子どもがいじめをしてしまった! 逮捕される可能性は? 罰則はあるの?

2020年11月20日
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子どもがいじめをしてしまった! 逮捕される可能性は? 罰則はあるの?

神戸市で小学校の教員間によるいじめが報道されたことは、まだご記憶に新しいかと思います。教員間のいじめというケースは珍しいかもしれませんが、子ども同士のいじめは、依然として根深い社会問題として残っています。そして、あなたの子どもがいじめの加害者になっていたという事態が起こる可能性もあるのです。
いじめを軽く考えるべきではありません。その態様や被害の大きさによっては、いじめ行為は刑罰法規に抵触し、たとえ未成年者であろうと加害者は逮捕されてしまうこともあるのです。
そこで本コラムでは、子どもがいじめの加害者になってしまったときに逮捕される可能性や、保護者として取るべき対応について、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。

1、いじめで犯罪は成立するのか

以下では、いじめで成立しうると考えられる犯罪の一例についてご紹介します。

  1. (1)暴行罪

    刑法第208条によりますと、加害者が被害者を殴ったり蹴ったりするなどの暴行を加えたときに暴行罪が成立します。暴行罪に対して科される刑罰は、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または1日以上30日未満の拘留もしくは1000円以上1万円未満の科料です。

  2. (2)傷害罪

    上記の暴行の結果、被害者がケガを負った場合は刑法第204条に規定する傷害罪が成立します。傷害罪は身体的なケガだけではなく、被害者にノイローゼやトラウマなど精神的なダメージを負わせた場合も成立する可能性があります。傷害罪に対して科される刑罰は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

  3. (3)脅迫罪

    刑法第222条に定義されている脅迫とは、本人または親族の「生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して脅迫」することをいいます。
    たとえば、いじめの加害者から「金を出さないのであれば、ボコボコにする、監禁する、家に火をつける、家族を狙う」などというような発言があった場合は、刑法第222条に規定する脅迫罪が成立すると考えられます。
    脅迫罪が成立すると、2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

  4. (4)恐喝罪

    被害者を脅して金銭などを交付させる、いわゆる「カツアゲ」行為が刑法第249条に規定する恐喝罪に該当します。恐喝罪に対して科される刑罰は、10年以下の懲役です。

  5. (5)器物損壊罪

    加害者が被害者の所有物を壊して物理的に使えなくさせたり、あるいは心理的に使えなくさせたりした場合は、刑法第261条に規定する器物損壊罪が成立します。器物損壊罪に対して科される刑罰は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは1000円以上1万円未満の科料です。

  6. (6)強要罪

    被害者が嫌がっているのに土下座をさせるなどの行為があった場合は、刑法第223条に規定する強要罪が成立しえます。強要罪に対して科される刑罰は、3年以下の懲役です。

  7. (7)侮辱罪

    刑法第231条に規定する侮辱罪は、「事実を示さないで、人を公然の場で侮辱」したときに成立します。たとえば、公然と「バカ」、「ブス」、「人間のクズ」などと被害者に発言することが侮辱に該当すると考えられます。侮辱罪に科される刑罰は、1日以上30日未満の拘留、または1000円以上1万円未満の科料です。

2、逮捕される可能性はあるのか

逮捕とは、検察や警察が事件の被疑者を身体的に拘束することです。

刑事訴訟法第199条1項によりますと、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとき」に逮捕令状により検察や警察は被疑者を逮捕することができると規定しています。つまり、被疑者を逮捕するためには相応の理由が必要なのです。

逮捕には通常逮捕(後日逮捕)・緊急逮捕・現行犯逮捕の3種類があります。もっとも多いパターンである通常逮捕の場合、裁判所が発布する逮捕状が求められます。

被疑者を逮捕することが必要かどうか判断する際の考慮要素は、以下のとおりです。

  • 被疑者の年齢および境遇
  • 犯罪の軽重および態様
  • 被疑者が逃亡するおそれがあるかどうか
  • 被疑者が罪証を隠滅するおそれがあるかどうか
  • その他の事情を考慮し、逮捕が適当であると認められるかどうか


なお、通常逮捕の場合、検察や警察からの請求に基づき裁判所から発行された逮捕状に基づいて、検察や警察は被疑者を逮捕します。
加害者のいじめ行為が暴行罪や脅迫罪など明らかに刑罰法規に抵触するものであり、かつ加害者の状況が総合的に勘案された結果、たとえ加害者が未成年者であろうと逮捕される可能性は十分あります。

3、未成年の場合は?

未成年者、すなわち20歳未満の少年の刑事事件は、警察や検察庁で取り調べがされたのち、家庭裁判所へ送られます。家庭裁判所は、家庭および保護者との関係、境遇、経歴、教育の程度および状況、不良化の経過、事件の動機および関係性、心身の状況などを調査したうえ、必要な場合は審判を開始し、不処分、保護処分または検察官送致等の審判を行い、場合によっては審判を不開始にすることもあります。このような制度は、少年の保護・育成を図るために設けられたものです。

家庭裁判所は、保護処分決定のため必要があるときには、相当の期間を定めて少年を家庭裁判所調査官の観察に付することがあります。この場合には、一定の遵守事項の履行を命じたり、条件をつけて保護者に引き渡したり、適当な施設、団体または個人に補導を委託します。

保護処分には、保護観察所の保護観察(保護観察官および保護司による観察・指導)と少年院(収容・性格の矯正教育の施設)送致等があります。なお、検察官送致の審判は罪質と情状に照らして、刑事処分が相当とする場合に出されます。

4、民事訴訟で訴えられる可能性も

いじめの事件においては、少年法に基づく処分だけではなく、いじめの被害者から慰謝料や損害賠償を請求される可能性があります。当事者間で慰謝料や損害賠償の話し合いがまとまらない場合、いじめの被害者は加害者を相手取り民事訴訟を提起して引き続き慰謝料や損害賠償を請求する事態も考えられます。

裁判所が関与する民事訴訟にはさまざまな種類がありますが、もっとも多いパターンは「通常訴訟」です。通常訴訟の手続きは、民事訴訟法で規定されています。

通常訴訟では、対立する当事者の主張などについて裁判所が慎重に審理を行ったうえで事実を認定し、法的判断に基づき強制的に紛争の解決を図ります。
ただし、民事訴訟は少年審判と異なり、和解によって判決を待たずに裁判を終了させること、あるいは被害者との裁判前の示談によって、回避することも可能です。

5、少年事件・刑事事件は弁護士へ相談

もし、子どもがいじめの加害者であることがわかった場合は、できるかぎりお早めに弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)早期に弁護活動へ着手できる

    弁護士は、刑事罰を受ける可能性があるかどうかについてもアドバイス可能です。そのうえで、逮捕されてしまう可能性があるときは、いじめの加害者である少年への処分ができるかぎり軽くなるような弁護活動に着手することができます。

    また、仮に事案が少年審判に移行した場合であっても、弁護士は加害者に対する各種のアドバイスに加え、家庭裁判所の調査官と面談し、少年院のような矯正施設ではなく社会での更生が妥当であると説明します。

  2. (2)示談交渉を行える

    いじめのように被害者と加害者の関係があるような事件においては、加害者はできるかぎり早く被害者と示談を成立させることが重要です。

    示談とは、民事上あるいは刑事上の争いごとを、当事者同士の話し合いで解決することです。特にいじめが原因で被害者に精神的・肉体的苦痛や財産的被害が生じている事件においては、処分の軽減を図るために被害者と早いうちに示談を成立させることをおすすめします。先述のとおり、示談の成立によって民事訴訟で訴えられることも回避できるだけでなく、告訴されてしまうことも回避できる可能性が高められるためです。

    ただ、いじめの被害者の感情などによっては、加害者本人はもちろんのことそのご家族とすら話し合うことを嫌がることもあるかと思います。この点、被害者側との示談交渉に豊富な経験と実績をもつ弁護士であれば加害者の代理人として、被害者と示談をまとめることが期待できます。

6、まとめ

いじめは警察の介入も当然にあり得る問題です。つまり、いじめが犯罪行為にあたる場合、加害者は逮捕されることもあるのです。

もし子どもがいじめの加害者になってしまったときに保護者としてできることは、子どもの将来を戒めると同時に、弁護士に依頼して被害者と示談を成立させ問題の早期解決を図ることだと考えられます。
ベリーベスト法律事務所では、いじめに関する問題全般のご相談を承っております。ぜひお気軽にご連絡ください。あなたのために、ベストを尽くします。

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