残業代を請求したい! 必要な証拠と交渉の方法を弁護士が解説
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平成27年5月、姫路労働基準監督署が休園中の保育園に対し従業員17人へ未払いの残業代を支払うよう是正勧告していたことが報道されました。残業に関する社会問題としては、長時間労働だけでなく未払い残業代も深刻なものとなっています。
未払い賃金があることは分かりながらも、会社に請求できないまま泣き寝入りするしかないとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、しっかりと準備をして交渉を進めれば、正当な金額を支払わせることができます。
今回は未払いの残業代を会社に請求する方法や必要な証拠について姫路オフィスの弁護士が解説します。
1、あなたも残業代を請求できる? 確認すべき6つの事項
残業代を請求できる可能性があるのは、以下のような場合です。あなた自身のケースで該当するかどうかについて、念のため確認をしてみてください。
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(1)1日8時間以上/週40時間以上働いたのに残業代が支払われない
労働基準法では、使用者は、労働者に対して賃金全額を支払う義務があると規定されています。さらに「法定労働時間」が規定されており、法定労働時間を超過して働いた場合は割増賃金(残業代)を支払わなければならないとされています。
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(2)固定残業代制度を理由に残業代が支払われない
「給料にあらかじめ『固定残業代』が含まれているため、未払いの残業代はない」と使用者に支払いを拒まれるケースがあります。固定残業代制度とは、基本給にあらかじめ決められた時間分の固定残業代が含まれていたり、定額の手当が一定時間分の固定残業代とされるという制度です。
固定残業代制度が採用されている場合、実際に残業があってもなくても、必ず固定残業代が支払われているはずです。したがって、実際の残業時間が固定残業代に含まれる時間数の範囲であれば、未払いの残業代は存在しないため、別途残業代を請求することはできません。
しかし、規定されている固定残業時間を超えて残業しているにもかかわらず、その超過分の残業代が支払われていなかった場合には、別途超過分の未払い残業代を請求することができます。
なお、固定残業代制度を採用するためには、就業規則や雇用契約書などによって、給与に含まれる固定残業時間数を明示するなど、固定残業代制度についての説明を労働者に対して行う必要があります(固定残業代制度が労働契約上位置づけられている必要があります)。そのような書類が全くないなど、固定残業代制度を採用するために必要な要件を満たしていなければ、固定残業代制度は無効となり、会社側が固定残業代として扱っていた部分の給与は、残業代を算定する前提となる基礎賃金に組み込まれることになる上、固定残業代の支給をもって残業代の支払いとすることはできなくなります。
以上のように、固定残業代制度の有効性は、未払い残業代の額に大きな影響を及ぼします。 -
(3)午後10時以降や法定休日に働いたのに割増賃金が支払われない
午後10時以降に労働した場合は、深夜割増賃金を支払わなければならない旨労働基準法において規定されています。
また、法定休日に会社の指示により出勤した場合は、休日割増賃金の請求も可能となります。 -
(4)管理職であることを理由に残業代が支払われない
労働基準法では、「管理監督者」に該当する管理職については、残業代等に関する労働基準法上の規定が適用されないとされています。管理監督者とは、大要、経営者と同様の立場の業務を遂行しており、勤務時間に裁量が与えられている人のことをいいます。
労働時間を自分で決められないなど、経営者と同等の権限などが与えられない立場のまま、店長や係長や課長といった役職名だけ与えられている立場である場合は、管理監督者とはいえません。したがって、法定労働時間以上働いているのであれば、残業代が発生するということになります。
2、残業代を請求するには証拠が必要
残業代を請求するためには、まず自身の勤務時間や労働条件をなるべく正確に把握し、残業をしていたことや残業代が支払われていないことを証明する証拠を確保する必要があります。
代表的な証拠は以下の通りです。
- 労働条件通知書、雇用契約書
- 就業規則
- 給与明細書、源泉徴収票
- 預金通帳
- タイムカード、出勤簿、シフト表のコピー
- PCにログインした時間やログオフした時刻の記録データ
- 会社のIDカードなどに記録された出退社時刻のデータ
- 仕事のメールやFAXのやりとりのデータ
- 作業時間の記載がある業務日報のコピー
- 残業指示書など上司から業務上の指示があったことを証明する記録、メモ、メール
- 交通系ICカードの利用履歴、乗車履歴
- 自分でメモした毎日の出社時間、退社時間
自筆で逐一記入したメモは証拠として有力ですが、その場合は「8時03分」「20時55分」というように分刻みで記録しておくことも重要です。また、虚偽の記載内容が発覚すれば、証拠だけでなくそもそもの主張自体の信ぴょう性も低くなってしまいますので、正確な記録を残すことが求められるでしょう。
なお、2年分のデータを確保するのが理想ですが、最低1か月分の証拠を集められれば、平均の残業時間を割り出して未払いの残業代を計算することができます。主張の信ぴょう性を高め、スムーズに交渉を進めるためにも、正確な証拠をなるべく多く確保しておくべきです。
もちろん、退職した後でも証拠があれば残業代を請求することができます。証拠は在職中に確保しておくのが理想ですが、会社側にタイムカードや業務日報などの証拠の開示請求を行ったり、訴訟の準備として裁判所に証拠保全を申し立てたりして会社に証拠を提出させる方法もあります。ただし、未払いの残業代を請求する場合には、時効があることに注意が必要です。長期間残業代未払いが続いていた場合は、毎月残業代の時効が成立していることになりますので、速やかに残業代請求手続きに着手しましょう。
3、残業代を請求するための手段と手順
次に、残業代を請求するための方法と手順を解説します。
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(1)会社側と交渉する
未払い賃金に関する証拠を示した上会社側と交渉を行うと、会社が速やかに支払いに応じ、早期に解決ができるケースがあります。
ただ、会社側にそもそも話し合いの意思がない場合や、支払う意思が全くない場合は、交渉での解決は困難となります。また従業員が在職中の場合には、会社とトラブルになり職場に居づらくなることを恐れて請求しづらい部分もあります。
会社側と交渉を行うにしても、各種資料に基づき正確な未払い賃金額を算定した上で請求をしていく必要があるため、自分だけで会社側との交渉を行うハードルは高いです。もっとも、弁護士であれば、会社に対するタイムカード等の資料開示を含め、自分の代理人として会社側との交渉を行ってくれるため、スムーズに交渉を進めることができます。 -
(2)労働審判で請求する
労働問題を迅速に解決させるための法的な手続きのひとつが「労働審判」です。原則3回まで審理し、調停を試みた上で調停に至らない場合には労働審判を行うという手続きであり、長くても3~4か月ほどで終了します。労働審判には法的効力がありますが、使用者側から異議の申し立てがあれば労働審判は無効となり、通常訴訟に移行します。
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(3)民事訴訟で請求する
裁判所に訴えを起こして未払い賃金を請求する方法です。遅延損害金などの支払いが認められることがあるため、他の手段より最終的な支払金額が高額になる可能性があります。自らの言い分を証拠に基づいて主張した上、裁判所により双方の主張に対する法的な判断がなされるため、とことんまで会社側と争うことができ、結論に対する一定の納得感が得られるというメリットがある一方、最終的な解決までおおむね半年から1年以上かかるというデメリットもあります。
4、未払い残業代請求を弁護士に依頼するメリット
弁護士は、未払い賃金問題を解決するため、あらゆる法的手段を行うことができます。会社側に対する資料開示の請求や資料に基づく未払い賃金額の算出、証拠の収集や保全、和解交渉から労働審判、裁判の手続きまで幅広い手続きや交渉が可能です。
また、未払い残業代請求を弁護士に依頼すると、弁護士が自身の代理人として会社側と交渉するため、自分で会社側と直接折衝する必要がなくなるというメリットが生じます。さらに、弁護士であれば、あらかじめ民事訴訟や労働審判での見込みを視野に入れ、会社側と粘り強い交渉ができます。
5、まとめ
今回は未払いの残業代を請求する方法や、残業代の請求に必要な証拠について解説しました。残業代を請求する際は必要な証拠を集めた上で正確な請求金額を算出しなければなりません。自らの雇用主との交渉は非常に精神的なストレスを感じる作業となるでしょう。また、労働基準監督署は、企業の不正を是正させる役割を持ちますが、個人の未払い残業代を取り戻すために行動してくれるわけではありません。
未払いの残業代を会社側に請求するには、弁護士に依頼するのが最善であるといえます。
未払いの残業代にお悩みの方はベリーベスト姫路オフィスまでお気軽にご相談ください。弁護士であれば、適切なアドバイスを行えるだけでなく、あなたの代理人として未払い残業代を取り戻すための活動を行うなど、全力であなたをサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています