万引き後に警備員を突き飛ばして逃げると強盗? 事後強盗にあたる行為
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平成27年12月19日、兵庫県警姫路署が、女性のかばんから財布を盗んだ男が、財布を取り戻そうとした女性に暴行を加えたため、事後強盗容疑で現行犯逮捕したという報道がありました。
通常、他人の持ち物を盗むと、窃盗罪に問われます。しかし、盗んだものを取り戻そうとされたり、逮捕されたりすることから逃げる目的で暴行や脅迫行為をすると、「事後強盗罪」という犯罪になることがあります。強盗は、5年以上の懲役刑しか定められていない、非常に重い罪です。本コラムでは、事後強盗とは、窃盗や強盗とどう違うのか、逮捕された後の手続きについても一緒に、姫路オフィスの弁護士がご紹介します。
1、事後強盗とは
事後強盗は、刑法第238条に規定されています。まずは、事後強盗罪の概要を確認しましょう。
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(1)事後強盗罪はどのような罪?
事後強盗罪とは、窃盗をした者が盗んだものを取り返されることを防いだり、逮捕から逃れたり、証拠を隠滅するために暴行や脅迫を行ったために問われる罪です。
たとえば、万引きをして警備員に見つかり、捕まるのを防ぐために警備員を突き飛ばして逃げた場合、突き飛ばした行為が暴行や脅迫と評価されると、単なる万引きではなく強盗罪として扱われることになります。 -
(2)事後強盗罪の量刑は?
事後強盗罪は、強盗と同等に扱われます。
したがって、通常の窃盗では10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑ですむところ、事後強盗は強盗罪と同様の罪の重さとなり、5年以上の有期懲役となります。
なお、実際に有罪になったとき科されることになる量刑は、事件の様態に応じて変わります。
2、強盗や窃盗などほかの犯罪との違いについて
事後強盗罪は、窃盗罪や強盗罪とどう違うのか、ここで見ていきましょう。
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(1)強盗との違い
強盗とは、暴行や脅迫という強い手段を用いて、相手の抵抗を抑圧して財産を奪いとる行為のことをいいます。盗んだものや、金額の大小は関係ありません。強盗は刑法第236条において規定されており、5年以上の懲役刑が科されます。
強盗は暴行や脅迫を用いて他人のものを奪う行為ですが、事後強盗は、窃盗犯が逮捕の回避や証拠隠滅などの目的のために暴行や脅迫を用いた場合に該当します。 -
(2)窃盗との違い
窃盗とは、他人のものを盗んだり無断で持ち去ったりする犯罪のことです。
事後強盗は、この窃盗行為の後に証拠隠滅や財産を取り戻そうとする行為を拒んだり、逮捕から逃れたりするために暴行や脅迫行為が行われやすいために設けられた規定です。
3、事後強盗の逮捕後の流れ
もしも事後強盗で逮捕されてしまったら、逮捕後の流れはどうなるのでしょうか。初めて逮捕されてしまった方は、逮捕後の流れがわからずに不安に思うかもしれません。そこでここでは、事件発生から逮捕、裁判を受けるまでの流れを解説します。
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(1)事件発生から逮捕
逮捕にはいくつかの種類があります。
ひとつは、その場に駆けつけた警察官や、私人(店員、警備員など)に現地で逮捕される場合である「現行犯逮捕」です。
もうひとつは、現場では逮捕されず、警察の捜査により犯人と特定され、後日、裁判所が発布した逮捕状を伴った警察官によって逮捕される「通常逮捕」です。
なお、逮捕後は警察の留置場に身柄を移されます。 -
(2)警察による取り調べ
警察に逮捕されると、証拠隠滅や逃走防止のために、警察施設で生活しながら取り調べを受けます。この間、自由に外出などはできず、日常生活上の制限を受けます。
警察における身柄拘束時間は48時間以内と定められており、その間に検察に身柄を送るか釈放するかを決めなくてはなりません。 -
(3)検察による捜査
警察での取り調べが終わると、検察へ身柄を送致されます。検察が引き続き身柄拘束の必要があると判断した場合は、裁判所に勾留請求を行い、これが認められることで、原則10日間、追加で10日間、合計で最長20日間の身柄拘束が続きます。
つまり、逮捕から最長23日間もの間、身体拘束を受けることになる可能性があるのです。 -
(4)刑事裁判
検察による捜査の結果、起訴するべきだと判断されたら、刑事裁判となります。検察が起訴する際には、有罪を確信できるほどの証拠を集めているため、起訴された場合は高い確率で有罪となります。
事後強盗罪の場合は、罰金刑の設定がないため有罪になったときは、直ちに刑務所へ収監されてしまう可能性が高いでしょう。
4、事後強盗は示談が成立しにくい?
事後強盗は、前述したように刑が非常に重く、起訴された場合は実刑判決を受ける可能性が高い犯罪です。実刑判決を受けないためには、裁判になる前に不起訴処分になる、もしくは情状酌量による減刑と執行猶予が必須となります。
そのためには、反省の意を裁判官や検察官に知らしめる、被害者との示談の成立が重要なポイントになります。そこで、ここでは事後強盗における示談について解説します。
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(1)事後強盗と示談
事後強盗罪の場合は、被害者との示談成立が困難だといわれています。それは、被害者は金銭などの財産を奪われただけでなく、その後にさらに暴行や脅迫を直接受けているため、加害者に対しての恐怖心や嫌悪感が強いためです。また、加害者自身が身柄の拘束を受けていれば自ら示談交渉をすることはできません。
このため、加害者自身や加害者のご家族が交渉をしようとしても、示談が成立する見込みは非常に低いと考えられます。もちろん、警察や検察など捜査機関も、加害者に対して被害者の連絡先など個人情報を教えることはないため、示談そのものができないこともあり得るでしょう。 -
(2)弁護士に相談を!
もしも事件を起こしてしまったら、迷わず弁護士に相談されることをおすすめします。
第三者であり、法律の専門家である弁護士を介することで、被害者の感情も和らぎ、示談交渉を行える可能性がでてきます。早期に示談が成立すれば、不起訴となったり、減刑されたりする可能性を高めることができるでしょう。
また、逮捕された場合、当初の72時間は、原則として誰も面会できないことになっています。しかし、その期間中も弁護士は面会できるため、適切なアドバイスを受け、不起訴処分などの早期解決を目指すことができます。
万が一裁判になった場合でも、弁護人として全面的にサポートを行います。逮捕後、勾留されたときは、国選弁護人を利用することができますが、勾留前からの弁護活動を行うことや、自ら弁護士を選ぶことができません。早期からサポートおよび示談交渉をしてもらいたいのであれば、私選弁護人を選任することを検討してください。
5、まとめ
事後強盗は、窃盗だけ働いてしまったケースよりも重い罰則規定が設けられています。もしも逮捕されてしまったら、できるだけ早い段階で被害者との示談を成立させることが、起訴や有罪判決を免れるために必要となります。
しかし、事後強盗は、被害者が受けた恐怖心や憤りが強く、示談交渉が難しいのが現実です。もしも事件を起こしてしまったら、1日も早く弁護士にご相談ください。弁護士に依頼すれば、示談交渉のサポートや、事件の早期解決に向けたアドバイスを受けることができます。
ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスでも、刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士がご相談をお受けしています。まずはお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています