著作権の譲渡や利用許諾に関する契約書を作成する際の注意点は?

2021年08月11日
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著作権の譲渡や利用許諾に関する契約書を作成する際の注意点は?

姫路市では、「しろまるひめ」というキャラクターが観光PRに一役買っています。「しろまるひめ」の著作権は、「社団法人姫路観光コンベンションビューロー」に帰属しているので、使用したい場合には同社団法人への許可申請が必要です。

同様に、書籍・音楽・映画などの著作物についても、創作者に「著作権」が認められています。そのため、これらの創作物を利用したい場合には、著作権に関する権利処理が必要です。

本コラムでは、著作権の譲渡や利用許諾などに際して、契約書を作成する場合の注意点を、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。

1、「著作権」とは何か?

「著作権」とは、「著作物」に関して発生する権利全般を意味し、「著作権法」という法律でルールが定められています

「著作物」は、「思想または感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」と定義されています。
つまり、何らかの形で個性が表現された創作物は、「著作物」として著作権法の保護対象となりうるのです。

著作者は、後述する各種の著作権を有し、著作物を独占的に利用したり、他人にその利用を許諾してライセンス料を受け取ったりすることができます

このように、著作者が著作物から生じる利益を確保できる仕組みを作って、創作活動を促進することが、著作権法の主な目的です。

2、著作権の種類について

著作権法上認められている著作権は、「著作財産権」「著作者人格権」「著作隣接権」の3つに分類されます。

  1. (1)著作財産権

    「著作財産権」とは、著作物を独占的に利用したり、他人に利用を許諾したりすることができる権利を意味します。
    単に「著作権」と呼ぶ場合には、この「著作財産権」のみを意味することもあります。

    著作権法上、著作財産権は以下のとおり細分化されています。

    1. ①複製権(著作権法第21条)
      著作物をコピーするなどして、オリジナルと同じものを制作する権利です
    2. ②上演権・演奏権(同法第22条)
      著作物を公の場で上演・演奏する権利です。
    3. ③上映権(同法第22条の2)
      著作物を公の場で上映する権利です
    4. ④公衆送信権等(同法第23条)
      インターネットなどを通じて、公に向けて著作物を送信したりする権利です。
    5. ⑤口述権(同法第24条)
      書籍や詩などを公の場で口述する権利です。
    6. ⑥展示権(同法第25条)
      美術品や写真のオリジナルを、公の場で展示する権利です。
    7. ⑦頒布権(同法第26条)
      映画や動画などを複製して、他人に頒布する権利です
    8. ⑧譲渡権(同法第26条の2)
      著作物(映画の著作物を除く)のオリジナルまたはコピーを譲渡する権利です
    9. ⑨貸与権(同法第26条の3)
      著作物(映画の著作物を除く)のオリジナルまたはコピーをレンタルする権利です。
    10. ⑩翻訳権・翻案権等(同法第27条)
      著作物を翻訳したり、編曲・変形・脚色・映画化などの方法によって、オリジナルに改変(翻案)を加えたりする権利です。


    著作権者は、当初は上記の著作財産権をすべて専有しています。
    そのため、著作物の利用を希望する者は、著作権者から利用許諾を受けるか、著作権を譲渡してもらう必要があります。

  2. (2)著作者人格権

    「著作者人格権」とは、著作物の創作者としての人格的利益を保護する権利を意味し、著作権法上、以下の3つが認められています

    1. ①公表権(著作権法第18条)
      未公表の著作物を社会に発表するかどうかなどを決定する権利です。
    2. ②氏名表示権(同法第19条
      著作物のオリジナルを社会に発表する際、実名やペンネームを著作者名として表示し、または匿名で発表することを決める権利です。
    3. ③同一性保持権(同法第20条)
      著作物およびそのタイトルについて、意に反する改変を受けない権利です。


    著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡ができないとされています(同法第59条)。
    そのため、仮に著作者が他人に著作権を譲渡した場合でも、著作者人格権は著作者に残ります。

  3. (3)著作隣接権

    著作隣接権は、音楽・映画などの実演系の著作物に関して、著作者ではないものの、その流通に重要な役割を果たす主体に認められる一定の権利を意味します。

    著作隣接権が認められているのは、以下の4つの主体です。

    ①実演家(著作権法第90条の2以下)
    俳優・舞踊家・演奏家・歌手など、公の場でパフォーマンスをする人をいいます。
    実演家に認められる著作隣接権は、以下のとおりです。
    • 氏名表示権
    • 同一性保持権
    • 録音権、録画権
    • 放送権、有線放送権
    • 送信可能化権
    • 譲渡権
    • 貸与権等権

    ②レコード制作者(同法第96条以下)
    音楽のCDを制作する会社などをいいます。
    レコード制作者に認められる著作隣接権は、以下のとおりです。
    • 複製権
    • 送信可能化権
    • 譲渡権
    • 貸与権等

    ③放送事業者(同法第98条以下)
    テレビ、ラジオなどによる無線放送を業として行う者をいいます。
    放送事業者に認められる著作隣接権は、以下のとおりです。
    • 複製権
    • 再放送権、有線放送権
    • 送信可能化権
    • テレビジョン放送の伝達権

    ④有線放送事業者(同法第100条の2以下)
    ケーブルテレビや有線音楽放送など、有線放送を業として行う者をいいます。
    有線放送事業者に認められる著作隣接権は、以下のとおりです。
    • 複製権
    • 再放送権、有線放送権
    • 送信可能化権
    • 有線テレビジョン放送の伝達権

3、著作権に関する契約の主なパターンと、それぞれの注意点

著作権が関わる契約書にはさまざまなパターンがありますが、主に想定されるのは「制作委託契約」「ライセンス契約」「著作権譲渡契約」の3種類です。

著作権に関する権利処理を適切に行うには、契約書をきちんと作成することが重要になります。契約書のパターンによって、規定すべき事項や注意点が異なるので、弁護士に相談のうえでトラブルを防げる契約書を作成しましょう。

  1. (1)制作委託契約

    「制作委託契約」は、何らかのコンテンツ(音楽、動画、記事、ウェブサイトなど)の制作を他社に委託し、制作された著作物の納品を受けることを内容とする契約です。

    制作委託契約を締結する際には、納品される制作物に関して、以下の事項を盛り込んでおくことが大切です

    • 制作物に関する著作権を含む一切の知的財産権は、業務委託者(発注側)に譲渡されること
    • 業務受託者(受注側)は、納品した制作物に関して、著作者人格権を行使しないこと


    また、著作権譲渡に関する条項を規定する際には、著作権法第27条に規定される「翻訳権・翻案権等」と、第28条に規定される「二次的著作物の利用に関する原著作者の権利」についても、譲渡の対象に含まれることを明記する必要があります。
    これらの権利については、譲渡する旨を明記しておかないと、受託者側に権利が残ってしまうので注意が必要です(同法第61条第2項)。

  2. (2)ライセンス契約

    「ライセンス契約」は、著作権者から著作物利用に関する許諾を得る内容の契約をいいます。

    ライセンス契約の作成時に重要となるのは、許諾の範囲を明確に規定しておくことです。
    許諾の範囲が不明確になっていると、許諾の範囲内か範囲外かについて、後に契約当事者間でトラブルが発生するおそれがあります。

    トラブルを防ぐためには、契約締結時点で想定される利用方法をできる限り列挙し、解釈の余地を少なくしておくことが大切です。

  3. (3)著作権譲渡契約

    「著作権譲渡契約」は、著作権者が他人に対して、著作権を譲渡する内容の契約をいいます。

    著作権譲渡契約書を作成する際の注意点は、制作委託契約の項目で挙げたのと同様に、以下の事項を契約書に盛り込んでおくことです。

    • 譲渡人は、著作物に関して、著作者人格権を行使しないこと
    • 著作権法第27条および第28条に規定される権利についても、譲渡の対象に含まれる旨を明記すること

4、著作権に関する契約を締結するときは弁護士に相談を

著作権が関係する契約を締結する場合、当事者間での契約トラブルを防止するため、必要事項を漏れなく盛り込むとともに、明確な文言で契約条項を作成する必要があります。

想定されるリスクへの対処法が盛り込まれていなかったり、二重の意味に解釈できる文言が含まれていたりすると、当事者同士の主張が食い違い、深刻なトラブルに発展するおそれがあるためです。

できる限りトラブルを防げる契約書を作成するには、弁護士への相談が有効ですベリーベスト法律事務所の弁護士は、著作権に関する取引の実情を踏まえ、トラブル防止に役立つオーダーメイドの契約書案をご提案いたします

著作権に関する契約の締結を予定している方は、一度ベリーベスト法律事務所へご相談ください。

5、まとめ

著作権に関する契約を締結する際には、契約の目的や想定されるリスクに応じて、きちんと条文を作りこむことが、トラブルの回避につながります。

ベリーベスト法律事務所では、著作権に関する契約トラブルのリスクを最小限に抑えられる契約書の作成をサポートします。さらに、著作権に限らず、日常的に発生する契約マターを随時ご相談いただける顧問契約サービスを、依頼者のニーズに合わせてご用意しております。

著作権その他の問題に関する契約のリーガルチェックをご要望の企業担当者の方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています