段ボールの不法投棄で逮捕される可能性は? 不法投棄で逮捕された事例

2024年04月01日
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段ボールの不法投棄で逮捕される可能性は? 不法投棄で逮捕された事例

ゴミの不法投棄は日本全国を通じて大きな社会問題となっています。姫路市街地の山林でも、地元ボランティアなどによる清掃活動がおこなわれた際、山道や斜面には不法投棄されたタイヤや家電製品などが大量に不法投棄されていたとの報道がありました。

ゴミの不法投棄は法令に違反する犯罪行為であり、この事例のようにタイヤや家電製品などを山中に捨てる行為が厳しく非難されるのは当然でしょう。では、家庭から出た段ボールを指定された日・場所以外で捨てる行為も、やはり同じように違法となるのでしょうか。違法となる場合、逮捕されて刑罰を受ける可能性があるのかも気になるところです。

本コラムでは「段ボールの不法投棄」で問われる罪や逮捕の可能性について、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。

1、段ボールを指定された方法以外で捨てたら不法投棄?

宅配された荷物や引っ越しの荷造りなどで排出された段ボールのゴミは、かさばりやすく処分にも困りやすいものです。自治体が指定する方法では捨てにくかったり、あるいは誤って指定された方法以外で捨ててしまったりすることもあるかもしれません。

段ボールを指定された方法以外で捨てると、やはり「不法投棄」になり、罪を問われるのでしょうか?

  1. (1)「不法投棄」とは?

    「不法投棄」という用語に法律で定められた正確な定義はありませんが、一般的には、自治体に指定されている方法以外でゴミを捨てる行為を広く指して使われています。指定日ではない日にゴミを捨てる、指定された分別方法を守らないなど、マナーに反するゴミの捨て方も不法投棄と呼ばれることがあります。

    もっとも、「不法」というからには、何らかの法律を犯す行為が想定されているといえるでしょう。ゴミの捨て方などを定めている法律には、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、いわゆる「廃棄物処理法」があります。

    つまり、法的な観点から不法投棄が問題となるのは、基本的には廃棄物処理法に違反するゴミの捨て方をすることを指すのだと考えるのがよいでしょう。ただし、地方自治体の条例などでもゴミの捨て方などについて定められている場合があるため、注意が必要です。

  2. (2)指定された方法以外で捨てると不法投棄になる?

    一般的な意味を用いるなら、指定された日に、指定された場所で、指定された分別方法に従ってゴミを出さなければすべて不法投棄となるようにも思われます。

    段ボールは紙と木材からできておりリサイクルが可能なので、資源ゴミとして処分するのが正しい方法だといえます。姫路市のゴミの分類方法に従えば、リサイクル可能な「古紙類」として、段ボール・新聞紙・雑誌類を区別したうえで、十文字にひもで束ねなければなりません。地域ごとに指定されている月2回の日の午前8時までに、粗大ごみステーションに出すのが正しい排出方法です。

    ただし、これらは自治体が独自に決めたルールであり、法律による定めではありません。たとえば、段ボールと新聞紙を分別していなかった、段ボールをひもで束ねていなかった、誤って可燃ごみの日に排出した、午前8時よりも少し遅れてごみステーションに出したといった場合でも、直ちに不法投棄として事件になる可能性は低いでしょう。

    しかし、廃棄物処理法第16条は「何人(なんぴと=誰であっても)も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」と定めています。

    ここでいう「みだりに」とは、簡単にいえば「正当な理由もなく」と同じ意味です。そして「みだりに」といえるかどうかは、生活環境の保全や公衆衛生の向上を図るという廃棄物処理法の趣旨に照らして、社会的に許されるかどうかで判断されます。

    たとえば、指定されたごみステーションではない場所に捨てていた、行政から注意を受けたのに指定された日以外の日に捨てる行為を繰り返したといったケースでは、行為の悪質さなどによっては「不法」と判断されるかもしれません。

    いずれにしても、段ボールに限らずゴミは自治体の指示を守って正しく排出するべきです。

  3. (3)不法投棄の罰則

    廃棄物処理法の違反にあたる不法投棄には、同法第25条1項14号の規定に従って、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。これは、不法投棄をしたのが個人である場合の罰則です。

    不法投棄をしたのが法人の代表者や従業員などであった場合は、同法第32条1項1号の規定により、不法投棄をした本人を罰するだけでなく、法人にも最大3億円の罰金が科せられます

2、段ボールを不法投棄されたときの対処法

段ボールをみだりに捨てる行為は不法投棄となる可能性があります。
では、自分の敷地に段ボールを不法投棄された場合や、指定された場所以外での不法投棄を目撃した場合は、どのように対処すればよいのでしょうか?

  1. (1)自分の敷地に捨てられた場合

    自宅の庭や自分が管理している敷地などに段ボールが不法投棄された場合は、管轄の警察に通報するのが基本です。

    ただし、警察が扱うのは犯罪の捜査や被疑者の逮捕などであり、投棄された段ボールの量などの状況に照らして廃棄物処理法違反にあたると判断されるケースでなければ、現場の確認だけで済まされてなんの対応もしてくれない可能性があります。

    もし、段ボールのなかに不法投棄をした人物を特定する手がかりがあれば、段ボールを証拠品として押収し、刑事事件として扱うか、あるいは相手に警告して処分させるケースもありますが、投棄の現場を目撃する証言や防犯カメラの映像などがなければ難しいでしょう。

    なお、敷地内に捨てられた段ボールは、たとえ不法投棄でも警察や自治体は回収してくれません。これは、敷地内にあるものの処分は敷地の管理者に責任があるという原則にもとづいています。処分の方法や費用の問題は、お住まいの市町村役場に相談しましょう。

  2. (2)指定場所以外で不法投棄を見つけた場合

    ごみステーション以外の場所に段ボールが不法投棄されているのを発見したら、その場所の市町村役場に連絡してください。早急に回収・処分されることもあれば、役場が警告文を貼り付けて一定期間そのまま置いておき、投棄者が自主的に回収するのを待つこともあります。

    もし、誰かが不法投棄しているという状況を目撃したなら、直ちに110番に電話をかけて警察に通報しましょう。投棄者の人相・着衣、自動車のナンバーなど、わかる範囲で情報を伝えれば、廃棄物処理法違反の容疑者の検挙につながるかもしれません。

3、段ボールを不法投棄して逮捕された実例

実際に段ボールなどを不法投棄した容疑で警察に逮捕された事例を紹介します。

  1. (1)畑に段ボールなど約218キログラムを不法投棄して逮捕

    令和3年6月、第三者が所有する畑に段ボール・衣類・木くずなど合計約218キログラムを不法投棄した疑いで、2人組の男が逮捕されました。現場は森林に囲まれておりゴミが見つかりにくい状況でしたが、畑の賃借人が不法投棄を発見して警察に通報し、廃棄物を捜査して男らを特定したとのことです。

    段ボールに限らず、投棄されたゴミにはさまざまな情報が残されています。断片的な情報でも、多くのゴミから情報をつなぎ合わせれば投棄者の特定に至ることもあるので、安易に「バレない」などと考えるべきではありません

  2. (2)他人の養蜂場の敷地に段ボールなどを不法投棄して逮捕

    令和5年5月、他人の養蜂場の敷地に段ボールのほかビニール袋・家電製品・陶磁器のくずなどを不法投棄した疑いで、建設業の男が逮捕されました。土地の所有者からの通報で不法投棄が発覚し、警察の捜査によって容疑者が特定されたとのことです。

    投棄された段ボールなどのゴミは、逮捕された男の業務のなかで出たものだと見られています。業務のなかで排出されたゴミは産業廃棄物にあたり、事業者は事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければなりません。

    産業廃棄物は特に分別・保管・収集・運搬・処理・処分が厳しく定められており、違反があると厳しく処罰されます

4、段ボールの不法投棄で罪に問われた場合の正しい対応

引っ越しなど一時的に大量の段ボールのゴミが発生して処分に困ったり、少量でも資源ゴミの回収日を待つのが面倒になったりして、指定された方法を守らずに段ボールを捨ててしまうと、不法投棄として責任を問われる危険があります。

もし、段ボールの不法投棄で罪に問われる事態に発展した場合は、どのように対応すればよいのでしょうか?

  1. (1)まずは弁護士に相談する

    不法投棄の容疑者として警察による捜査の対象になってしまったり、不法投棄した場所の管理者から処分料や慰謝料などを含めた損害賠償を請求されたりしたときは、自分ひとりで考えて対応するのではなく、まずは弁護士に相談しましょう。

    弁護士に相談して詳しい事情を説明すれば、実際に不法投棄にあたるのか、刑事事件になった場合の今後の展開や取るべき対応、民事的な責任の追及を受けた際の対応などのアドバイスが得られます

    特に不法投棄に関する問題は、自治体が定めているルールや一般的なマナーに反するだけなのか、それとも廃棄物処理法違反にあたるのかの判断が難しいので、法律を正しく理解している弁護士のアドバイスは重要です。

  2. (2)不法投棄した場所の管理者と示談交渉を進める

    刑事事件に発展する事態を避けるには、不法投棄を指摘された時点で直ちにその場所の管理者に謝罪したうえで、処分にかかる費用や精神的苦痛などに対する賠償を尽くすための示談交渉を進める姿勢が大切です。

    管理者との示談が成立すれば、警察への被害申告を防いだり、すでに申告済みでも「当事者間で和解して解決した」として処分なしの判断となったりといった展開が期待できます。

    弁護士に相談すれば、管理者との示談交渉を全面的に任せることが可能です。不法投棄を受けて怒りに満ちた管理者と冷静な交渉を進めるのは容易ではありませんが、第三者である弁護士に対応を任せれば穏便かつ安全に交渉を進められる可能性が高まるでしょう。

  3. (3)逮捕や厳しい刑罰を避けるための弁護活動を依頼する

    たとえ段ボールでも、法律の定めに反する方法で処分すれば不法投棄です。状況次第では警察に逮捕されてしまったり、刑事裁判で有罪判決を受けて厳しい刑罰を科せられたりするかもしれません。

    逮捕や刑罰を避けるためにも、弁護士の助けが必要です。弁護士に依頼すれば、逮捕を避けるための示談交渉や警察への任意出頭の同行、起訴を避けるための検察官へのはたらきかけ、刑事裁判における弁護活動などのサポートが期待できます

5、まとめ

宅配された荷物や引っ越しなどの荷造りで使われた段ボールは、家庭ごみとして排出するためのルールが意外と細かく、処分に困ることも少なくありません。とはいえ、法律の定めに反する方法で処分すると廃棄物処理法違反となり、逮捕や刑罰を受ける可能性もあるので、正しい方法で処分する必要があります。

段ボールの不法投棄で刑事責任や民事的な賠償を追及されてお困りなら、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスにご相談ください。不法投棄トラブルの解決実績を豊富にもつ弁護士が、管理者との示談交渉や捜査機関へのはたらきかけなどを通じて、穏便な解決を目指し全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています