離婚後の子どもの相続問題! 元妻の子と再婚相手の子の違いはあるのか

2020年07月29日
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離婚後の子どもの相続問題! 元妻の子と再婚相手の子の違いはあるのか

姫路市が公表している統計資料によると、姫路市を管轄する神戸家庭裁判所・姫路支部で取り扱われた相続関連の審判は2000件以上あることがわかっています。

相続は、離婚をしたケースでも問題となります。たとえば、妻が子どもを引き取るかたちで離婚をし(親権者は妻)、離婚後に夫が再婚した場合、妻が引き取った子どもとの相続関係はどうなるのか、ご存じでしょうか。また、元夫が再婚相手との間にも子どもが生まれた場合、元妻との間の子どもの相続権に何らかの変化はあるかなど、気になることはあるでしょう。

本コラムの主なテーマは、「離婚と子どもの相続」です。「元配偶者の子どもと再婚相手の子ども、それぞれの相続権に違いはあるのか?」、「離婚後の相続をめぐるトラブル」などについて、姫路オフィスの弁護士が解説します。

1、相続とは

「相続」とは、被相続人の死亡によって、被相続人に属していた財産(権利・義務)を、「一定の身分関係」にある相続人が包括的に受け継ぐことをいいます。相続財産には、借金などマイナスの財産も含まれます。

相続のルールに関しては民法で詳細に定められており、亡くなった方を「被相続人」と呼び、「一定の身分関係」にあることにより被相続人の権利・義務を引き継ぐ方を「相続人」と呼びます。

2、相続人の範囲・法定相続分

まず、被相続人の「配偶者」は、常に相続人となります(民法890条)。ここでいう配偶者には、内縁の配偶者は含まれません。
被相続人の子どもも相続人となります(民法887条1項)。なお、被相続人の子どもが、相続開始以前(被相続人死亡以前)に死亡したときなどは、その者の子どもが相続人となります(代襲相続、民法887条2項)。

また、被相続人の子どもが相続人とならず、代襲者も存在しない場合には、被相続人の直系尊属、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。この場合における相続人となる者の優先順位は、①被相続人の直系尊属(親等の異なる者の間では、その近い者を先にする)、②被相続人の兄弟姉妹です(民法889条1項)。なお、上記のように、被相続人の配偶者は、常に相続人となりますが、配偶者の相続の順位は、被相続人の子ども(代襲相続人を含む)や、被相続人の直系尊属、被相続人の兄弟姉妹と同じです(民法890条)。

そして、民法900条各号は、同順位の相続人が数人いる場合における法定相続分を定めています。たとえば、子どもおよび配偶者が相続人であるときは、子どもの相続分と配偶者の相続分は、各2分の1となります(民法900条1号)。なお、民法901条は、代襲相続人の法定相続分につき定めています。

3、離婚後も子どもには相続権が残る

上記のとおり、被相続人に子どもがいる場合、子どもは相続人となります。これは離婚後であっても変わりません。たとえ別れた配偶者が子どもを引き取ったとしても(子どもの親権を取得したとしても)、親権と相続権は関係なく、その子どもには相続権が残ります。

たとえば、「元夫との間に生まれた子ども(元妻が親権を持つ)」と「元夫の再婚相手との間に生まれた子ども」が1一人ずついる場合、この2人の子どもが持つ相続権は、その割合も含め同じなのです。

4、元妻や元夫に相続権はある?

離婚によって夫婦関係が消滅していますから、別れた妻や夫(元配偶者)に相続権はありません。

したがって、相続に関して、元配偶者との間で直接問題が起こるということはありません。考えられるのは、離婚後の子どもの相続権をめぐった問題となります。

5、離婚後、子どもの法定相続分は?

離婚後の子どもの法定相続分について解説します。

Aさんには元妻(Bさん)との間に子どもが 2人(C君とD君)、そして再婚相手(Eさん)との間にも子どもが1人(F君)いる……そんなケースを例にあげてみていきましょう。C君とD君は元妻が親権を取得したとします。

  1. (1)元妻の子どもと、再婚相手の子どもの法定相続分は同じ

    Aさんが亡くなった場合のそれぞれの法定相続分として、まず、今の配偶者であるEさんの法定相続分は2分の1です。そして、C君、D君、F君で残った2分の1を均分します。つまり、C君、D君、F君の法定相続分は、6分の1(2分の1÷3人)ずつということです(民法890条、887条1項、900条1号)。元妻Bさんに法定相続分はありません。

  2. (2)再婚相手の連れ子は、法定相続人にはならない

    もし、F君がEさんの連れ子だった場合には話が変わってきます。

    Eさんは、Aさんとの婚姻によりAさんの法定相続人となりますが、F君に関しては、Aさんが養子縁組をしていなければ法定相続人にはなりません。養子縁組をする前にAさんが亡くなり、遺書などもなく相続が始まってしまうと、F君には相続権がないため、財産を受け継ぐことはできません。

    他方、F君がAさんの養子となった場合、養子は養親の嫡出子の身分を取得しますから(民法809条)、養子(F君)と実子(C君、D君)との間に法定相続分の差はなく、先ほどと同様に、C君・D君・F君で配偶者が相続する分を差し引いた2分の1を均分することになります。

6、離婚後、子どもの相続でよくあるトラブル

相続に元配偶者との子どもが関わることで、トラブルが起きることもあります。

  1. (1)後妻と前妻の子どもとで財産の取り合いになる

    たとえば、相続人が後妻と前妻の子どもの2人だけだった場合、その2人で財産の取り合いとなってしまうケースが考えられます。後妻にとって前妻の子どもは他人ですから、夫が残した財産を渡したくないと考えることがあるためです。

    このようなトラブルを被相続人となる者が未然に回避しようとするためには、遺言書の作成が有効でしょう。たとえば、遺言書で「前妻の子どもには“遺留分”のみを相続させる」旨を指定しておくなどすることでトラブルを回避できる可能性が高くなります。

    遺留分というのは、法定相続人(配偶者・子ども・直系尊属には遺留分がありますが、兄弟姉妹にはありません。民法1042条。)に法律上確保された最低限度の相続財産をいいます。

    被相続人の遺言書により、遺留分権利者の遺留分を侵害するような相続となる場合、「遺留分侵害額請求(これまで遺留分減殺請求と呼ばれていた手続き)」といって、遺留分が侵害されている額に相当する金銭の支払を請求することができます(民法1046条1項)。なお、遺留分権利者が「遺留分侵害額請求」をするかどうかは自由です。

  2. (2)元配偶者が借金を残して死亡

    こちらは、子どもを引き取った側の視点からのトラブルになります。

    夫と離婚し子どもと暮らしていたところ、ある日突然、離婚した夫の債権者から借金の督促が届くというケースです。元夫が死亡し、子どもが相続人となったことで起きた事態になります。

    このようなケースでは、「相続放棄」(民法915条)の手続きをするのが一般的ですが、この際、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いかを確認したうえで行うことが大切です(プラスの財産がマイナスの財産を上回る場合には、「限定承認」(民法922条)も検討することになるためです。もっとも、相続争いに巻き込まれたくないなどの理由から、子どもが(プラスの財産がある場合でも)相続を放棄したいと考えることもあるでしょう。)。

    相続放棄ができるのは、「相続があったことを知った日(被相続人が死亡したことを知った日)から3か月以内」です。ちなみに、被相続人の死亡前に相続を放棄することはできません。

7、離婚後の子どもの相続でトラブルを防ぐには?

いくつか離婚後の子どもの相続にまつわるトラブルをご紹介しましたが、トラブルを未然に防ぐためにはどうしたらよいのでしょうか?

この点、有効な方法として考えられるのは、やはり「遺言書」の作成です。

たとえば、「長く会っていない元妻との子どもよりも、再婚相手に財産を多く残したい」と、被相続人が考えた場合、遺言書にその旨を記載することができます。ただし、元妻との子どもには遺留分が認められており、その遺留分を侵害する遺言書の内容には異議が出る可能性があるので気をつけなければなりません。また、遺言書には、民法上、作成の方式が細かく定められているため、作成にあたっては注意が必要です。不安がある場合は、弁護士に確認しながら遺言書を作成することをおすすめします。

自筆証書遺言(自分で書いた遺言書)だけでなく、公正証書遺言(公証人役場で作成した遺言書)であっても、一度書いた内容を自ら変更することもできます。相続のことが気になり始めたなら、早い段階で遺言書作成について検討してみてはいかがでしょうか。

8、まとめ

夫婦が離婚をしても、子どもとの親子関係は続きます。その関係にはさまざまなかたちがあるかと思いますが、自分の死後、大切な人たちが相続をめぐって争うことは避けたいものです。

ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスでは、相続問題についての知見が豊富な弁護士がグループ法人に所属する税理士と連携し、遺言書作成などの生前対策、相続税計算まで、相続にまつわるあらゆるご相談・ご依頼にワンストップで対応しています。お気軽にお問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています