飲食店の廃業をする際に行う手続きの流れや必要な書類を弁護士が解説

2021年03月30日
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飲食店の廃業をする際に行う手続きの流れや必要な書類を弁護士が解説

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、兵庫県においても令和3年1月14日から2月28日までの期間において緊急事態宣言が発令されました。緊急事態宣言によって、外出自粛要請、営業時間の短縮要請、テレワークの推進などが求められています。特に飲食店の経営者にとっては、緊急事態宣言によって売り上げが減少するなど、その影響は甚大であるといえます。
そのため、将来の見通しが立たない飲食店などは、場合によっては廃業をせざるをえない事態に追い込まれることもあります。
飲食店が廃業するにあたっては、仕入先や取引先への買掛金や金融機関からの事業資金など返済しなければならない負債が多く存在することがありますので、単にお店を閉めるだけで廃業ができるわけではありません。
今回は、飲食店の廃業手続きについて、その流れや必要書類などをベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。

1、コロナ禍の逆風により、廃業が増える飲食店

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、飲食店を取り巻く環境が非常に悪化しています。外出自粛要請によって、飲食店での食事の機会が減り、時短営業の要請や酒類の提供の自粛の要請によって、1日の売り上げも大幅に減少しているようです。
信用調査会社の東京商工リサーチが令和2年12月1日から12月9日に実施したアンケート調査によると、「コロナ禍の収束が長引いた場合、廃業を検討する可能性はありますか?」という問いに対して、「ある」と回答した企業のうち、もっとも構成比が高かったのは、飲食店でした(61社中、20社)。また、廃業を検討する可能性があると回答した企業のうち、1年以内に廃業を検討すると回答した企業の割合は43.3%でした。
このように、今後新型コロナウイルスの感染状況が収束しなければ、多くの飲食店では、営業を継続することができず、廃業を余儀なくされるお店も増えてくることでしょう。

2、飲食店の破産手続きの流れ

では、飲食店が廃業し破産しようとするときには、どのような手続きをとる必要があるのでしょうか。飲食店の営業形態としては、法人経営のものと個人経営のものがありますので、以下ではそれぞれを分けて説明します。

  1. (1)法人経営の飲食店の破産手続

    法人経営の飲食店が破産をするときの流れは以下のとおりです。

    ① 弁護士との相談
    「このまま営業を継続しても赤字の状態が続くだけだ」、「利益がほとんどなく返済ができない」などの理由で廃業を考える飲食店経営者の方も多くなってきています。廃業にあたってどのような手段があるかについては、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。
    弁護士に相談をすることによって、飲食店の経営状態に応じた適切な債務整理の方法を提案してもらうことができます。やむを得ず破産手続きを選択することになったとしても、弁護士に依頼をして進めていくことで、スムーズな申し立てが可能です。

    ② 破産手続申立て準備
    弁護士は、飲食店の経営者から法人の資産状況や負債状況などを聞き取り、破産申し立てに向けて準備を進めていきます。
    個人の破産手続では、各債権者に対して弁護士から「受任通知」というものを発送し、今後の取り立てを禁止するとともに、連絡の窓口を弁護士にするように通知します法人の破産手続では、迅速性・密行性が要求される手続きですので、必ずしも個人の破産手続きのような「受任通知」を送るわけではありませんが、申し立てまで時間がかかるケースでは、受任通知を送ります
    また、飲食店で従業員を雇用しているときには、このタイミングで従業員の解雇を行います。従業員への未払いの賃金や退職金があるときには、それも破産手続きに含めて解決することになります。

    ③ 破産手続開始の申し立て
    破産申立の準備ができたら、裁判所に必要書類を提出して、破産手続開始の申し立てを行います。破産手続きが開始されるためには、裁判所が定める手続費用(予納金)の予納が必要になります

    ④ 債務者審尋
    法人の事業内容、債権者の数、負債の額、法人の資産、破産申立てに至った経緯などについて、裁判所で審尋(面談)が行われます。

    ⑤ 破産手続開始決定・破産管財人の選任
    破産手続開始の申し立てを受けた裁判所は、破産手続開始原因(支払不能または債務超過)があると認めるときは、申立棄却事由がある場合を除き、破産手続開始決定をします。また、裁判所は、破産手続開始決定と同時に、破産管財人を選任します。
    破産手続開始決定によって、会社の財産を管理・処分する権限はすべて破産管財人に移ります。また、破産手続開始決定によって、原則として債権者の個別の権利行使はできなくなりますので、債権者は、破産債権の届け出をし、配当を受ける以外には権利行使ができなくなります。

    ⑥ 債権者集会
    債権者集会とは、債権者に対して、破産者が破産に至った経緯や財産の換価状況・結果、今後の方針などを報告するために、裁判所で行われる集会のことをいいます。債権者集会には、法人の代表者も出席し、債権者からの質問などがあれば対応することになります
    債権集会は、約3か月に1回のペースで開催され、法人の規模や換価状況にもよりますが、複数回開催されることもあります。

    ⑦ 配当
    債権者による債権届出をもとに法人の負債を確定します。また、破産管財人は、法人に資産がある場合には、すべて換価をし、各債権者の債権額に応じて按分し、配当を行います。

    ⑧ 破産手続の終了
    換価した財産をすべて配当した場合には、破産手続は配当完了により終結となります。また、そもそも配当すべき財産がないという場合には、破産手続の廃止によって破産手続きは終了となります。

  2. (2)個人経営の飲食店の破産手続

    個人経営の飲食店が行う破産手続きの流れは、以下のとおりです。大まかな流れは法人経営の飲食店のときと同じですが、個人の場合には、最終的に免責決定を受けるという違いがありますまた、個人経営者の場合には、「少額管財」といって、法人破産のときのように破産管財人を選任した上で手続きを進めることが一般的です

    1. ①弁護士との相談
    2. ②破産手続申立て準備
    3. ③破産手続開始の申立て
    4. ④債務者審尋
    5. ⑤破産手続開始決定・破産管財人の選任
    6. ⑥債権者集会
    7. ⑦配当
    8. ⑧破産手続の終了・免責許可決定

3、破産手続きをするために必要な書類

破産手続きをスムーズに進めるためには、あらかじめ準備しておくべき書類があります。以下では、法人経営の飲食店と個人経営の飲食店に分けて説明します。

  1. (1)法人経営の飲食店の必要書類

    法人経営の飲食店が破産するときに必要となる書類としては、主に以下のものがあります。

    • 破産手続開始申立書
    • 債権者一覧表
    • 資産目録
    • 代表者の陳述書(報告書)
    • 破産申立についての取締役会議事録または取締役の同意書
    • 法人登記の全部事項証明書
    • 貸借対照表・損益計算書(直近2期分)
    • 清算貸借対照表(破産申立日現在)
    • 税金の申告書の控え(直近2期分)
    • 不動産登記の全部事項証明書
    • 店舗の賃貸借契約書
    • 預貯金通帳
    • 車検証
    • 自動車の査定書
    • 保険証券
    • 保険解約返戻金証明書
    • リース契約書
  2. (2)個人経営の飲食店の必要書類

    個人経営の飲食店が破産するときに必要となる書類としては、主に以下のものがあります。

    • 破産手続開始及び免責申立書
    • 陳述書
    • 債権者一覧表
    • 資産目録
    • 家計の状況
    • 住民票
    • 戸籍謄本
    • 給与明細書
    • 源泉徴収票
    • 店舗および個人の賃貸借契約書
    • 預貯金通帳
    • 不動産登記簿謄本
    • 固定資産評価証明書
    • 車検証
    • 自動車の査定書
    • 保険証券
    • 年金等受給証明書
    • 保険解約返戻金証明書
    • 確定申告書(過去2年分)
    • 決算報告書(過去2年分)
    • 事業に関する報告書

4、飲食店の廃業の手続きをする際には弁護士に相談するべき理由

飲食店の廃業手続きをするときには、以下の理由から弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)複雑な破産手続きをすべて任せることができる

    飲食店が破産するときには、法人経営または個人経営のどちらであっても破産管財人が選任されて、資産や負債状況について調査が行われます。そのため、破産管財人による調査をスムーズに進めるためには、申し立て段階において、必要となる書類をすべて収集し、破産管財人に引き継ぐことが重要となります。
    飲食店が破産するときには、上記のとおり、準備すべき書類の量が膨大であり、弁護士のサポートなく適切に書類を収集することは非常に困難です。また、飲食店の場合には、什器備品だけでなく食材などの在庫を抱えていることもあり、それらの資産が劣化しないように申し立て前に処分・換価しなければならないこともあります。不当な財産処分と疑われないようにするためにも、これらの行為をするときには弁護士と相談しながら慎重に行っていかなければなりません。
    このように飲食店の破産手続は非常に複雑ですので、弁護士に任せることが安心といえます。

  2. (2)適切な手続きの選択ができる

    法人破産をするときには、代表者個人も事業資金の借り入れの際の保証人となっていることが多いため、法人だけでなく代表者個人も同時に破産しなければならないケースがあります。
    もっとも、代表者個人が破産したときには、個人の資産も原則として債権者への配当に回さなければなりませんので、個人の破産も併せて行うべきかどうかについては、負債の状況と資産の状況を踏まえて慎重な判断が必要となります。また、個人の破産をするときであっても、自由財産の範囲を拡張する申立てをすることによって、破産後に手元に残せる資産を増やすことが可能です。
    弁護士であれば、会社の債務整理について客観的な立場から会社にあった最適な手段を選択することが可能ですので、どのような方法がよいか相談をしてみるとよいでしょう

  3. (3)廃業にあたって必要な届け出をサポートできる

    飲食店が破産することによって、負債については処理することができます。しかし、飲食店は、開業するにあたって、各機関に対して届け出を出していると思いますので、そちらに対する対応も必要になってきます。
    たとえば、保健所の営業許可を受けているときには保健所に対して「廃業届」を提出し、税務署に対しては、所得税の申告に関しては廃業届、消費税などの課税事業者の場合には事業廃止届書、青色申告の承認を受けているときには青色申告の取りやめ届出書などを提出しなければなりません
    飲食店の営業形態によって必要となる届け出が異なってきますので、弁護士と相談しながら進めていきましょう。

5、まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大によって、今後も廃業する飲食店が増えていくと予想されます。
税理士も含めたワンストップサービスを提供しているベリーベスト法律事務所では、破産などの法的整理以外の方法で窮地をしのぐ手段を検討できるかもしれません。経営に行き詰まっている飲食店経営者の方は、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスまでお問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています