止されました。
したがって、不貞行為は刑法上の犯罪ではありません。不貞行為をした相手について、警察に被害届を出したり告訴したりすることはできません。 -
(2)不貞行為の民事上の責任
ただし、故意または過失によってされた不貞行為は、前述の通り民法上は不法行為とされています。不貞行為が不法行為とされる理由としては、配偶者が持つ権利を損害する行為にあたるためです(民法第709条)。
不法行為に該当する行為をした方は、原則として、損害賠償の責任を負います。この損害賠償責任とは、不倫相手の配偶者に対して、慰謝料の支払いをすることを指します。 -
(3)賠償責任を負うことになる2つの条件
ただし、不貞行為をすれば必ず賠償責任を負う、というわけではありません。損害賠償責任を負うのは、以下の2条件を満たす場合に限られます。
①故意または過失
不貞行為で損害賠償責任を負うのは、不貞行為の時点で、不貞相手が結婚していることを知っていた場合です。つまり、相手が既婚者であることを知らなければ、損害賠償を支払う必要はありません。
ただし、簡単に知ることができた場合は、過失によるものと判断されます。したがって、賠償責任を負う可能性があるでしょう。
②婚姻関係が破たんしていないこと
相手が既婚だと知ったうえで不貞行為をしても、賠償責任を負わない場合があります。それは、すでに相手の婚姻関係が破たんしていたというケースです。
そもそも、不法行為が成立するのは、「他人の権利または法律上保護される利益を侵害した」場合に限られます。そして、不貞行為によって侵害される利益とは、夫婦の平穏な婚姻生活です。
したがって、不貞行為があった段階で、夫婦の間に平穏な婚姻生活の実態がなければ、侵害の対象となる利益が存在しなかったといえます。そのため、たとえ既婚者であると知ったうえで不貞行為をしていたとしても、その配偶者に対して損害賠償責任を負うことはありません。実際に、不貞の慰謝料請求の裁判では、夫婦関係が破たんしていたかどうかという点がしばしば争点になります。
ただし、婚姻関係の破たんと認められるためには、単に夫婦が不仲であったというだけでは足りません。不貞相手から、結婚生活はうまくいっていない、もうすぐ離婚するなどと聞かされて、つい不倫してしまったというケースもあるでしょう。このような場合でも、夫婦が同居していれば、婚姻関係の破たんと認められる可能性は低いといえます。
一般的に、不貞をする既婚者の多くは不貞相手にはウソをついていることが多いものです。また、実際に仲が悪かったとしても、同居していれば一応の夫婦生活ができていると評価されるでしょう。 -
(4)どこからが不貞行為か
前述の通り、性行為を伴う交際があると不貞行為があったと判断されるケースが一般的です。
ただし、たとえ肉体関係がなくとも、あまりにも度を越して関係を深めた場合は、夫婦生活を脅かす不適切な行為として賠償責任を問われる可能性があります。
2、不倫がバレたあと、待ち受ける展開とは?
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(1)相手からの連絡
不倫がバレたとしても、すぐに裁判になることはほとんどありません。まずは相手から何らかの方法で連絡が来るケースが多いでしょう。連絡手段は、電話やメールの場合もあれば、突然、自宅に内容証明郵便が届く場合もあります。
連絡の窓口としては、本人が直接請求してくる場合と、弁護士を代理人として連絡してくる場合があります。 -
(2)慰謝料請求
相手から不倫の件で連絡が来た場合、相手の要求の多くは、不貞行為をやめるように求めるものと、慰謝料を請求するもののいずれかでしょう。ただし、この両方を同時に求められる場合もあります。
慰謝料の請求額はさまざまですが、最初の段階では比較的高額な慰謝料を求められることは少なくありません。この時点から、相手との交渉を始めることになります。
もちろん、不貞行為をしていなければその点を主張します。不貞行為があった場合でも、適切な金額を目指して交渉することになるでしょう。また、金額だけでなく支払い方法についても話し合うことになります。
相手は一括払いを求めることが多いものですが、経済状況によっては一括払いが難しいときもあります。その場合は、分割払いを求めて交渉します。お互いが納得いく条件で合意ができれば、示談が成立します。
示談の内容は書面にして、双方が署名押印したうえで保管しておくようにしましょう。あとから再び揉めることのないように、弁護士などに相談し、適切な書面を作成することをおすすめします。 -
(3)裁判で訴えられる
交渉をしても、金額や支払い条件で相手と折り合うことができず、示談が成立しないことがあります。
このように話し合いが決裂すると、相手から裁判を起こされることがあります。配偶者がいる方が行う離婚に向けた話し合いが決裂した場合、裁判の前に必ず調停を行わなければなりません。しかし、不倫相手の配偶者があなたに対して慰謝料を請求する場合は、調停を経ることなくすぐに裁判を起こすことができます。
不貞行為を原因として裁判になると、被告として訴えられるわけですから、精神的な負担は避けられません。できれば訴訟を避けたいという方も多いでしょう。不貞で裁判沙汰を避けたいとお考えの方は、「4、不倫で裁判にならないためにできること」を参考にしてください。
3、不倫の裁判の流れ
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(1)訴訟の提起と呼び出し
不倫慰謝料の裁判は、原告(請求する側)が、裁判所に訴状を提出することから始まります。裁判所に訴状を提出することを、訴訟の提起といいます。
裁判所は訴状を受理すると、被告(不貞をした側)の自宅に訴状を郵送します。裁判所から訴状が郵送されることを「送達」といいます。送達場所は被告の住所地が原則とされており、たとえ被告に弁護士がついていても、原則として被告の住所に送達されてしまいます。
家族に秘密にしている場合は、訴状の送達で家族に不審に思われる可能性があるので注意しましょう。なお、代理人弁護士をつけた場合、「訴状」を除く書面は、すべて自宅ではなく、弁護士宛てに送付してもらうことができます。ご家族に知られたくない方が弁護士に依頼するケースは少なくありません。
なお、訴状と同時に、1回目の裁判日程への呼び出しも行われます。裁判が行われる日時のことを「期日」といいます。1回目の期日は、被告の予定と関係なく、原告と裁判所の都合だけですでに決められています。そのため、1回目の期日だけは、答弁書を提出すれば欠席しても不利になりません。
次回以降は、原告と被告の双方が出頭できる日時を調整して決めることになります。なお、裁判期日は、平日の日中と決まっています。 -
(2)主張と立証
裁判では、原告・被告の双方が期日に出席し、それぞれの主張や反論を述べていきます。
弁護士に依頼した場合は、出廷や主張立証の手続きをすべて弁護士が対応します。ご本人は、尋問手続きが行われる場合を除き、裁判所に出向く必要は原則としてありません。
期日はおおむね1か月から2か月程度の間隔で行われます。双方の主張と立証が出尽くすまでは、期日が繰り返されていきます。短くても半年程度、長ければ1年以上かかるケースもあります。 -
(3)判決または和解
日本の裁判では、「判決」まで徹底的に争われることは少なく、裁判の途中で「和解」が成立して終了するというケースが多いのが実情です。
そして、不倫慰謝料訴訟の実務では、さらにその傾向が強く、大半が和解で終結を迎えます。和解とは、裁判所からのこの金額でどうですか、という提案が双方に行われ、この提案をベースとして双方がある程度譲歩し、相当なラインで妥結することを指します。
裁判所からの和解案に対して、どちらかが納得しなければ、「和解」は成立しません。その場合、裁判は「判決」で終了することになります。
4、不倫で裁判にならないためにできること
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(1)適正な金額を計算する
不貞の慰謝料にはある程度相場があります。婚姻期間の長さ、不貞期間の長さ、そして、不貞に至った経緯などが金額に影響するのです。
自分の場合にはどの程度が適切な慰謝料金額なのか、わからないままに話を進めるとあとから悔やむことになる可能性があります。まずは、自分のケースにおける妥当な慰謝料金額について弁護士などに相談して計算することが重要です。 -
(2)相手の持っている証拠を確認する
訴訟になった場合、もっとも重要なものは証拠です。そして、慰謝料請求をする側は、配偶者が不倫をしていることに気づいた時点で相手に請求の連絡をする前に、しっかりと証拠を取っておいたというケースは少なくありません。
不貞の証拠としては、ラインやメールなどのやりとりや、不貞現場の写真、ラブホテルなどに入る場面の写真、ホテルや旅行の領収書などが考えられます。不貞調査のために探偵を雇う人も少なくないでしょう。
相手から連絡が来たら、相手がどの程度の証拠を持っているのかを確認し、裁判になった場合のリスクを見通すことも大事です。 -
(3)裁判になる前に示談する
相手が決定的な証拠を持っている場合や、訴訟沙汰にしたくない場合は、できるだけ訴訟になる前に示談を成立させるように交渉しましょう。
そして、示談ができた場合はその内容をしっかりとした書面に残して、あとからさらに請求されるなどの紛争にならないよう、しっかりと内容を固めておく必要があります。 -
(4)弁護士に依頼する
訴訟を避けるためには、さまざまな段取りを取る必要があります。そして、何よりも大事なのは、これらの手続きを冷静に落ち着いて行わなければならないという点です。
不貞関係は、感情的なもつれが大きく、当事者同士の話し合いは難航することも多いものです。弁護士に相談することで、適正な慰謝料金額を計算することができ、相手の感情にも配慮しながら、しっかりと交渉することができます。
また、弁護士を代理人として依頼すれば、弁護士が相手との交渉をすべて行い、ご依頼者を全面的にサポートします。交渉のストレスや精神的な負担はかなり軽減されるでしょう。
5、まとめ
不倫相手の配偶者から連絡が来て、初めて自身が行ったことの問題について直面したという方は少なくないようです。ただし、個々で不貞関係に至る事情が異なるため、場合によっては慰謝料を払わなくてもいい可能性もあります。
また、払うとしてもいくらが妥当な金額なのか、すぐに判断するのは難しいでしょう。必ずしも求められた金額をそのまま支払う必要がないケースもあります。まずは弁護士に相談することで、具体的な説明を受けることができます。
ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスでは、不貞の慰謝料事件に経験豊富な弁護士が多数在籍し、ていねいにお話を伺います。おひとりで不安を抱えることなく、訴訟を起こされてしまうなど問題が大きくなってしまう前にご相談にお越しください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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