相続の順位や割合は? 財産を誰がいくら相続できるか気になる方へ
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姫路市が発表している統計資料によると、平成29年には、「遺産の分割に関する処分など」の区分で178件、「寄与分を定める処分」で6件の家事調停申し立てが受理されたことがわかっています。亡くなった方に残された財産や借金がある場合は、相続が発生します。場合によっては分割割合などでもめてしまうこともあるでしょう。その場合は、家庭裁判所で行われる調停を申し立てることになります。
もし身近で相続が発生した場合、民法に基づいて分割協議を進める必要があります。そこで今回は、遺産相続の順位や割合、相続する権利がある人についてベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。
1、相続順位の基本的な考え方
被相続人(亡くなった方)の財産を相続する権利がある方のことを「相続人」と言います。相続人には優先順位があり、順位に従って相続人が決定されます。まずは、相続順位の基本的な考え方を解説します。
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(1)相続順位の原則
民法では相続できる順位と範囲を次のように定めています。
•配偶者
配偶者が存在する場合は、民法上では配偶者が常に優先されます。ただし、原則的には法律上の婚姻関係でなければ配偶者とはみなされません。婚約者、離婚した妻などは配偶者にならないので注意が必要です。
•第1順位:子どもなどの直系卑属
直系卑属とは、自分自身の子どもや孫などの子孫のことを言います。子どもがいる場合は、子どもたち全員が対象です。戸籍上で親子関係があれば、長らく同居していない子どもも相続対象になります。
子どもが亡くなっている場合は、その子ども、つまり孫が相続対象です。これを代襲相続と言います。孫も亡くなっていればひ孫が相続します。子どもが3人いて1人だけ死亡している場合は、残された2人だけでなく、死亡した子どもの子どもにも相続権が発生します。
•第2順位:親などの直系尊属
直系尊属とは、親や祖父母などの先祖にあたります。親が死亡している場合は、祖父母が相続可能です。ただし、両親のどちらかが生きていれば祖父母は相続できません。
•第3順位:兄弟姉妹
子どもも両親も祖父母も他界している場合は、兄弟姉妹が相続します。兄弟姉妹も他界している場合は、その子どもたちである甥や姪が代襲相続します。甥や姪が死亡している場合は、その子どもたちには相続権はありません。
民法では相続順位はここまでしか規定されていないため、これらに該当する方がいなければ、親戚でも相続する権利はありません。ただし、特別縁故者と言って、被相続人に特別に貢献した方は、裁判所に申し出ることで、相続できる可能性はゼロではありません。特別縁故者もいなければ、財産は国のものになります。 -
(2)相続の順位が変更になる例外
相続の順位は原則として先ほどお話しした通りですが、以下の場合には相続順位が変更になります。
•相続欠格事由
被相続人や高順位者を殺害した場合や、殺害しようとした場合などは相続欠格事由と呼ばれ、相続する権利を失います。また、だましたり脅迫したりして、遺言書を書かせたり、撤回させたりした場合も相続できなくなります。また遺言書を偽造したり捨てたりしても、相続する権利を失う可能性があります。
•相続放棄
相続放棄とは、被相続人の財産を相続しないようにする手続きを指します。相続では、プラスの資産だけでなく借金のマイナス財産も相続しなければなりません。被相続人にマイナスの資産しかない場合は、相続放棄の手続きを行うことで、相続せずに済みます。
ただし、自分よりも上の順位の相続人が相続放棄をした場合は、下の順位の方が新たな相続人となります。マイナスの方が多いという理由で相続放棄をする場合は、可能な範囲で連絡をしておいた方がよいでしょう。
2、相続の割合はどうなっているのか
ここでは相続の具体的な割合を解説いたします。
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(1)法定相続分に従って分割する
相続の割合は、民法で明確に規定されています。法定相続人の順位に応じて割合が決まっています。それを法定相続分と言います。
•配偶者のみが相続する場合 ⇒ 配偶者がすべて
配偶者のみが相続人の場合は、配偶者がすべての財産を受け取ることができます。子どもがいない夫婦で、親も祖父母も死亡しており、それぞれ兄弟もいなければ配偶者のみが全額相続することになります。
•配偶者と子どもが相続する場合 ⇒ 配偶者1/2、子ども1/2
配偶者と子どもが全員健在の場合は、配偶者が2分の1を相続し、子どもたちが2分の1を子どもの人数で分割することになります。子どもが2人いる場合は、全遺産の4分の1ずつ受け取ることになります。
•配偶者と親が相続する場合 ⇒ 配偶者2/3、親1/3
子どもがいない場合は、配偶者と、被相続人の親が相続することになります。その場合は配偶者が3分の2、親が3分の1を受け取ります。
•配偶者と兄弟姉妹が相続する場合 ⇒ 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
子どももいなくて、親も祖父母も死亡している場合で、兄弟姉妹も相続人となる場合は配偶者が4分の3、兄弟姉妹は4分の1を相続できます。 -
(2)遺産分割協議で話し合いをする
法定相続分は民法で定められているものの、相続人同士で分割割合などを話し合い遺産分割協議によって全員が合意できれば、任意の割合で分割できます。法定相続分から大きく離れた割合で分割することも可能です。ただし、裁判などの法的措置に移行した場合は、法定相続分をベースに割合が検討されます。
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(3)遺言がもっとも優先される
法律的に有効な遺言があれば、遺言が優先されます。遺言があれば、本来相続する権利がない方にも相続させることが可能です。相続権がない内縁の妻や愛人、元配偶者なども、遺言で指定しておけば遺産を渡すことができます。
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(4)最低限の権利として遺留分がある
ただし、個々の法定相続人には最低限の権利として遺留分が設定されています。たとえ遺言によって法定相続人の相続が認められなかったとしても、最低限の「遺留分」を請求することがでるのです。
たとえば、配偶者がいるにもかかわらず「愛人だけに遺産を相続させる」という遺言があったとしても、「遺留分減殺請求」という手続きを行えば、配偶者や子どもは法定相続分の半分を請求する権利があります。ただし、直系尊属のみが相続人になる場合、請求できる割合は3分の1になります。遺留分減殺請求ができるのは、配偶者、子ども、孫、父母、祖父母のみです。兄弟姉妹には遺留分減殺請求を行う権利はありませんので注意しましょう。
遺留分は何もしなければ受け取ることができません。自分で内容証明郵便を送り、他の相続人と話し合いを行ってください。話し合いでまとまらなければ、調停や訴訟に移行します。遺留分減殺請求は、遺産相続があることを知ってから1年以内の行わなければ時効になってしまいます。
自分自身の遺留分を請求したい場合は、弁護士に相談して素早く内容証明郵便を送るなどの対策を行いましょう。迅速な対応が必要です。
3、相続の順位でよくある組み合わせ例
ここでは、相続人のよくある組み合わせ例と適切な対策を説明します。
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(1)妻と子ども3人
夫が亡くなり、妻と子どもが残されたというケースです。
•妻…配偶者は常に相続人となり1/2を相続します。
•子ども…残りの1/2を3人でわけますので、1/2×1/3=1/6ずつです。
この場合、被相続人(夫)に親がいても、親は相続人にはなりません。 -
(2)子ども2人(うち1人は死亡)
配偶者がいなければ子ども2人が相続人です。
子ども2人が健在なら1/2ずつ相続しますが、子どものうち1人が亡くなっており、孫がいる場合は代襲相続が起こります。
•子どもA(健在で娘がいる)子どもAが1/2相続し、孫にあたる娘は相続しません。
•子どもB(亡くなっているが息子がいる)…子どもBの相続分1/2分を孫にあたる息子が代襲相続します。 -
(3)夫と両親
子どものいない妻が亡くなり、夫と妻の親だけが残されるといったケースです。
子どもを持たない夫婦が増えている現代では、比較的よくあります。
•夫…2/3を相続します。
•両親…親一人あたり1/3×1/2=1/6ずつです。
両親が2人とも亡くなっていれば祖父母が相続します。しかし、両親のどちらかが健在であれば、親だけが1/3を相続します。 -
(4)相続問題は早めに弁護士へ相談を
法定相続分という基準はあるものの、家族の数だけパターンがあるといえるほど相続の割合は複雑でわかりにくいものです。遺言書の有無によっても展開が変わります。さらに、法定相続人なのに、遺言書によって相続割合の指定がされなかった場合は、遺留分減殺請求を行い、自分の最低限の受け取り分を確保する必要があるでしょう。
また、主に介護を担っていた、被相続人の事業を手伝っていたなどの場合は特別寄与分と呼ばれるプラスアルファの財産を受け取ることも可能です。受け取るべき遺産をきちんと受けるためには、弁護士に遺産分割協議を一任するのがベストでしょう。
4、まとめ
本コラムでは、財産の相続における法律上の順位や割合について紹介しました。
実際には各ご家庭で事情が大きく異なります。財産が単純に現金だけとも限らず、親族間のみで解決することはそう簡単なことではありません。不要な争いを避け、故人の意思の尊重と残された親族の生活を守るためにも、できるだけ早く弁護士などの専門家を頼るようにしましょう。
ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスに問題が複雑化する前にぜひご相談ください。相続問題に対応した実績が豊富な弁護士が、適切なアドバイスを行います。
ご注意ください
「遺留分減殺請求」は民法改正(2019年7月1日施行)により「遺留分侵害額請求」へ名称変更、および、制度内容も変更となりました。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています