香典は相続財産に含まれる? トラブルになる前に知っておくべきこと

2021年07月29日
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香典は相続財産に含まれる? トラブルになる前に知っておくべきこと

裁判所の司法統計によると、令和元年度には、兵庫県姫路市を管轄とする神戸家庭裁判所において557件の遺産分割事件が取り扱われています。

遺産トラブルは、「どこまでが相続財産に含まれるのか」をめぐって生じることがあります。たとえば通夜や葬儀の際に故人と縁のあった方から贈られる「香典」は、相続財産に含まれるのでしょうか?

本コラムでは、香典の相続における取り扱いについて、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。

1、香典は相続財産に含まれる?

相続財産にはどのようなものが含まれるのでしょうか。さらに香典は相続財産として扱われるのかどうかについて、解説します。

  1. (1)相続財産に含まれるものとは

    相続財産(遺産)とは、被相続人が死亡時に残した財産のうち、相続人や受遺者が相続または遺贈によって取得する財産をいいます。

    相続財産には、現金や預貯金、不動産、有価証券、車などをはじめとするプラスの財産はもちろん、借金などのマイナスの財産も相続財産に含まれます。

    では、被相続人の葬式にかかる費用については、相続財産に含まれるのかどうかご存じでしょうか。結論としては、葬式費用は、被相続人の相続財産には含まれないとされます。なぜなら葬式費用は、被相続人の死後に発生する費用であり、被相続人の死亡時の財産とはいえないためです。

    一般的に、葬式費用は、葬儀の主宰者である喪主が通常負担するものとして扱われます。もっとも実際には、遺産のなかから支出したり、相続人同士で話し合って皆で負担し合ったりするケースもよく見られます。

    そして税法上も、「被相続人の死亡に伴う必然的出費であり、社会通念上も相続財産そのものが担っている負担ともいえることを考慮」して、相続税の対象となる財産から葬式費用を債務控除することができる取り扱いになっています

  2. (2)香典は相続財産ではない

    香典は、亡くなった方をいたみ、遺族への気持ちを表すものです。それと同時に、葬儀のために金銭的な負担をした人に対して、その負担を少しでも軽くするように贈るものでもあります。

    そのため葬式費用を負担するのは喪主が通常であることから、香典は、香典を包む側から喪主に対してなされる金銭の「贈与」として扱われますつまり喪主が取得するため、被相続人の財産にはならず相続財産には含まれません

    実際に、香典は、会葬御礼や香典返しなどを含めた葬儀費用の一部にあてられることが多いものです。もっとも生前交友関係が広かった方や社会的な地位のある方が亡くなったときには、香典の総額が多額になるため、葬儀費用にあてても余ることがあるかもしれなせん。

    そのような場合でも、余った香典も相続財産にはならず、法律上は喪主のものとされます。そのため相続人全員に分配することが求められるわけではありません。

2、香典に税金はかかる?

税金面では、香典は、どのような取り扱いがなされるのでしょうか。

  1. (1)香典には原則として税金はかからない

    香典は、被相続人に対して支払われるものであり相続財産に含まれないため、相続税の課税対象にはなりません。

    法律上は喪主への贈与に該当しますが、「社会的な相互扶助あるいは儀礼的な性格のものである」という性質上、原則として贈与税は課税されません。また所得税についても、「葬祭料、香典または災害等の見舞金で、その金額が社会通念上相当と認められるもの」については課税されないこととされています。

    したがって香典には、基本的に税金はかかりません

  2. (2)高額な場合には例外的に税金がかかる

    香典は基本的に課税対象になりませんが、どんな場合でも課税されないということではありません。高額な香典を受け取った場合には、例外的に課税対象になる可能性もあるので注意が必要です

    もしどんな場合でも課税されないとなれば、香典という名目にすれば、いくら包んで渡しても税金がかからず贈与できてしまいます。したがって、たとえば1人の参列者から常識的に考えてあまりにも多額な香典をもらったとすれば、喪主に多額の贈与があったと同じように考えて贈与税の対象になりえます。

    また、社会的な地位があった方などが亡くなれば社葬が行われることがあります社葬では参列者が多く香典の総額が多額になるため、金額によっては課税対象になる可能性があります

3、弔慰金と相続財産の関係

香典と似たものとして、「弔慰金(ちょういきん)」があります。弔慰金と相続財産との関係についても確認しておきましょう。

  1. (1)弔慰金は相続財産ではない

    弔慰金は、公的機関や会社が、亡くなった方を弔い遺族をなぐさめるために贈るお金です。亡くなった方が勤務していた会社から遺族が弔慰金を受け取ることがありますが、香典と同様に、弔慰金は相続財産には含まれません。

    また税務上、基本的に、弔慰金については非課税とされていますただし過大な弔慰金を受け取った場合には、相続財産とみなされて相続税の課税対象になる可能性があるので注意が必要です

  2. (2)弔慰金には課税される可能性もある

    「弔慰金」という名目であっても、実質的に退職手当などに相当する金銭が支払われた場合には、相続税の課税対象になります

    具体的には、被相続人が業務上死亡した場合には、死亡時の給与の3年分を超える部分については退職手当金として相続税の課税対象になります。また被相続人の死亡が業務上によるものでなかった場合には、死亡時の給与の半年分を超える部分については退職金手当金として相続税の課税対象になります。

    つまり「弔慰金」という名目で、退職手当金も含んでいるような金額が贈られた場合には、相続税が課税される可能性があることになります。

4、香典など相続トラブルは弁護士に相談を

相続をめぐっては、香典に限らず、さまざまなトラブルが発生するものです。トラブルが発生した場合には、当事者だけで解決しようとせずに、深刻化する前に弁護士に相談したほうがよいでしょう。

弁護士に相談した場合には、主に次のようなメリットを得られる可能性があります。

  1. (1)弁護士に交渉を任せられる

    弁護士は、ご相談者の代理人としてトラブルの相手と交渉することができます。遺産分割協議などでは相続人同士の意見が対立して、トラブルになることが少なくありません。そういった場合でも、弁護士は、ご相談者に代わって他の相続人と話し合いを進めることができます。

    トラブルになっている相手と直接やり取りをすることは、大きな心理的な負担を伴います。弁護士に相談したときには交渉を任せられるので、負担を軽減できることもメリットになることでしょう。

  2. (2)調停や裁判にも安心してのぞめる

    当事者同士の話し合いがうまくいかず、家庭裁判所の調停や審判、裁判でトラブルを解決することになったときでも、弁護士に相談していれば安心してのぞむことができるでしょう

    弁護士は、裁判所に提出する書類の作成や手続きをサポートします。また、適切なタイミングで、裁判所に認められやすい的確な主張や立証を行うことが可能です。

    裁判所という普段なじみの薄い場所で慣れない手続きを進めることは、当事者にとっては不安なことも多いものです。しかし弁護士がいれば、細かな部分についても質問し、アドバイスやサポートを受けられるので、心強く感じることでしょう。

  3. (3)早期に希望に近い形で解決できる可能性が高まる

    トラブルの当事者同士で話し合いをしても感情的になり、解決に時間がかかったり関係が悪化し修復できなくなったりすることもあります。しかし弁護士に相談した場合には、冷静に客観的な立場で話し合いを進めることができるので、早期解決がのぞめます。

    また証拠や裁判になったときの見込みをもとに話し合いをするので、相手を説得することができ、ご相談者の希望に近い形で解決できる可能性が高くなります

5、まとめ

本コラムでは、香典の相続における取り扱いについて、解説していきました。香典として受け取ったお金は相続財産に含まれず、喪主への贈与として扱われます。基本的に税金はかかりませんが、高額な香典を受け取ったときには課税対象になる可能性もあるので注意が必要です。

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