旅行先から持ち帰った物が理由で逮捕? 密輸にあたる物品や適用される法律は?
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令和元年10月、必要な検疫を受けていない動物の肉を密輸した容疑で、大阪府警が姫路市在住の男ら3名を逮捕したという報道がありました。海外には日本では入手しづらい物がたくさんあります。しかし、海外から日本に物品を持ち帰る際は注意が必要です。なぜなら、禁止されている物を持ち込んでしまうと、密輸として罰せられてしまうおそれがあるからです。
知っていても知らなくても、物品の内容によっては、逮捕されてしまう可能性が十分に考えられます。そこで今回の記事では、輸出入で禁止されている物品の種類や、適用される法律について、姫路オフィスの弁護士が解説します。もしもご自身やご家族が姫路で密輸容疑をかけられてしまった場合は、参考にしてください。
1、密輸はどのような犯罪か
海外旅行に行った際は、お土産を購入するという方がほとんどではないでしょうか。しかし、知らず知らずに輸入禁止の物を持ち帰ってしまう危険性があり、注意が必要です。まずは密輸の概要について摘発事例を交えて解説します。
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(1)密輸とは
密輸とは、正式な手続きを踏まずに、物の輸出入を行うことです。密輸については、関税法や輸出貿易管理令などで取り締まりの規定が設けられています。また条例によっても密輸は禁止されています。これらに違反すると懲役や罰金などの罰を科されることがあります。
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(2)密輸してはいけない物
禁止されている物を持ち帰るとことは禁止されているというのは多くの方が理解しているはずです。それでは実際のところ、密輸してはいけない物とはどのような物なのでしょうか。
当然ながら、コカインや大麻、覚せい剤などの薬物は禁止されています。また、拳銃などの武器の輸出入もしてはいけません。それから、ワシントン条約によって絶滅危惧種に指定されている動植物も対象です。そのほか、偽札や偽造クレジットカード、ポルノ関連の雑誌なども禁止されています。 -
(3)過去の摘発事例
密輸が禁止されているにもかかわらず輸出入を行うと、摘発されて罰せられます。財務省が公表している「税関における関税法違反事件の取り締まり状況」によると、平成30年の違法薬物全体の摘発数が886件と前年比13%増となっています。摘発件数と薬物押収量については過去3番目に多い数字となっているため、薬物の密輸問題が深刻な状況であることがわかります。
同年では、商標権を侵害する物品についての密輸、ワシントン条約に規定されている動植物を不法に密輸することなども摘発されています。このように、薬物から動植物まで多くの種類が不正に持ち込まれようとしています。
2、密輸によって抵触する法律
密輸によって物品の持ち込みを行うと、法律違反となって罰せられます。実際のところ、輸出入のどのような法律に抵触し、罰せられてしまうのでしょうか。
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(1)関税法
関税法とは、税関の手続きの内容が定められている法律です。ここでは輸入してはならない物が明確に定められており、薬物や拳銃などの武器類、偽造貨幣や公序良俗に反する物などが禁止されています。関税法に違反して輸入が禁止されている物品を輸入してしまうと、10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金、または両方が科せられることがあります。持ち込みが達成されない状態、つまり未遂の場合でも同罪とされて同じように処罰されます。
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(2)外国為替および外国貿易法
外国為替および外国貿易法とは、日本と海外諸国との対外取引が正常に行われるように定められた法律です。物品やサービス、資金などの取引の管理を主としていますが、輸入に関しても規定されています。たとえば、水産物の多くは非自由化品目として輸入の際に一定の制限を受けることになります。
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(3)その他触れる可能性がある法律
上記法令以外でも、密輸行為を禁じている法律は複数存在します。たとえば、冒頭で紹介した事件では、「家畜伝染病予防法」違反容疑で逮捕されています。そのほかにも、覚せい剤を密輸した場合は覚せい剤取締法、金を密輸した場合は、消費税法違反として取り締まりを受けることになります。
3、密輸容疑で逮捕されたあとの流れ
税関で密輸の疑いがかけられると、逮捕されて取り調べを受けることになります。密輸によって逮捕されたあとの、手続きの流れを解説します。
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(1)逮捕と取り調べ
税関で摘発され逮捕されると、警察施設に身柄を移されて取り調べを受けます。この間は自由に生活を送れず、一定の制限がかけられ、自分の判断で外出することもできません。取り調べ期間中は、たとえ家族であっても原則として面会することはできません。
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(2)釈放か送致
警察は、被疑者を逮捕してから48時間以内に釈放するか送致するかの判断を行う必要があります。警察は限られた時間内で事件の真相を明らかにしなくてはならないため、厳しい取り調べがなされることもあります。
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(3)検察による捜査と起訴
送致されると次に検察から捜査を受けます。検察は24時間以内に、起訴または不起訴の処分を下す必要があります。しかし、24時間というのは非常に限られた時間であるため、検察が捜査にさらに時間を費やす必要があると判断すると、裁判所に勾留請求を行い、最長20日の身柄拘束が続きます。
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(4)刑事裁判
起訴処分になると刑事裁判が開かれます。検察は裁判にあたって確固たる証拠を集めてくるため、裁判が起きてしまうと無罪となる可能性が非常に低くなります。統計によると、起訴された事件の99%が有罪となっています。つまり、起訴されれば前科が付く可能性が非常に高いということです。
4、弁護士を依頼したほうがよい理由
もしも密輸行為をしてしまったら、一刻も早く弁護士に相談することをおすすめします。密輸は重い刑罰規定があるため、裁判になる前に対策を講じなければ、重い罪に問われてしまう可能性があるでしょう。
密輸による逮捕をされたとき、いち早く弁護士を依頼したほうがよい理由を解説します。
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(1)逮捕後のサポート
逮捕されてしまうと、逮捕後の流れが全くわからず動揺し、精神的負担が大きくなることが予想されます。しかし、弁護士に相談することで、取り調べの受け方や今後の流れなどのアドバイスを受けられるため、精神的負担の軽減を期待できます。
なお、逮捕から勾留の有無が決定されるという意味において、非常に重要といえる最長72時間のあいだは、弁護士以外の者との接見が制限されます。しかも、国選弁護人は勾留が決定されなければ委任することはできません。勾留前に直接話をしてアドバイスを受けたり、勾留が決まる前に弁護活動を始めたりするためには、早期の弁護士への依頼が必要不可欠となるでしょう。 -
(2)不起訴や減刑処分を獲得
被疑者にとって重要なのは、重い処罰を受けないようにすることです。何もせずに起訴され、裁判に発展すれば、無罪判決を得るのは非常に困難でしょう。そのため、逮捕後は速やかに弁護士に相談してください。
刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士であれば、不起訴処分や早期釈放、また、裁判になってしまったときにも減刑を目指し、状況に適した弁護活動を行います。
5、まとめ
法律上、日本に持ち込むことが禁止されている物品は多数あり、また輸出入を取り締まる法律自体も複数あります。海外の物品を持ち込む際は法律を確認し、違法行為とならないように注意が必要です。
しかし、つい知らずに禁止されている物を持ち込んでしまい、逮捕されてしまうというケースも考えられます。そのようなときは、まずは弁護士にご相談ください。弁護士を依頼することで、長期にわたる身柄拘束や起訴、重すぎる処罰の回避を目指した弁護活動を行います。
密輸容疑で逮捕されてしまった、逮捕されてしまう可能性があるときは、ベリーベスト法律事務所まで相談してください。姫路オフィスの弁護士が事件の早期解決に向けて徹底的にサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています