追起訴とは? 再逮捕や追送致との違いは? その後の流れとともに解説
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- 追起訴とは
法務省が公表している検察統計によると、令和2年に日本国内で起訴された事件の数は、10万6590件でした。そのうち、神戸地検で起訴された事件の数は、5600件であり、大坂高検管内では大阪地検に次いで2番目に多い数字となっています。
余罪がある場合には、すでに起訴された事件とは別の事件で追起訴がされることがあります。追起訴された場合には、通常の刑事事件と比べてどのような影響があるのでしょうか。また、追起訴された場合にはどのような流れで刑事手続きが進んでいくのでしょうか。
今回は、追起訴の概要とその流れなどについて、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。
1、追起訴(ついきそ)とは
追起訴とはどのようなことをいうのでしょうか。また、追起訴された場合には、刑事手続きにおいてどのような影響が生じるのでしょうか。
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(1)追起訴の概要
追起訴とは、ある被告人に対して刑事裁判が行われている場合において、同じ被告人が犯した別の刑事事件を同じ裁判所に起訴することをいいます。
当初の刑事事件の取り調べをしている際に余罪があることが判明した場合には、それも含めて捜査を進めて同時に起訴をすることがあります。
しかし、被疑者の身柄拘束期間には法律上厳格な定めがあることから、限られた時間の中では余罪取調べが終わらず、余罪について起訴するかどうかの判断ができない場合があります。
その場合には、当初の刑事事件については、先に起訴して、余罪については必要な捜査を終えてから追加で起訴するということが行われます。これが「追起訴」というものです。
別々の機会に刑事裁判をするよりも、追起訴によって同時に併合審理した方が被告人の負担も少ないことから、被告人に余罪がある場合には、追起訴という方法がとられることが多いです。 -
(2)追起訴された場合の影響
余罪が追起訴されることによって、以下のような影響が生じます。
① 判決までの期間が長くなる
当初の刑事事件を起訴した際に、追起訴を予定している場合には、検察官から裁判所や弁護人に対して、その旨が明らかにされることが多いです。
裁判所としても別々に審理するよりも同じ被告人であれば併合して審理した方が二度手間にならないため、追起訴が予定されている場合には、検察官による追起訴を待ってから第2回目以降の被告事件についての公判期日を設定することがあります。
そのため、追起訴の事件は、通常の刑事事件に比べて長めに期日が設定されることが多くなり、その分判決までの期間が長くなります。
② 保釈金が高額になる
保釈とは、保釈保証金の納付を条件として、勾留されている被告人を釈放する手続きのことをいいます。保釈は、起訴された後に認められる制度ですので、起訴前は保釈によって釈放してもらうことはできません。
保釈保証金の金額は、事件ごとに判断されることになりますので、追起訴された場合には、1つの事件での保釈保証金に比べて高額になる可能性が高くなります。
③ 保釈の時期が遅れる
最初に起訴された事件について、保釈の請求をしてそれが認められたとしても、余罪について再逮捕されてしまえば、再び留置施設で身柄拘束を受けることになります。
保釈は事件ごとに判断されますので、A罪で保釈が認められたとしても、余罪であるB罪での身柄拘束には保釈の効力は及びません。
そのため、追起訴が予定されている場合、余罪がすべて起訴されるまでの間は保釈が認められにくくなります。結果、保釈の時期が遅れてしまうというデメリットがあります。
2、追起訴と再逮捕、追送致
追起訴と混同しやすいものとして、「再逮捕」と「追送致」というものがあります。追起訴とはどのような違いがあるのでしょうか。以下で説明します。
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(1)再逮捕とは
再逮捕とは、すでに逮捕・勾留されている被疑者が釈放された後、別の犯罪事実によって再度逮捕されることをいいます。
たとえば、A罪で逮捕・勾留されている被疑者について、勾留期間中に起訴するかどうかの判断ができない場合には、処分保留により釈放されますが、B罪を犯した疑いがある場合には、今度はB罪で逮捕されるというケースです。
これに対して、A罪で逮捕・勾留された被疑者を釈放後、再びA罪で逮捕することは、原則として認められていません。これが認められてしまうと、逮捕・勾留について、厳格な期間制限を設けている法律の趣旨が没却されてしまうからです。
再逮捕と追起訴は、どちらも当初の刑事事件とは別の事件を対象にしているという点で共通します。しかし、再逮捕は被疑者の身柄拘束をするための手段であるのに対して、追起訴は裁判所に対して審理を求める手段であるという違いがあります。 -
(2)追送致とは
追送致とは、すでに検察官に送致した事件以外に余罪が判明した場合に、追加で事件を検察官に送致することをいいます。再逮捕や追起訴と同様に、当初の刑事事件とは別の事件を対象にしてなされるという点では共通しています。
しかし、追送致の場合には、被疑者の再逮捕という手続きを伴いませんので、捜査資料だけを検察官に引き継ぐだけで足ります。そのため、追送致された刑事事件に関しては、身柄拘束に関する厳格な時間制限は適用されることはありません。
3、追起訴の流れ
追起訴は、以下のような流れで行われます。
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(1)A罪での起訴
追起訴は、すでに被告人が別の刑事事件で起訴されていることが前提となります。そのため、当初起訴された罪を「A罪」とします。
被告人がA罪で起訴された場合には、以下のような流れでA罪の刑事裁判が進んでいきます。① 冒頭手続き - 人定質問
- 起訴状の朗読
- 黙秘権の告知
- 罪状認否の確認
② 証拠調べ手続き - 検察官側の立証活動
- 弁護人側の立証活動
③ 弁論手続き - 検察官側の論告・求刑
- 弁護人側の弁論
- 被告人の最終意見陳述
④ 結審 ⑤ 判決
もっとも、追起訴が予定されている場合には、第1回公判期日において冒頭手続きと証拠調べが終わったとしても、直ちに弁論手続に入るのではなく、追起訴を待ってからそれ以降の手続きを行うのが通常です。
そのため、第1回公判期日では、証拠調べ手続きまでで終了し、裁判官は、検察官に追起訴予定の時期を確認した上で、第2回の公判期日の日程を決めます。 -
(2)B罪での追起訴
第2回の公判期日前までに検察官がB罪での追起訴を行います。すべての余罪が追起訴された場合には、保釈請求が認められやすくなりますので、被告人が身柄拘束されている場合には、この段階で保釈請求をしていくことになります。
第2回公判期日では、B罪について冒頭手続きと証拠調べ手続きが行われます。そして、A罪とB罪の双方について弁論手続が行われ、結審の上、判決が言い渡されることになります。
判決は、A罪とB罪のそれぞれについて言い渡されるわけではなく、A罪とB罪をまとめて1つのものとして刑罰が言い渡されます。
4、追起訴で弁護士ができること
追起訴された場合には、弁護士が以下のようなサポートを行うことができます。
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(1)保釈の請求
被告人が身柄拘束されている場合には、早期の釈放を目指して裁判所に対して保釈請求を行います。
追起訴が予定されている場合には、保釈請求をする時期が遅れてしまいますが、検察官からの追起訴があり次第すぐに保釈請求をすることができるよう、身元引受人や保釈保証金の準備を進めていきます。
追起訴がされた場合には、通常の刑事事件に比べて保釈保証金が高額になる傾向にありますが、裁判官に対して保釈保証金が高額にならないように交渉することで適切な範囲内に収めることができる場合もあります。
また早期に保釈請求を行うためには、検察官に対して迅速な捜査と追起訴をするよう申し入れる、場合によっては追起訴しないように申し入れをすることも考えられます。 -
(2)被害者との示談
追起訴された事件について、被害者がいる場合には、被害者との間で示談を進めていきます。当初起訴された刑事事件についてだけ示談を成立させただけでは、有利な情状としては不十分です。
追起訴された余罪についても示談を成立させることができれば、量刑を判断するにあたって非常に有利な情状となりますので、積極的に行っていく必要があります。
追起訴された事件については、結審までに被害者との間で示談をまとめなければなりませんので、通常の刑事事件に比べてスケジュールに余裕がありません。早期に示談を成立させるためには、刑事事件の経験豊富な弁護士に依頼をすることが大切です。 -
(3)追起訴されないための弁護活動
捜査段階で余罪が判明した場合、追起訴を回避するためには、弁護活動を行う必要があります。
1つの刑事事件で起訴された場合に比べて、複数の刑事事件で起訴された場合の方が情状面では不利になりますので、より重い刑が言い渡される可能性が高くなります。少しでも有利な判決を獲得するためには、追起訴を避けるということが重要となります。
追起訴をさけるためには、捜査段階で被害者と接触して、早期に示談交渉を始める必要があります。被疑者本人では被害者と接触して示談交渉をすることは難しいといえますので、スムーズに示談を成立させるためにも弁護士のサポートは不可欠です。
5、まとめ
すでに起訴されている事件以外にも余罪があるという場合には、検察官によって追起訴がされる可能性があります。追起訴が予定されている場合には、適切な弁護活動を行うことによって、有利な処分を獲得することができる場合もあります。そのためには、早期に弁護士に相談をすることが大切です。
刑事事件で逮捕されてしまったという場合には、お早めにベリーベスト法律事務所 姫路オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています