姫路でおなじみ「播磨道交法」は危険運転! 逮捕される可能性も

2020年04月10日
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姫路でおなじみ「播磨道交法」は危険運転! 逮捕される可能性も

姫路市をはじめとする播州地方にお住まいの方であれば、「播磨道交法」の名称を耳にしたことがある方、あるいはご自身の運転について身に覚えのある方も多いと思います。

道路交通ローカルルールのひとつとして定着している播磨道交法ですが、これは姫路や兵庫県播州地方における道路交通マナーの悪さを表現するものでもあります。そして、もっといえば、ローカルルールがあるとはいえ道路交通法などの各種交通法規は全国共通です。播磨道交法により交通違反で行政処分をもちろんのこと、もし播磨道交法による危険運転が原因で人を死傷させたら逮捕される可能性もあるのです。

そこで本コラムでは、播磨道交法をはじめとする各地の危険な道路交通ローカルルールをご紹介しながら、それにより危険運転として逮捕される可能性があるケースについて、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。

1、播磨道交法は道路交通法違反になる?

一般的によく知られている播磨道交法の特徴を確認してみましょう。いずれも、道路交通法に違反する行為ばかりであることにお気づきになるはずです。

  1. (1)交差点での行為

    • 交差点では先に入ってきた車が優先であり、右折時に対向車が来ても止まらない(道路交通法第37条違反)
    • 交差点を右折するとき、左折車を先に行かせると後続の右折待ちの車からクラクションを鳴らされるため、対向車が左折であっても一緒に曲がらなくてはならない(同法第37条違反)
    • 車が通らないかぎり、自転車や歩行者は赤信号を青とみなす(同法第7条違反)
    • 右折信号が消えても、赤信号になるまで右折を続ける(同法第7条違反)
  2. (2)歩道、車線変更での行為

    • 信号のない横断歩道は車が優先(同法第38条違反)
    • 車線変更時、スペースが狭くても割り込みが当たり前(同法第26条違反)
    • ウィンカーは曲がる前ではなく、曲がるときに同時に出す(同法施行令第21条違反)
  3. (3)その他の行為

    • 停留所から車線に戻ろうとするバスは、原則無視。バスは車線が途切れるまで待たなくてはならない。
    • 前方に人がいる場合は、クラクションを鳴らして道を空けさせる(同法第38条の2違反)

2、他にもある、危険な道路交通ローカルルール

道路交通ローカルルールは全国各地に存在し、いずれも交通事故の原因となっています。その中でも、有名な道路交通ローカルルール5つと、ローカルルールに従うことで該当する可能性がある道路交通法違反をご紹介します。

  1. (1)伊予の早曲がり

    愛媛県内の道路交通ローカルルールです。交差点を右折するときに青信号になったと同時に急発進を行い、対向の直進車よりも早く右折するというものです(同法第37条違反)。

  2. (2)岡山ルール

    右折や左折時に、ウィンカーを出さないという行為で知られています(同法施行令第21条違反)。

  3. (3)山梨ルール

    対向車がいたとしても、減速せずに右折をするというものです(同法第37条違反)。

  4. (4)名古屋走り

    平成30年まで、愛知県は交通事故の死者数について16年連続で全国ワースト1位を記録していました。

    名古屋走りの主な特徴と、該当する可能性がある道路交通法違反行為は、以下のとおりです。

    • 信号無視(同法第7条違反)
    • 速度超過(同法第11条違反)
    • 車線変更時、ウィンカーを出さない(同法施行令第21条違反)
    • 車線変更禁止区間でも、追い越しなどのため車線またぎをする(同法第26条の2および第30条違反)
    • 右折車線または右折車両が待機している車線から前方の車に追い越しをかけ、信号の前後で直進できる車線に割り込む(右折フェイント、同法第30条違反)
    • 先頭右折車が右折待ちであるにもかかわらず、後続の右折車が追い越しをかける(同法第30条違反)
    • 右折をするとき、青信号に変わったら即座に急発進し対向車より早く右折する(早曲がり、同法第37条違反)
    • 必要以上に車間距離を詰めてくる(同法第26条違反)
    • 歩行者軽視(同法第38条、第38条の2違反)
  5. (5)松本走り

    松本走りの主な特徴は、以下のとおりです。

    • 信号が赤であるにもかかわらず、見切りで右折を行う(フライング左折、同法第7条違反)
    • 交差点で対向車が接近しているのにもかかわらず、右折を行う(同法第37条違反)
    • ウィンカーを出さないまま右折、左折、車線変更をする(同法施行令第21条違反)
    • 優先道路に出るときに、一時停止をしない(同法第43条違反)

3、危険運転で逮捕される根拠となる法律と刑罰

車の運転で逮捕される根拠となる法律は、主に「道路交通法」と「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転死傷処罰法)です。それぞれの概要と刑罰をみてみましょう。

  1. (1)道路交通法

    道路交通法では同法第115条以下で、違反の内容に応じた懲役、禁錮、罰金などの刑罰が細かく規定されています。

    しかし、道路交通法違反の場合、同法第125条以下の規定により反則金を納付する行政処分を受けることで公訴を提起されない「交通違反通告制度」があります。したがって、以下のような場合を除き、同法違反で逮捕される可能性は低いと考えられます。

    • 違反者の住所氏名が不明の場合
    • 違反者に逃亡の可能性がある、あるいは実際に現場から逃亡した場合
    • 違反の内容が極めて重い場合
    • 警察や検察からの出頭命令に従わなかった場合


    そもそも逮捕は、身柄の拘束を行う特別な措置であるため、逮捕できる条件が別途定められているのです。

  2. (2)自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷処罰法)

    自動車運転死傷処罰法では、「危険運転致死傷罪」および「自動車運転過失致死傷罪」の規定を設けています。

    自動車運転死傷処罰法第2条の規定により、以下の行為によって人を負傷させた場合は逮捕されたうえで15年以下の懲役、人を死亡させた者は逮捕されたうえで1年以上の有期懲役に処される可能性があります。

    • アルコール又は薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で車を走行させる行為
    • その進行を制御することが困難な高速度で、車を走行させる行為
    • その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
    • 人または車の通行を妨害する目的で、走行中の車の直前に進入し、その他通行中の人または車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
    • 赤色信号またはこれに相当する信号をことさらに無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
    • 通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で車を運転する行為


    このように、播磨道交法のような道路交通ローカルルールによる車の運転で人を死傷させた場合に科される刑罰は、決して軽いとはいえないのです。

4、危険運転で逮捕されたらどうなる?

以下では、逮捕されたときの一般的な流れについてご説明します。

  1. (1)逮捕

    逮捕されると、立場は被疑者となります。逮捕されたあとは拘置所もしくは警察の留置所で身柄を拘束され、容疑を固めるための取り調べを受けることになります。警察での取り調べは48時間と決められています。この48時間以内に、引き続き取り調べを行い罪を問うことが妥当と警察が判断した場合は、検察官への送致(新聞などでは「送検」と表現されることが多いようです)されることになります。

  2. (2)勾留

    送致を受けた検察官は、被疑者に対して取り調べを行い、10日間の身柄拘束(勾留)が必要か否かを24時間以内に判断します。被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがあることから、検察官が勾留を相当と判断し、裁判所が検察官の勾留請求を認めた場合は、10日間勾留されたうえで取り調べを受けることになります。検察官や裁判官の判断次第では、勾留期間はさらに10日間延長されることがあるでしょう。

    つまり、逮捕されてしまうと、起訴されるまでだけでも最長で23日間(警察での48時間、検察での24時間および20日間)も身柄を拘束され続けることになるのです。

  3. (3)起訴

    勾留期間が満了するまでに、検察官は、被疑者に対する起訴不起訴の処分を決定します。

    このとき、不起訴処分になると釈放されます。しかし、起訴されると被疑者から被告人になり、書類上の手続きによる「略式裁判」、または公開の法廷での「刑事裁判」が行われることになります。

    起訴されてから裁判が始まるまでだけで約1か月以上、重大事件であれば判決が出るまでに年単位の月日がかかることがあります。保釈が認められないかぎりは、この間も引き続き勾留されることになるので、多くが保釈請求を行うことになるでしょう。

    日本における刑事裁判では、起訴されると極めて高い確率で有罪となります。また、有罪判決が確定すると同時に、前科がつきます。これは、たとえ略式裁判によって罰金刑が処された場合であっても同様です。

5、弁護士に依頼すべき理由

もし危険運転で逮捕されてしまったら、すぐに刑事事件の取り扱いに経験と実績をもつ弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は逮捕されてしまった人が有罪となり前科がつくことを防ぐために、主に以下のような弁護活動を行います。

  • 逮捕直後に面会し、今後の取り調べに対するアドバイス
  • 警察や検察などの捜査機関と、早期釈放に向けた交渉
  • 被害者との示談交渉


捜査機関は被害者の処罰感情も重視するため、被害者と示談交渉が成立していることは重要な要素になります。

弁護士は逮捕から起訴までの限られた時間のなかで、示談交渉等のできるかぎりの弁護活動を行います。

6、まとめ

危険運転で逮捕されないためには、道路交通法に即した安全運転を心がけるべきであることは言うまでもありません。しかし、もし逮捕されてしまった場合は、早急に刑事事件の弁護活動に実績のある弁護士に今後の弁護活動を依頼することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスでは、刑事事件の対応についてのご相談を受け付けております。もし逮捕されてしまったときは、所属弁護士があなたのために最善の弁護活動を行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています