職場のモラハラ相談に必須な証拠の集め方と訴えて解決する方法
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姫路市を管轄している兵庫労働局が公表している「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、県内に設置された全12か所の総合労働相談コーナーへ寄せられた相談のうち、「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は1603件あったとのことです。
上司や同僚などからのいじめや嫌がらせをはじめとした職場のモラル・ハラスメント(以降「モラハラ」)で悩んでいる方は少なくないようです。しかし、労基署や弁護士などに相談をしても、証拠がなければ解決へ導くことは非常に難しくなります。そこで本コラムでは、モラハラ被害の相談先やモラハラを訴えるための証拠集めなどの対処法について、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。
1、パワハラとモラハラの違いを理解する
職場におけるハラスメントというと、まずイメージするのがパワー・ハラスメント(パワハラ)とセクシュアルハラスメント(セクハラ)かもしれません。しかし、夫婦間における問題と思われ、意外と見落とされがちなのが、モラル・ハラスメント(モラハラ)です。
あなたが受けているハラスメントがパワハラなのか、それともモラハラなのかを正しく認識しておくことは、今後の対策を考えるうえでも重要なポイントになり得ます。
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(1)パワハラとは?
一般的に言われているパワハラの定義は、以下の通りです。
- 職権などの権力(パワー)を背景にしている
- 本来業務の範疇を超えている
- 継続的に人格と尊厳を傷つける言動を行っている
- それらの行動で、労働者の働く環境を悪化させる、あるいは雇用不安を与えている
また、パワハラは主に以下の6つのタイプに分類されます。
- 身体的な攻撃……肉体的暴力をふるうなど
- 精神的な攻撃……人前で怒鳴る、机や壁などを叩いて脅す、人格を否定するなど
- 人間関係の切り離し……仕事を与えない、必要なものや情報を与えない、別室に隔離するなど
- 過大な要求……勤務に関係のない行動を強要する、違法なことを強要するなど
- 過小な要求……本人の能力や適性を考慮せず簡易な業務しかさせないことなど
- 個の侵害……思想や信条を理由に集団で監視や無視をすることなど
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(2)モラハラとは?
被害者に計り知れない精神的ダメージを与え得ること、そして加害者は自分が加害者という意識を持っていないという点においては、パワハラとモラハラは共通しています。
しかし、以下の通り異なる点が2つあるのです。
①パワハラは上司などが職権を利用したハラスメントであることに対して、モラハラは職場における立場に関係なく、上司のほか同僚やその他の関係者などが加害者であること。
②パワハラは身体的な攻撃もあり得ることに対して、モラハラは精神的な攻撃のみにとどまっていること。
つまり、(1)に示したパワハラの定義とタイプから、「職権などのパワー」と「肉体的暴力」を差し引いたうえで、加害者は上司に限らず同じ職位かそれ以下の同僚もあり得るというのがモラハラだといえるでしょう。
2、モラハラを相談する前に準備をしよう
あなたが受けているハラスメントがモラハラとわかったら、だれかに相談するなどの行動を急ぐ前に、あなた自身の気持ちの整理や証拠集めなどの準備を始めましょう。
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(1)最終的に自分がどうしたいのかを考える
会社を辞めてでもモラハラの加害者や会社に慰謝料を請求して徹底的に争いたいのか、それとも会社に残ることを考慮して穏便な解決を目指したいのか、それとも異動などでモラハラの加害者から離れることができるようになることを待つのか……。
モラハラの被害者であるあなた自身は、一体どのような解決(ゴール)を目指したいのか、今後のあなた自身のことを踏まえながら、冷静になって考えてみてください。 -
(2)証拠となる記録を集める
どのような形であれ、後述する第三者の力を借りてモラハラ被害の解決を図るためには、客観的な証拠が必要です。
証拠としては、以下のようなものが考えられます。まずは、集められる限りのものを集めてください。- モラハラを受けたことにより発症した適応障害、うつ病などに関する医師の診断書
- モラハラ発言の録音
- モラハラと考えられるメールやSNSの記録
- モラハラ被害にあったことについてのメモや日記
3、まずは社内で相談すべきか
あなたが受けているモラハラの被害を外部に相談する前に、まずは社内で相談することは選択肢のひとつです。
会社には社員がモラハラなどの被害にあわず安心して働くことができる環境を作る「職場環境配慮義務」があります。これを怠った会社には、法的にその責任を問われることがあります。
まずは人事やモラハラ加害者の上席など、だれに相談すべきか検討してみましょう。
しかし、残念ながら職場環境配慮義務の意識が薄い会社も現実に存在します。また、会社があなたの相談を握りつぶしてしまったり、会社におけるあなたの立場を危うくしてしまう可能性もあります。
社内で相談するときは、このような可能性もあることを念頭におきながら慎重にご検討ください。
4、モラハラを相談する社外窓口とは
モラハラ問題について第三者機関に相談するときは、以下にご紹介するような知見や対応力のある先がおすすめです。もちろん、どの相談先もモラハラの被害者であるあなたのプライバシーをしっかりと保護しています。
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(1)総合労働相談コーナー
総合労働相談コーナーは、全国の労働局や労働基準監督署内に厚生労働省によって設置されています。モラハラのほかにも、さまざまなテーマの労働問題について相談することができます。モラハラに悩んでいる場合は、まず総合労働相談コーナーに相談してみてください。
総合労働相談コーナーがモラハラ行為や会社のスタンスが労働関係法令などに違反している疑いがあると判断した場合は、行政指導などの権限がある担当部署に取り次いでもらえます。 -
(2)労働基準監督署
労働基準監督署とは厚生労働省の出先機関であり、会社が労働基準関係法令や職場環境配慮義務を遵守しているか監督しています。労働基準関係法令遵守に関して労働基準監督署が持つ監督権限は強く、労働基準監督署長および労働基準監督官は司法警察官として労働基準関係法令や職場環境配慮義務の違反などが疑われる会社について捜査、逮捕、送致などを行う権限も持っています。
ただし、モラハラやそれに対する会社のスタンスに客観的な法令違反が認められる、あるいはモラハラを受けている人に客観的な被害が発生していると立証できないものについては、あまり積極的な動きは期待できません。 -
(3)全労連 労働問題ホットライン
労働問題ホットラインを運営している「全国労働組合総連合(全労連)」は、日本全国に存在する労働組合の中央組織です。電話相談の場合、自動的に地域を所管する全労連の労働センターに転送されるようになっています。
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(4)NPO法人POSSE
POSSEとは、若者の労働問題の解決等を目的に活動しているNPO法人です。総合労働相談コーナーと同様、モラハラをはじめとした職場内でのさまざまな問題における相談を受け付けています。
5、あまりにひどい場合は刑事告訴も視野に入れよう
モラハラ被害により精神的苦痛を負った、休職を余儀なくされた、あるいはうつ病などの精神疾患にかかったというような場合は、加害者に対して損害賠償を請求することも考えられます。また、モラハラ行為があまりにも悪質である場合は、損害賠償請求に加えて刑事告訴も視野に入れておいてください。
以下では、モラハラに対して成立し得ると考えられる罪についてご説明します。
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(1)名誉毀損(きそん)罪
刑法第230条に規定する名誉毀損罪は、「ある人に関する具体的な事実を公然の場で示し、その人の社会的地位や名誉を毀損した」場合に成立します。ただし、同法第230条の2で、「公共の利害に関係して、その行為の目的が公益を図るためのものであり、それが真実であると証明された」場合は成立しないとされています。
職場のモラハラでいえば、公然と「○○にセクハラをしただろう」などと発言された場合が名誉毀損に該当する可能性があります。なお、名誉毀損罪に科される刑罰は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金です。 -
(2)侮辱罪
刑法第231条に規定する侮辱罪は、「事実を示さないで、人を公然の場で侮辱」したときに成立します。
たとえば、公然と「こいつは頭が悪い」、「親の顔が見てみたい」、「またこいつがミスするぞ」などの発言が侮辱に該当すると考えられます。なお、侮辱罪に科される刑罰は、1日以上30日未満の拘留、または1000円以上1万円未満の科料です。
6、弁護士へ相談するメリット
あなたが受けているモラハラ被害を確実に解決したいという場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
職場でのモラハラをはじめとした労働問題の経験豊富な弁護士であれば、加害者に対して損害賠償を求める民事訴訟を提起するときや刑事告訴を行うとき、あなたの代理人として裁判手続きや告訴のための手続きを行います。
労働問題の解決に経験と法的な知見を持つ弁護士をパートナーとすることにより、あなたが受けたモラハラ被害の解決が期待できるでしょう。
7、まとめ
職場におけるモラハラ被害は、非常にセンシティブな問題です。だからこそ、まずはだれが見てもモラハラを受けているとわかるような客観的な証拠が必要となりますし、ひとりで解決しようとせず、適切な機関に相談すべき問題となります。
証拠があり、損害賠償請求を視野に入れるのであれば、弁護士に相談しながら着実に解決のためのステップを進めることをおすすめします。モラハラ被害による損害賠償請求を行う場合は、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスでご相談ください。状況をうかがい、実際に請求が可能なケースかどうかも含め適切に判断し、あなたのためにベストを尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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