交通事故の保険金詐欺容疑で逮捕された家族はどうしたら帰宅できる?
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令和2年2月、兵庫県警交通捜査課らが、平成26年に追突事故を装い保険金詐欺を働いた容疑で男女10人以上を逮捕していたことが報道されました。本事件は、姫路市を擁する兵庫県内で起きた事件です。
ご家族が保険金詐欺で逮捕されたら、非常に動揺されることでしょう。逮捕された家族自身はいつ帰れるのか、あなた自身もどうすればいいのかお悩みになるはずです。逮捕されたご家族が重すぎる処罰を科されないためにご家族が取れる対策から、逮捕から公判までの流れをベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。
1、保険金詐欺とは?
保険金詐欺とは、被保険者(保険の対象になる人)が病気・ケガ・死亡したと見せかけて、保険会社から保険金をだましとる行為です。火災保険や自動車保険などの損害保険契約に基づく保険金の不正受給が挙げられます。
日本で保険金を不正に受給すると、刑法第246条で規定されている「詐欺罪」として罪に問われる可能性があります。
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(1)詐欺罪とは?
詐欺罪とは「金品をだましとる犯罪」のことです。保険金詐欺以外にも詐欺の手口は多数ありますが、他人をだましてお金や物を受け取ったり、サービスを受けたりすると問われる罪です。
有罪となれば「10年以下の懲役」が科されます。窃盗罪や傷害罪などとは異なり、罰金刑はありません。複数人による犯罪グループや、会社、暴力団などによって組織的に詐欺行為をした場合、刑罰は「1年以上の有期懲役」となり、一般の詐欺罪のケースより重くなります。
なお、詐欺罪は、未遂でも処罰される重い罪です(刑法第250条)。 -
(2)保険金詐欺の手口とは?
自動車事故による保険金詐欺の手口としては、保険事故が発生していないにもかかわらず発生したかのように偽装する「事故偽装型」と、実際に発生している保険事故に便乗して実際の損害額以上の保険金を請求する「事故便乗型」とに大きく分けられるようです。
保険会社は調査会社と契約しており、事故があった場合にはその詳細を厳密に調べます。そのため、安易な偽装はすぐに見破られてしまうでしょう。悪質な場合は、被害届を提出されて警察に告訴されることとなります。
不正受給は、刑法による詐欺罪に問われるだけでなく、民法上の不法行為にあたります。発覚したならば、被害者(保険会社)から民事訴訟で損害賠償請求を受けることも十分に考えられます。
2、保険金詐欺で逮捕された後の流れ
冒頭の事件のように、実際に事故を偽装してから数年後に逮捕されてしまう事態も起こりえます。逮捕された場合、その後の処遇については刑事訴訟法により厳密に手続きが定められており、一般的な刑法犯罪全般で共通です。
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(1)逮捕と警察での取り調べ
現行犯逮捕を除いて、逮捕するには裁判所の発行する逮捕状が必要です。警察などの捜査機関は、被疑者が罪を犯したと疑うに足る理由がある場合に、裁判所に対して逮捕状の発行を申請します。裁判官がこれを認め、「証拠隠滅や逃亡のおそれがある」と判断した場合にのみ逮捕状が発行され、逮捕することが認められます。
警察は、被疑者に逮捕状を示し罪状を述べた上で身柄を拘束します。その後留置場などに連行して取り調べ、逮捕から48時間以内に被疑者の身柄や事件の調査書類を検察へ送致するか判断しなければなりません。
また、罪を犯した事実があるものの、証拠隠滅や逃亡のおそれがなく、身元引受人が存在するときは、被疑者の身柄を拘束せずに取り調べを行う在宅事件扱いとなる場合もあります。在宅事件扱いとなれば、事件だけが検察に送られる書類送検が行われることもあるでしょう。 -
(2)検察への送致と勾留請求
被疑者の身柄を検察へ送致すると、検察官はさらに取り調べを行い、被疑者を勾留(こうりゅう)する必要があるかどうかを送致後24時間以内に判断します。
勾留とは、身柄を拘束したままで取り調べを続けることを指します。裁判官が勾留請求を認めると、被疑者は原則10日間、延長されれば最大20日間もの間、身柄を拘束されたまま取り調べを受けることになるでしょう。 -
(3)起訴から刑事裁判
検察は、勾留期間満期日、もしくは取り調べが終わり次第、事件を起訴するかどうか判断します。在宅事件の場合は、起訴が半年や1年以上先となる場合もあります。
起訴された場合は、以降、被疑者は被告人と呼ばれます。また、起訴された場合は、裁判が終わるまで身柄の拘束を受けることもありますが、起訴後は保釈請求により身柄解放が認められる可能性があります。裁判所に対して行った保釈請求が認められれば、保釈金を支払うことで帰宅が許されます。保釈金は、保釈条件の違反さえなければ返還されます。
なお、多くのケースでは起訴から約1か月後に第1回公判期日が開かれ、審理が行われます。裁判で有罪の判決を受けた場合は、残念ながら前科がつくことになります。執行猶予つきの有罪判決だった場合、前科はつきますが、すぐに収監されることはありません。執行猶予期間に問題を起こすことなく日常生活を過ごすことができれば、刑罰を科されずに済むでしょう。
3、逮捕されたら依頼できる弁護士の種類
日本の司法では、起訴されると有罪判決が下される確率は99%以上といわれています。したがって、有罪判決を受けると前科がつき、就職や海外渡航が制限されるなど、将来に影響を及ぼすことは避けられないと考えてよいでしょう。
本人や家族が受ける影響を最小限に抑えるためにも、弁護士を選任することをおすすめします。しかし、いざ弁護士を頼むとしても、どのような弁護士に依頼すればよいかわからない方も多いでしょう。刑事事件で逮捕された方が受けられるリーガルサービスについて解説します。
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(1)当番弁護士制度による接見
当番弁護士とは、1回だけ無料で接見(面会)に呼ぶことが可能な、逮捕中の方なら誰でも一度は弁護士に相談できる制度です。
当番弁護士ができることは、一般的に逮捕後の流れや取り調べについてアドバイスを行うだけにとどまります。2回目以降の接見を希望するときや、示談などの弁護活動を行ってほしいときは、別途、私選弁護を正式に依頼する必要があります(有料です)。 -
(2)国選弁護制度による弁護活動
貧困などの理由で私選弁護士に依頼できない場合に、国が弁護士費用を負担して弁護人を依頼できる制度です。国選弁護制度を利用して依頼を受けた弁護士は、国選弁護人と呼ばれます。なお、依頼者が国選弁護人を選ぶことはできません。
国選弁護制度を利用するためには、勾留を受けていることや、資力が50万円に満たないことなどといった条件が必要となります。 -
(3)私選弁護人による弁護活動
被疑者や被告人またはその家族の意思によって選任した弁護人です。どの弁護人に依頼をするか、依頼者が自由に決めることができます。話がしやすく相性がよい弁護士や、保険金詐欺をはじめとした刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士など、個々の基準で選ぶことができるでしょう。
私選弁護人を依頼するメリットについては、次項で詳しく解説します。
4、保険金詐欺事件で私選弁護人を選任するメリット
詐欺事件は、組織的な犯罪であることも少なくないため、勾留が長期に及んだり、取り調べが厳しいものになったりする可能性もあります。また、ひとりで取り調べに対応していると、裁判で不利になってしまう供述調書を取られてしまう可能性があるでしょう。
したがって、早期に弁護士を依頼し、サポートを受けたほうがよいでしょう。逮捕段階、もしくは逮捕前から依頼できる弁護士は、私選弁護人のみに限られます。
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(1)示談交渉をしてもらえる
詐欺事件で前科をつかないように解決するためには、被害者側と示談をすることが大変重要です。刑事事件における示談とは、当事者同士で事件を解決することを指します。多くの場合、加害者が被害者に真摯に謝り賠償金を支払う代わりに、被害者は宥恕(ゆうじょ・ゆるすという意味)の意思表示をして、被害届を取り下げるという約束をすることです。
示談が成立すれば、早期釈放や不起訴になる可能性は上がります。保険金詐欺であれば、被害者は保険会社であり、先方も弁護士を立てて対応しているケースが多いでしょう。示談の交渉においては、先方が弁護士であれば、こちらも弁護士を立てて交渉に臨まなければ、示談条件で相手の言われるままになってしまう可能性があります。 -
(2)取り調べや裁判のサポート
逮捕後は、親族であっても面会が許されないのが原則です。ただし、弁護士であれば例外的にいつでも、何度でも被疑者と接見することができます。家族との連絡も、弁護士に仲介してもらうことができます。
また、弁護士は取り調べに同席することはできませんが、取り調べにどのように応じるかの相談を行い、アドバイスを受けることができます。公判で使う証拠集めなども、弁護士に依頼して進めてもらうことも可能でしょう。
5、まとめ
詐欺罪は逮捕されると、半数以上が起訴となる重い犯罪です。早期に弁護士のアドバイスを受け、不起訴となる可能性を探ることが大切になってくるでしょう。
もしも家族が保険金詐欺に関わってしまったとしたら、一刻も早くベリーベスト法律事務所 姫路オフィスで相談してください。示談交渉や弁済の方針を立てるなど、状況に合わせて最適な弁護活動を行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています