参考人とは何か│警察での取り調べ・一連の流れも解説
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参考人とは、事件の目撃者や被疑者の知人など、刑事事件について参考となる情報や専門知識を有している第三者を指します。事件当時に現場付近にいたり、何らかの事情を知っていたりした場合、警察から出頭を求められ、参考人として事情を聞かれる(取り調べを受ける)ことがあります。
また、参考人と似た言葉で「重要参考人」や「被疑者」という言葉が刑事事件で使われることがあります。一般には耳なじみのない言葉ですが、「参考人」として呼び出された場合は、これらとの違いなども含めて理解し、対応することが大切です。
今回は、参考人とはどのような立場の人か、警察での取り調べはどのような流れで進むのかなどについて、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。
1、参考人とは
参考人とは、前述の通り、事件について参考になる情報や専門的知識を有している第三者のことをいいます。たとえば、事件の目撃者、犯人の家族や友人などの関係人、専門家や鑑定人などが参考人にあたります。
刑事訴訟法223条では、犯罪の捜査の必要があるときは、被疑者以外の人に対して出頭を求め、取り調べることができる旨規定しています。そのため、条件に該当すれば、参考人として警察から取り調べのための出頭を求められることがあります。
ただし、参考人の取り調べは、あくまでも任意で行われるものですので、出頭を拒否したとしても、逮捕されるということはありません。
取り調べに応じた場合には、参考人の供述は、供述調書にまとめられ、後日の裁判に証拠として提出されることがあります。警察は、犯人の検挙に向けて必要な情報を得るために参考人の取り調べを行いますので、参考人として出頭を求められた場合には、可能な範囲で協力しましょう。
2、重要参考人・被疑者との違い
参考人と似た言葉に「重要参考人」、「被疑者」というものがあります。これらは、参考人とどのような違いがあるのでしょうか。
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(1)重要参考人とは
重要参考人とは、現在は参考人の立場だが、犯罪の嫌疑があるかもしれない人のことをいいます。現時点では、被疑者ではなく第三者として取り調べに呼ばれているものの、実際は被疑者である可能性もあると見られている人のことです。
一般に参考人は被疑者以外の第三者を指しますが、重要参考人は被疑者になり得る人を指しますので、その点で両者は異なってきます。
重要参考人は、あくまでも「参考人」という立場になりますので、警察から取り調べの出頭を求められたとしても、呼び出しに応じる義務はありません。
ただし、捜査が進むことによって、重要参考人が被疑者になる可能性もあります。そのため、正当な理由なく参考人としての出頭を拒み続けていると、その後の捜査で被疑者と判断された際に、捜査に協力せずに逃亡または証拠隠滅に及ぶおそれがあるとみなされて逮捕されるリスクがあります。 -
(2)被疑者とは
被疑者とは、捜査機関から犯罪の嫌疑をかけられている人を指します。被疑者が検察官によって起訴されると呼び方が「被疑者」から「被告人」に変わりますので、「被疑者」は、起訴前の捜査段階での呼び方ということになります。
参考人は、被疑者以外の第三者を指しますので、被疑者とは明確に区分される用語です。他方、重要参考人と被疑者は似た立場にはなりますが、重要参考人は現時点では参考人になるのか被疑者になるのかが明らかではなく、捜査によって嫌疑が明確になった段階で、重要参考人から被疑者になると考えればよいでしょう。
なお、被疑者は、捜査機関から犯罪の嫌疑をかけられていますので、状況次第では、逮捕や勾留によって身柄拘束を受ける可能性もあります。逮捕・勾留をされてしまうと、最大で23日間にわたり身柄拘束を受けることもあります。
3、警察での取り調べの流れ
警察での取り調べは、以下のような流れで進みます。
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(1)黙秘権の告知
被疑者が警察署で取り調べを受ける際には、まずは、警察官から黙秘権についての告知がなされます(刑事訴訟法198条2項)。黙秘権は憲法で認められている権利であり、話したくないことは話さなくてもよく、話さないことによって不利益を受けないという権利です。
黙秘権は、捜査機関から自白を強要されないようにするための権利ですので、黙秘権の告知がなされていない状況で被疑者が自白したとしても、自由な意思での自白ではないとの疑いが生じ、刑事裁判での証拠能力が否定される可能性があります。
黙秘権は、被疑者や被告人に対して認められている権利ですので、嫌疑をかけられている当事者ではない参考人や重要参考人には認められていません。参考人として取り調べを受ける際には黙秘権の告知はなされませんので、覚えておくとよいでしょう。
もっとも、参考人や重要参考人への警察の取り調べは任意のものですので、話したくないことについては、答える義務はありません。 -
(2)取り調べの実施
警察での取り調べは、通常、警察署内の取調室というところで行われます。机を挟んで被疑者の対面に取り調べを担当する警察官が座り、被疑者の身上・経歴や事件に関する事情を質問していきます。
被疑者が警察官からの質問に答えるという形で取り調べが進んでいきますが、答えたくない質問については、黙秘権を行使することで回答を拒絶することもできます。
取り調べに要する時間については、事件の種類や内容によって異なり、被疑者が黙秘・否認している事件では、取り調べ時間も長くなる傾向にあります。ただし、長時間の取り調べは、不当な自白を強要するおそれがあることから、実務上は、1日8時間以内で、午前5時から午後10時までとされています。
また、取り調べが長時間に及ぶ場合には、適宜、食事や用便のための休憩が設けられます。 -
(3)供述調書の作成・署名押印
取り調べによって一通りの事情聴取が済んだ段階で、供述内容をまとめた供述調書が作成されます。
供述調書の文章が作成されると、まず警察官によってその内容が読み上げられ、供述者が、内容が正確であることを確認したうえで供述調書の末尾に署名押印をすることにより供述調書が完成します。完成した供述調書は、後日の裁判での証拠として利用されることがあります。
なお、供述調書末尾への署名押印は義務ではないため、拒絶することもできます。
供述調書は取り調べで被疑者が話した内容を取調官がまとめたものになりますが、被疑者の供述した内容が一言一句正確に記載されているというわけではありません。あくまでも捜査機関の視点で考えるストーリーとしてまとめられますので、被疑者の供述内容とは若干ニュアンスが異なることもあります。
自身の供述内容と異なる内容の供述調書がとられてしまうと、後日の裁判で不利な証拠になるおそれもありますので、供述調書に署名押印する際には、内容の正確性をしっかりと確認することが大切です。少しでもニュアンスが異なるところがあれば、必ず修正してもらうようにし、不正確な内容の供述調書には決して署名押印をしないことが重要です。
4、弁護士ができること
警察による取り調べを受けることになってしまった方は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)取り調べに対するアドバイス
警察による取り調べは、多くの方が初めての経験といえます。そのため、突然、取り調べに出頭を求められても、どのように対応すればよいかわからないことも多いでしょう。
このような場合には、まずは弁護士にご相談ください。刑事事件に関して経験豊富な弁護士が、取り調べの流れや注意点などについてアドバイスをすることができますので、初めての取り調べでも安心して臨むことができるでしょう。
なお、罪を認めているという方であっても弁護士への相談は有効です。警察で作成される供述調書は、被疑者の供述内容を一言一句正確に記載したものではありませんので、ニュアンスの違いによって、後の裁判で不利な扱いを受けるリスクがあるからです。弁護士からのアドバイスによって、被疑者の供述を正確に調書に反映させることが期待できます。 -
(2)被害者との間の示談交渉
被疑者として捜査機関から犯罪の嫌疑をかけられた場合、事実そのような犯罪行為をしてしまっているのであれば、被害者との間で早期に示談を成立させることが重要です。
被害者との示談の有無は検察官が起訴または不起訴を判断する際の重要な考慮要素となりますし、刑事裁判になった場合でも、示談が成立していれば有利な情状として考慮してもらえる可能性が高くなります。
被害者との示談交渉は、被疑者本人や家族等から連絡すると感情面で被害者から拒絶されてしまうおそれもあるため、弁護士に依頼することがおすすめです。
弁護士が窓口となって交渉をすることで、相手方の警戒心を解き、示談交渉がスムーズに進む可能性が高くなります。早期に示談交渉をまとめるためにも、早めに弁護士に相談するようにしましょう。 -
(3)早期の身柄解放や不起訴処分に向けた弁護活動
捜査機関によって逮捕・勾留されてしまうと、長期間の身柄拘束を受けるおそれがあります。身柄拘束中は自由に警察署から出ることはできませんので、日常生活に多大な支障が生じてしまいます。
しかし、このような身柄拘束を受けてしまった場合でも、準抗告などの手段によって、早期の身柄解放が認められる可能性があります。
また、捜査段階から被疑者に有利な証拠を収集し、検察官に働きかけることで不起訴処分を獲得できる可能性が高まります。
長期間の身体拘束がされるかどうかや、前科が付くかどうかにより、その後の人生が大きく変わることもあります。状況に応じて適切な対応をするためには、まずは弁護士にご相談ください。
5、まとめ
参考人として警察から呼び出しを受けた場合には、事件に関する情報を求める目的での取り調べになりますので、犯人と疑われているわけではありません。
しかし、重要参考人や被疑者としての取り調べは、捜査機関から犯罪の嫌疑をかけられている状態、または今後嫌疑をかけられる可能性が高い状態であるため、誤った内容の供述調書を作られ不当に重い処分を受けてしまうことがないよう、取り調べに対して適切に対応する必要があります。そのためには、刑事事件に関する経験豊富な弁護士のサポートが不可欠です。
捜査機関から犯罪の嫌疑をかけられているという方は、お早めにベリーベスト法律事務所 姫路オフィスまでご相談ください。
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