パパ活狩りの疑いで子どもが逮捕! 家族ができることとは?
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売春・買春や児童ポルノなどの犯罪の温床になるとして「パパ活」が問題視されていますが、さらにパパ活を利用した男性をターゲットとした「パパ活狩り」と呼ばれる事件も多発しています。パパ活狩りは、古典的な「美人局(つつもたせ)」に類似した行為で、犯行類型によってさまざまな犯罪に問われる可能性があるという点が特徴的です。
たとえば、令和4年9月にはパパ活を装って知り合った男性を脅し、車を奪った容疑で16~19歳の男女6人が逮捕される事件がありましたが、容疑は「強盗罪」でした。また、全国の事例をみると「恐喝罪」や「詐欺罪」が適用されたケースもあるので、どのような罪に問われるのかわかりにくい面があります。
本コラムでは「パパ活狩り」で問われる罪や刑罰、もし未成年の子どもが何らかの罪を犯した場合の手続きや処分などをベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。
1、「パパ活狩り」とは?
そもそも「パパ活狩り」とはどんな行為なのでしょうか?
行為の内容や適用される可能性のある犯罪について解説します。
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(1)問題視される「パパ活」
「パパ活」とは、経済的に裕福な男性を「パパ」と称して、食事やデートなどの対価として金銭を得る行為を指します。一緒にいる時間を楽しむことを目的としているため、肉体関係なしが基本です。
いわゆる援助交際と類似するものですが、援助交際は金銭を対価として性行為をすることをメインとしているという点でパパ活と区別されています。
とはいえ、実際にはパパ活と称しても当事者同士の合意のもとで性行為にいたるケースは多く、ソフトな用語に言い換えているだけで、その実態は売春・買春と同じだと問題視する声が多数です。
現行の制度に照らすと、パパ活行為そのものを規制・処罰する法令は存在しません。女性側の年齢や相手への行為によっては男性側が罪になる可能性があるものの、ただちに罪を問われるのかといえばグレーゾーンの範囲にあると考えられています。 -
(2)パパ活相手をターゲットとする「パパ活狩り」
「パパ活狩り」とは、パパ活の相手となった男性をターゲットにして、暴力や脅しによって金銭などを奪う行為を指します。
詐欺・脅迫の古典的な手法として「美人局」という手口があります。女性と性行為をしたところ、あとで女性の夫を称した男が登場して「他人の妻と関係を結んだ責任を取れ」などと脅して金銭などを巻き上げるものですが、パパ活狩りは「現代版の美人局」だと考えておけばわかりやすいでしょう。
被害を受けた男性の多くは、トラブルを周囲に知られてしまったり、罪を問われる事態になってしまったりすることを恐れて、言いなりになってしまいます。少なからず自分も罪になるかもしれないという意識があるために「お金で解決できるなら仕方がない」と考える被害者も少なくないようです。 -
(3)パパ活狩りで問われる可能性がある罪
パパ活狩りは、行為の内容によってさまざまな犯罪に問われます。
- 恐喝罪(刑法第249条) 暴行や脅迫を用いて相手を畏怖させ、相手にみずから金品などを差し出させる犯罪です。「パパ活を利用したことを家族や会社にバラすぞ」などと脅して金銭を差し出させたケースでは恐喝罪が適用されるでしょう。
- 強盗罪(刑法第236条) 暴行や脅迫を用いて相手の抵抗を抑圧し、金品などを強引に奪う犯罪です。「他人の女に手を出したな」などと怒ったふりをして暴力をふるい、迷惑料や慰謝料の名目で無理やり財布を取り上げたといったケースが想定されます。
- 詐欺罪(刑法第246条) 嘘をついて相手から金品をだまし取る犯罪です。暴力や脅しに頼らなくても「あなたとの性交によって女性が妊娠したので中絶費用や慰謝料の支払いで示談にしたい」などと嘘で相手をだまして金銭の交付を受ければ詐欺罪が成立します。
- 暴行罪(刑法第208条)・傷害罪(刑法第204条) 相手を痛めつけてやろうと考えて殴る・蹴るなどの暴力をふるえば暴行罪が成立します。暴力行為によって相手にケガを負わせれば傷害罪です。
法定刑は10年以下の懲役で、罰金の規定はありません。有罪判決を受けるとかならず懲役が言い渡されます。
法定刑は5年以上の有期懲役で、最長20年にわたって刑務所に収監されるおそれがあるうえに執行猶予もつかない重罪です。
法定刑は10年以下の懲役です。
暴行罪には2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料、傷害罪には15年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
なお、これらの罪を犯して刑罰を受けるのは、加害者が成人の場合です。加害者が未成年の少年の場合は、原則として刑罰を科せられません。ただし、少年は健全な更生を目指した処分を受けることになります。
2、子どもがパパ活狩りで逮捕された! 逮捕後の手続きの流れ
パパ活狩りが刑事事件へと発展し、加害者として未成年の少年が逮捕されると、その後はどうなってしまうのでしょうか?
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(1)逮捕・勾留による身柄拘束を受ける
警察に逮捕された少年は、警察署の留置場へと収容されて警察官による取り調べを受けます。逮捕された時点で自由な行動は制限されるので、自宅へ帰ることも、学校や会社に行くことも、スマホで家族や友だちに連絡を取ることも許されません。
警察による身柄拘束は48時間が限界です。逮捕から48時間が過ぎるまでに、逮捕された少年の身柄は検察官のもとへと引き継がれます。これがニュースなどでは「送検」とも呼ばれている「送致」という手続きです。
送致された少年は、さらに検察官の段階でも身柄拘束を受けて事件に関する取り調べを受けます。検察官による身柄拘束の限界は24時間ですが、ここで検察官が「勾留」を請求し、裁判官がこれを許可すると勾留による身柄拘束の開始です。
勾留が決定した少年の身柄は警察へと戻され、初回で10日間、延長請求があれば一度に限り10日間以内の身柄拘束を受けます。
なお、少年の場合は勾留ではなく「勾留に代わる観護措置」を受けるのが原則です。
これは、勾留されて警察に留置されるのではなく少年鑑別所に収容される処分で、勾留とは違い延長は認められません。
少年にとっては身柄拘束の期間が短い観護措置のほうが有利ですが、少年鑑別所の収容力が低いなどの理由から、実際は勾留が選択されているのが実情です。 -
(2)捜査が終わると家庭裁判所へ送致される
勾留期限が訪れて検察官の捜査が終了すると、事件は家庭裁判所へと送致されます。
成人の事件では検察官の段階で起訴・不起訴が判断されますが、少年事件は原則として全件が家庭裁判所へと送致されるのがルールです。
少年の身柄は少年鑑別所に収容され、原則2週間、最大8週間の期限内に事件の内容や少年の生い立ちや性格などの調査が尽くされます。 -
(3)少年審判が開かれる
家庭裁判所が少年の更生にはしかるべき処分が必要だと判断した場合は「少年審判」が開かれます。
事件後の手続きとしては成人事件における刑事裁判と同じ立ち位置ですが、刑事裁判は「刑罰を科すべきかどうか」を中心として審理されるものであり、少年審判は「どのような処分が少年の更生に有効なのか」が判断されるという点でまったく別のものです。
3、刑罰は受けない? 少年に対する処分
未成年の少年が罪を犯したとしても、原則として刑罰は科せられません。ただし、罪にはならないので何ら処分も受けないと考えるのは間違いです。
少年審判の結果によって受ける処分について解説します。
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(1)保護処分
少年を更生させるために必要とされておこなわれる処分です。保護処分には、保護観察・少年院送致・児童自立支援施設等送致の3つがあります。
- 保護観察 指導・監督を受けながらであれば社会内での更生が可能と判断された場合の処分です。定期的に保護観察官や保護司と面接しながら、ルールに従って家庭などで生活を送ることになります。
- 少年院送致 閉鎖的な少年院に収容され、矯正教育や社会復帰の支援などを受ける処分です。生活指導・職業指導・教科指導・体育指導などを受けながら、円滑な社会復帰を目指します。
- 児童自立支援施設等送致 児童自立支援施設や児童養護施設に収容される処分です。少年院とは異なり、開放的で家庭的な環境のなかで少年を指導します。
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(2)検察官送致
犯行時14歳以上で、法定刑が死刑・懲役・禁錮にあたる罪を犯した少年の場合は、家庭裁判所から再び検察官へと送致されることがあります。検察官から送致された事件を家庭裁判所から再び検察官へと戻すことから「逆送」とも呼ばれる手続きです。
パパ活狩りに適用される犯罪はいずれも懲役が規定されているため、事案の悪質性や被害の程度などによっては逆送されるかもしれません。
なお、逆送を受けた検察官は、事件を起訴するのが原則です。起訴されると成人と同じように刑事裁判で審理され、有罪の場合は刑罰を科せられます。 -
(3)知事または児童相談所長送致
比較的に低年齢の少年について、児童福祉機関の措置に委ねる処分です。主に、少年自身の非行性ではなく、家庭や周囲などの環境に問題があったために事件を起こした場合に選択されます。
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(4)不処分
少年審判の結果、ここで挙げた処分を必要としないと判断されると「不処分」となります。ただし、調査を経るなかで事件に関する聴き取りや調査官・裁判官による教育的なはたらきかけが尽くされるので、家庭裁判所が「なにもしない」というものではありません。
なお、似た処分に「審判不開始」があります。審判不開始とは、調査の結果、少年審判を開く必要がないと判断された場合に下される処分です。
少年審判が開かれないので、保護処分などを受けることはありませんが、不処分と同様に聴取や教育的なはたらきかけを受けます。
4、子どもが逮捕された! 残された家族が取るべき行動
自分の子どもがパパ活狩りの容疑で逮捕されたと知らされたら、残された家族として、保護者として、どのような行動を取るべきなのでしょうか?
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(1)まずは弁護士に相談してアドバイスを受ける
子どもが逮捕されたとき、最優先すべきは弁護士への相談です。
たとえ未成年の少年といえども、犯罪の容疑をかけられると捜査の対象となります。成人と同じように逮捕・勾留され、閉鎖的な環境のなかで警察官や検察官の取り調べを受けなければなりません。
家庭だけでなく学校や会社、友人とも隔離されるため、事件後の社会復帰を目指すには、早期釈放と処分の軽減の実現が必須です。
とはいえ、個人による対応では十分な結果は期待できません。どのような罪にあたるのか、子どもはこれからどうなってしまうのかといった点も詳しくはわからないはずなので、まずは法的な知識や少年事件の手続きの実績がある弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。 -
(2)被害者との示談交渉を依頼する
処分の軽減に向けて重要なのが、被害者との示談交渉です。容疑者の保護者として被害者に謝罪し、賠償を尽くすことで許しを請います。
成人事件では、示談が成立して被害者が被害届や刑事告訴を取り下げれば事件が終了しますが、少年事件ではたとえ被害者が届け出を取り下げても原則として家庭裁判所への送致は避けられません。
ただし、被害者への謝罪を尽くすことは少年自身の内省を促すことにつながります。少年が深く反省していると評価されれば、処分が軽減される可能性も高まるでしょう。
被害者との示談交渉には、弁護士のサポートが欠かせません。パパ活狩りという不法行為を受けた被害者は、加害者やその関係者に対して強い怒りや恐怖を感じているため、直接交渉は避けたほうが賢明です。被害者との示談交渉は、弁護士に一任しましょう。 -
(3)処分の軽減に向けたサポートを依頼する
できる限り子どもに与えられる処分を軽くしてほしいと望むのは当然です。
少年に対する処分は、犯罪の重大性だけでなく、少年自身の性格や生い立ち、環境、反省の度合いなどを総合的に考慮したうえで決定されます。少年の更生に向けて望ましい家庭環境が用意されているのかという点はとくに重視されるので、弁護士にアドバイスを受けながら対策を尽くしましょう。
また、成人の刑事裁判における弁護人のように、少年審判においても弁護士は「付添人」という立場でその場に参加できます。実際の少年審判では、少年自身や保護者では少年にとって有利な主張を尽くせない場面も少なくありません。
弁護士が付添人として意見を申し述べ、少年にとって有利な事情や証拠を示すことで、処分の軽減が期待できます。
5、まとめ
「パパ活狩り」は、恐喝罪や強盗罪に問われる可能性がある危険な犯罪行為です。おもしろ半分や簡単な小遣い稼ぎの感覚でパパ活狩りに手を染めてしまうと、警察に逮捕されて保護処分などを受けるおそれがあります。
未成年の少年には刑罰が科せられないのが原則ですが、一定の重大犯罪では成人と同じように刑罰を受けることもあるので「どうせ処罰されない」などと考えるのは危険です。
子どもがパパ活狩りの容疑で逮捕されてしまった場合は、ただちにベリーベスト法律事務所 姫路オフィスにご相談ください。早期釈放や処分の軽減を目指して、少年事件や刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士がサポートを尽くします。
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