置き引きをしたとき問われうる罪は? 捕まる可能性と逮捕後の流れ
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令和元年9月、姫路城三の丸広場で開かれたイベント会場で置き引き事件が起きたものの、場内にいた人々の協力により犯人逮捕につながったという報道がありました。
他人のカバンなどを持ち出す行為、いわゆる置き引きは犯罪行為にあたります。ほんの軽い気持ちでやってしまったとしても、前述の事件のように逮捕されることがあるでしょう。
本コラムでは、置き引き行為がどのような犯罪に該当するのか、また、逮捕された後の手続きなどについて姫路オフィスの弁護士が解説します。
1、置き引きとは? 問われる可能性がある罪
一般的に、置き引きは、所有者が荷物から少し目を離したすきなどに荷物を盗んでしまう行為や、所有者が荷物を置いたまま離れてしまった際に、その物を持ち去る行為などを指します。パチンコ店やスーパーマーケット、電車の中など、広く一般利用されている場所で発生することが多々あります。
しかし、置き引き罪という罪名はありません。そもそも「置き引き」は、法律用語ではなく一般用語であるためです。刑法に定められている犯罪の中において、置き引きは、窃盗罪、もしくは占有離脱物横領罪に該当する可能性がある行為なのです。
●窃盗罪
窃盗は刑法第235条に規定されている犯罪で、他人の財物を盗む行為です。10年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられます。
●占有離脱物横領罪
刑法第254条に規定されている犯罪で、遺失物や漂流物、その他所有者の手から離れてしまった物を自分の物にする行為です。たとえば道で拾った財布を持ち帰り、自分の物として利用することなどが該当します。
占有離脱物横領罪は所有者の管理、支配が及んでいない物を手に入れるという点が特徴的で、窃盗罪と比べて法定刑が軽くなっています。罰則は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金、もしくは科料です。
窃盗罪の法定刑にかなり幅がある理由は、この罪の被害の大きさが各事案によってそれぞれ異なるからです。盗むという行為の対象となる金品は、高価な美術品や金庫に入っていた大金、駐輪中の自転車、カフェのテーブルに置いておいた財布などさまざまです。被害の大きさに応じて適した罰を与えることができるため、幅をもたせた刑罰が規定されているのです。
2、窃盗罪になる置き引きとは?
前述したように、窃盗罪と占有離脱物横領罪では、窃盗罪の法定刑が重いことがおわかりいただけたかと思います。
そのため、置き引きはしばしばどちらの犯罪に該当するのか、争われる場合が多くなっています。この点についてもう少し詳しく解説します。
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(1)他人の管理・支配にある財物
窃盗罪は、他人が管理・支配している物やお金などを自分の物にしてしまう犯罪行為です。この管理や支配は、本人の手が届く範囲にある他、他者や適切な施設に預けていた場合にも成立すると考えられています。
したがって、短時間放置されている他人の物を盗む置き引きは、他人の管理・支配から離れている物とはいえず窃盗罪にあたると考えられます。たとえばパチンコ店内で競技に熱中している方が置きっぱなしにしていた財布を持ち帰るなどの行為が該当する可能性があるでしょう。 -
(2)不法領得の意志
他人の物を自分の物として、利用処分しようとする意思を指します。物を一時的に隠して相手を困らせようとしたり、破壊したりする場合は窃盗罪にはなりません。
前述の、パチンコに熱中している方の財布を持ち帰る行為は不法領得の意思があるとみなされる可能性が高いでしょう。 -
(3)窃取の事実
窃盗を働いた事実と、その結果が結びついていなくてはいけません。置き引きによって、他人の物を自分の物として利用処分したという事実が必要になります。
前述の例でいえば、競技に熱中している方の財布を持ち去ったあと、入っていたお金を使ってしまった、財布そのものをフリマアプリなどで売ったなどのケースであれば、窃取の事実が確定することになるでしょう。なお、窃盗罪は未遂でも罪に問われます。たとえ、盗んだ直後に取り押さえられて実際には窃取ができていなくても、窃盗未遂罪として罪に問われる可能性があるのです。
この他、暴行、または脅迫を用いて他人の財物を強取した場合は、刑法第236条に規定される強盗罪として罰せられます。強盗罪は5年以上の有期懲役となり、非常に罪が重くなります。
このように、他人の物を自分の物にする前に、それがどのように管理されていたのか、それをどのように自分の物にしたのかによって、窃盗罪になるかどうかが決まります。
3、逮捕後の流れ
ここでは、置き引きで逮捕されたあとの、具体的な流れなどについて見ていきます。
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(1)逮捕
逮捕されると、まず警察官による取り調べを受けることになります。そして、逮捕から48時間以内に検察官に送致されるか、釈放されるか決定されます。次に、検察官から取り調べを受け、そこから24時間以内に勾留請求するかどうか判断されます。
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(2)勾留
検察官から勾留請求され、裁判官がそれを認めると、勾留決定となります。この勾留は原則10日間、延長も含めると最大20日間にもなります。この間は学校にも会社にも行けなくなりますので、長期の欠席や欠勤状態が続き、逮捕された事実が知られてしまうというデメリットが生じると考えられます。
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(3)裁判
勾留が満期を迎えるまで、もしくは取り調べが終わり次第、検察が起訴・不起訴の判断を行います。起訴されてしまうと裁判手続きに進み、被疑者から被告人と呼ばれる立場となります。
起訴のうち、「公判請求」となれば、公開にて行われる裁判が終わるまで、原則、引き続き勾留されます。帰宅するためには、保釈請求を行い、認められなければなりません。通常の刑事裁判は、起訴からおよそ1か月後に始まりますが、判決が下るまでに数か月以上かかることもあります。
他方、「略式請求」であれば、書類手続きのみで行われる簡易的な裁判を通じて罰金刑を中心となした処罰が下ります。判決がすぐに下るため、早期に釈放されるでしょう。ただし、有罪になれば、たとえ罰金刑であろうと前科がついてしまいます。
4、置き引きで逮捕されたときは弁護士に相談を!
長期にわたる身柄拘束や、重い処罰を受ける可能性を回避するためにも、できるだけ早期に弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)逮捕後のサポート
前述したように、置き引きはその形態によってどの犯罪に該当するか判断が分かれ、それに伴い処分の重さも変わってきます。このため、刑事事件についての知見が豊富な弁護士に一刻も早く相談しましょう。
刑事事件では、逮捕されてから72時間は家族が面会することはできません。面会できるのは、弁護士だけです。ご家族が状況を正確に把握するためにも、弁護士に依頼して、すぐにでも面会してもらうことをおすすめします。
弁護士は、黙秘権が認められていることを伝えたり、不利になる言動をしないように適切なアドバイスをしたり、家族の思いなども伝えたりすることができます。また、早期の身柄解放に向けた活動を行っていくことも可能です。 -
(2)示談交渉
置き引きの場合、早期に示談が成立し、置き引きをした本人が心底反省しているような場合は、起訴されないで済む場合もあります。
また、勾留請求されず早期に釈放されるためにも、示談の成立は不可欠といえます。しかし、家族が示談交渉をしたとしても、被害者からすると加害者側の家族に対して冷静な対応ができない場合があります。
そこで、第三者である弁護士が示談交渉することによって、冷静な対応をしてもらうことが期待できるようになります。また、法的な知識を持ち、交渉に慣れている弁護士ならば、早期の適切な条件での示談成立にも期待できます。 -
(3)裁判の弁護活動
起訴となった場合でも、引き続き弁護士のサポートを受けることができます。弁護活動によって、執行猶予や罪の減刑を得ることもできる可能性があります。
早い段階から弁護士が介入することによって、長期にわたる身柄拘束などといった将来にわたる影響を最小限に抑えることができるでしょう。
5、まとめ
置き引きの事案においては、物やお金の所有者がふと目を離したすきや不注意で置き忘れたときに、でき心でついそれを自分の物にしてしまったという方も中にはいるかもしれません。しかし、置き引きはれっきとした犯罪です。窃盗罪と認められれば、重い刑罰を受けるおそれもあるため、早期の弁護活動で少しでも早く社会復帰ができるようにする必要があります。そのためには弁護士への相談が不可欠です。逮捕されて身動きが取れない家族の代わりに、一刻も早く、弁護士に相談すべきでしょう。
家族が置き引き行為によって逮捕されてお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスまでご連絡ください。刑事事件の経験豊富な弁護士が、早期解決に向けて力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています