交通事故のケガの治療で通院したら請求可能? 慰謝料について解説

2020年03月27日
  • 慰謝料・損害賠償
  • 交通事故
  • 慰謝料
  • 通院
交通事故のケガの治療で通院したら請求可能? 慰謝料について解説

兵庫県姫路警察署のホームページでは、姫路市内における交通事故発生状況の中で、国道2号、国道312号、国道372号、十二所前線など、事故多発10路線に絞った状況を公表しています。交通事故は姫路市民にとっても身近なトラブルのひとつといえるでしょう。

交通事故によるケガの治療で入院・通院することになった場合には、加害者へ「慰謝料」を請求できます。しかし、加害者側から支払われる慰謝料は、算出する基準によって金額が大幅に異なるといった問題があります。

本コラムでは、交通事故によるケガの治療で通院することになった場合に請求できる、いわゆる「慰謝料」についてベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説していきます。

1、交通事故でいう慰謝料とは

  1. (1)交通事故の慰謝料とは

    そもそも慰謝料とは、不法行為によって被った精神的苦痛に対して支払われる損害賠償のことをいいます(民法第709条、同第710条)。したがって、物が壊れたなど、実際の財産的影響が生じる損害については慰謝料と呼ぶことはありません。

    交通事故の被害に遭ったケースにおいても同様です。加害者側は、車の修理費用や病院の診察料金などの損害の賠償を行う義務があるだけでなく、ケガによる痛みや苦痛に対する賠償を行わなければなりません。

  2. (2)交通事故でケガをした場合の慰謝料は2種類ある

    交通事故で負傷した際の慰謝料としては、通院日数や期間に応じた「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」が、相手方保険会社から支払われることになるでしょう。人身事故というのは、ケガによる通院が必要となる事故のことですので、人身事故の場合には通常認められる慰謝料であるといえます。「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」は、交通事故によって受けた痛みや病院に入院・通院しなければならなくなったことで被る精神的苦痛に対して支払われるものです。

    また、これとは別に、「後遺障害慰謝料」と呼ばれる慰謝料があります。治療を続けたにもかかわらず後遺障害が残ってしまい後遺障害等級の認定を受けた場合に、その後遺障害によって生じる精神的苦痛に対して支払われるものです。

    後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害等級に応じて支払われることになります。なお「後遺障害慰謝料」は、「入通院慰謝料」に加えて請求することができます。

  3. (3)慰謝料以外に請求できる可能性があるものとは

    慰謝料は示談金のひとつの項目に過ぎず、交通事故に遭った場合には、他にもケースに応じて次のような費用を請求できる可能性があります。

    ●治療関係費
    治療費や入院費などをいいます。実際にかかった交通事故によるケガの治療費のうち、必要かつ相当と認められる範囲の費用を請求することができます。

    ●付添看護料
    入院や通院に関して付き添いが必要になった場合には、その症状や被害者の年齢等の事情に応じて付き添い看護に関する費用も一定額請求できることがあります。

    ●入院雑費
    入院中に必要になった日用品等に関する費用について、入院中に発生した雑費として一定額請求できます。

    ●通院交通費
    ケガの治療で通院することになった場合には、通院のために必要になった交通費を請求できます。

    ●休業損害
    ケガの症状や交通事故による入院・通院のために仕事を休まなければならなくなったことによって生じる損害です。本来なら働いて得られたであろう収入が減少した部分を休業損害として請求することができます。
    給与所得者(いわゆるサラリーマン)の場合には、勤務先の作成する「休業損害証明書」に基づいて金額が算出されます。

    ●逸失利益
    後遺障害が残った場合には、その障害により収入を得る能力が減少すると考えられるため、後遺障害がなかった場合に得られたであろう将来的な収入が減少した部分を逸失利益として請求することができます。

2、入院・通院した場合には慰謝料をもらえるの?

前述のとおり、交通事故被害によって入院・通院することになった場合には、「入通院慰謝料」を相手側に請求して支払ってもらうことができます。

「入通院慰謝料」の金額は、基本的に、医療機関による診断内容と、入院・通院の期間に応じて算出されます。すなわち、同じようなケガ、同じような入院・通院期間であれば、どんな方でも同じような入通院慰謝料が算出されます。そのため、たとえあなたが「私は~という事情から特別に精神的苦痛が大きかった」と主張したとしても、その基準を変えることは難しいでしょう。

なぜなら、交通事故は前述のとおり日々起きているうえ、同じような事故でほぼ同じケガをしているのにもかかわらず慰謝料額が大きく異なってしまえば、平等に解決しているとはいえなくなってしまうからです。そこで、実務的には、「医療機関による診断を受けたうえでの入院・通院をもとに算出する」という計算方法がとられています。

3、入通院慰謝料で知っておくべき3つの基準とは

入通院慰謝料を計算する基準は、3つあります。

  1. (1)自賠責保険基準(自賠責基準)

    自賠責基準とは、国の強制加入保険である自動車損害賠償責任保険(自賠責)に基づいて慰謝料の計算を行う際の基準です。

    自賠責保険は最低限度の補償をするための保険なので、慰謝料の金額はもっとも低額になります。自賠責基準による入通院慰謝料では、入通院1日4200円を基本として計算することになります。

  2. (2)任意保険基準

    任意保険基準とは、任意保険会社が独自で定めている基準です。原則としてその基準は公開されていませんが、ほとんどの任意保険会社は自賠責基準よりは多少高いものの裁判所基準よりもだいぶ低い基準を設定しているケースが一般的です。

    相手方保険会社から提示される慰謝料は、この任意保険基準か自賠責保険基準によって計算されています。

  3. (3)裁判所基準(弁護士基準)

    裁判所基準とは、過去の裁判例をもとにした基準です。

    裁判所基準による入通院慰謝料は、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準」(通称「赤い本」と呼ばれます)などに掲載されている基準表を用いて計算することになります。この他にも、「交通事故損害額算定基準」(通称、「青本」)など、地域によって複数の種類があります。
    しかし、いずれの裁判所基準を用いる場合でも、他の2つの基準で計算した金額より高額な慰謝料が算出されるのが通常です。自賠責保険基準で受け取れる入通院慰謝料の2倍以上になることもよくあります。

4、慰謝料の示談交渉はどのように進めればよい?

慰謝料の示談交渉において、個人が裁判所基準で交渉しようと思っても、相手方保険会社は裁判所基準での示談には通常は応じません。また、交通事故の損害賠償には、慰謝料だけでなく過失割合や後遺障害認定など多くの問題が存在し、一つひとつ対応していく必要があるので、納得できる示談にするためには多くの手間や時間、そして知識が求められます。

そのため、弁護士に依頼して相手方保険会社との示談交渉を任せることがスムーズに示談を進める重要なポイントになります。

5、弁護士に依頼するメリットとは

弁護士に依頼した場合には、次のようなメリットがあります。

  1. (1)裁判所基準の慰謝料が認められる可能性が高い

    これまでご説明したように、相手方保険会社は任意保険基準、もしくは自賠責保険基準に基づいて計算した慰謝料を提示します。弁護士に依頼した場合には、より高額の慰謝料を算出できる裁判所基準で交渉します。

    そのため、弁護士に依頼した場合には、裁判所基準やそれに近い額での慰謝料が認められる可能性が高くなります。

  2. (2)後遺障害等級認定に関するサポートを受けられる

    交通事故によるケガで通院している場合には、後遺障害が残ってしまう可能性も視野に入れておく方がよいこともあります。万が一、後遺障害が残ってしまったときには、適切な後遺障害等級認定を獲得して賠償額に反映させることが大切です。

    弁護士に依頼した場合には、弁護士は後遺障害の等級認定をサポートできます。相手側の保険会社が等級認定を行う際よりも、より詳細な材料をそろえて対応するため、適切な後遺障害等級認定を得られる可能性が高くなります。

  3. (3)賠償額を増額できる可能性が高い

    慰謝料のほかにも、上記のような示談金の項目となるさまざまな損害項目があります。これらの損害項目を算出する際にも、相手方保険会社と主張が分かれることも多いものです。

    弁護士に依頼した場合には、弁護士はご相談者の立場に立って相手方保険会社と交渉します。弁護士はご相談者が有利になるような根拠を示して保険会社と交渉することができるので、主張が認められる可能性が高くなります。

    また後遺障害等級認定に関するサポートなどで適切な認定を得ることによって、結果として賠償額を大幅に増額できる可能性が高くなります。

  4. (4)相手方保険会社との示談交渉から解放される

    交通事故によるケガの治療のために通院しながら日常の家事や仕事を行う中で、相手方保険会社とやり取りをすることは大きなご負担になることでしょう。

    弁護士に依頼した場合には、保険会社との示談交渉を弁護士に任せられるので、ご負担を軽減することができます。また主張を保険会社に伝える精神的なストレスからも解放されることになります。

6、気になる弁護士費用について

慰謝料に関する示談交渉を含めて弁護士に依頼する場合に、経済的なご負担の心配をされる方は多いものです。

しかし、ご自身やご家族が加入する保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士に依頼した場合の弁護士費用に関して、ご自身の負担部分は発生しないのが通常です。弁護士費用特約とは、主に損害保険に設定することができる特約で、最大300万円まで保険会社が弁護士費用などを負担してくれるサービスです。弁護士への相談を検討されている場合には、弁護士費用特約を利用できるかどうかを、ご自身やご家族の保険で確認してみることをおすすめします。

また弁護士費用特約がない場合でも、ベリーベスト法律事務所では相手側から支払われる示談金から弁護士費用をいただく形をとっているので、心配されることなくご相談いただけます。また、初回相談は無料となっていますので、弁護士費用に関するご不安も含めて、お気軽にご相談いただけます。

7、まとめ

本コラムでは、交通事故によってケガの治療で通院することになった場合に被害の内容に応じて受け取れる賠償金(慰謝料)について解説しました。

ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスでは、慰謝料を含めてご相談者が納得できる示談になるよう全力でサポートします。ぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています