風俗店での労働中、客に盗聴・盗撮された! 慰謝料請求できる?

2021年09月28日
  • 一般民事
  • 盗聴
  • 風俗
  • 示談
風俗店での労働中、客に盗聴・盗撮された! 慰謝料請求できる?

姫路市内にも風俗店が存在します。そして、風俗では客側の行為を原因とするトラブルがまれに生じているようです。

たとえば、盗撮や本番行為が有名ですが、なかには、風俗店の密室に盗聴器や盗撮カメラを仕掛けられてしまったという方もいるでしょう。拡散されて発覚したなどのケースもあり、慰謝料や損害賠償を請求したいとお考えになるのは当然のことです。

本コラムでは、そのようなトラブルに対処するときの注意点と示談などの解決方法について、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。

1、盗聴や盗撮はどのような罪に問える?

盗聴や盗撮とは、他人の建物に盗聴器や盗撮カメラなどを仕掛け、会話などを無断で盗み聞く行為です。盗聴イコール犯罪と考える方もいるかもしれません。しかし、この認識は誤りです。諸外国と比べて立法上の立ち遅れであるという批判はありますが、日本では盗聴行為そのものを罰する法律は存在しないのです。

したがって、盗聴器や盗撮用カメラを使用することや盗聴器や盗撮用カメラを販売・購入することについても罰則規定は設けられていません。そして、場所を問わない盗聴行為によって逮捕してもらうことはできないのです。

しかし、盗聴に伴って以下のような行為が認められた場合は話が異なり、それぞれに罰則が定められています。

  1. (1)建造物侵入罪

    盗聴器や盗撮カメラを仕掛けるために風俗店に無断で侵入した場合は、刑法第130条に規定する「建造物侵入罪」が適用される可能性があります。建造物侵入罪に科される罰則は3年以下の懲役または10万円以下の罰金であり、これは未遂にも科されます。

  2. (2)器物損壊等罪

    同じく盗撮や盗聴のために機器を仕掛けるために風俗店内の備品を破損させた場合は、刑法第261条に規定する「器物損壊等罪」が適用される可能性があります。器物損壊罪に科される罰則は3年以下の懲役または30万円以下の罰金、または科料です。科料とは、1000円以上1万円未満の刑罰を指します。

  3. (3)有線電気通信法違反

    有線電気通信法とは、電話など有線電気通信設備の設置や使用を規制する法律のことです。同法第13条の規定により、風俗店にある電話を改造して盗聴器を仕掛けた場合に科され得るものであり、罰則は5年以下の懲役または100万円以下の罰金です。これは未遂にも科されます。

    また、同法第9条は「有線電気通信の秘密は侵してはならない」と規定しています。これに違反し電話の通話内容を盗聴した場合は、同法第14条の規定により2年以下の懲役または50万円以下の罰金が未遂にも科されます。

  4. (4)そのほかに問える可能性がある罪

    盗聴の場合は難しいケースがありますが、盗撮の場合は、状況によって以下の罪に問える可能性があります。

    ●迷惑防止条例
    迷惑防止条例とは、各都道府県で制定されている条例です。兵庫県では、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」という名称の条例がこれにあたります。姫路市内の風俗店で盗撮行為をすると、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せる可能性が出てきます。

    ●軽犯罪法違反
    上記の迷惑防止条例違反に該当しない形で盗撮を行われたケースでは、のぞき見行為に該当し得るため、軽犯罪法違反として罪に問える可能性が出てくるでしょう。軽犯罪法違反で有罪になった場合は、1日以上30日未満の身柄拘束を受ける拘留、または1万円以下の科料を科されます。

    ●リベンジポルノ法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)違反
    性的な画像や動画を、撮影対象者の同意なくインターネット上に公開する行為をしていた場合に問える罪です。撮影対象者を特定できるような画像や動画を公開した場合は、公表罪として3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。他方、公開目的で盗撮行為をしていた場合は、公表目的提供罪にあたるため、有罪になれば1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることになります。

2、慰謝料を請求できる理由や根拠

民法第709条および第710条によりますと、慰謝料とは加害者の不法行為によって受けた精神的苦痛について、被害者が有する損害賠償請求権に対し支払われるべき金銭のことを指します。

被害者にとって盗聴されることは決して気分のよいものではない、というだけではありません。盗聴により第三者に知られたくないことが公表されたり、盗聴された内容が適当に編集されたりすることにより事実と異なることが第三者に公表されるおそれもあります。したがって、誰であろうと盗聴などされたくないことは間違いないでしょう。

これに対して盗聴することは相手方のプライバシー権を侵害する行為にあたる可能性があります。「プライバシー権」とは、一般的に、「他人がみだりに個人の私的事柄についての情報を取得することを許さず、もって人格的自律ないし私生活上の平穏を維持する利益」とされています(東京地裁昭和62年11月20日判決)。

プライバシー権は、当然ながら風俗店・従業員・客を問わず誰にでも存在します。したがって、盗聴や盗撮をされた被害者が精神的苦痛を負えば、その賠償として、盗聴行為の加害者に対して慰謝料を請求できる可能性があります。

3、慰謝料や損害賠償請求するとき確認すべきこと、および注意点

盗聴行為が特定され、慰謝料などを請求するとき、対応について気を付けるべき点を紹介します。

  1. (1)慰謝料や損害賠償の金額は妥当か確認する

    気持ちとしては大変傷つき、いくらもらったとしても許せない、納得できないと思われるかもしれません。しかし、請求する慰謝料額の妥当性についてはしっかりと検証する必要があります。

    慰謝料や損害賠償を請求する場合は、盗聴・盗撮されたことによって起きた経済的損失やかかった医療費などの検討が必要でしょう。いくら精神的苦痛を受けたとしても、それに見合わない高額の慰謝料は認められないのです。

    盗聴・盗撮が原因で慰謝料を請求したいとお考えのときは、弁護士のサポートを得ることをおすすめします。

  2. (2)示談を成立させるべきか検討する

    盗聴や盗撮の態様によっては、前述したように民事上の慰謝料や損害賠償請求に加えて、刑事事件として罪を問える可能性があります。被害を受けた行為が刑事罰に該当するものである場合、まずは警察に相談することが重要です。

    その場合、おそらく相手から示談を持ち掛けられるケースが多くあるでしょう。示談とは、刑事事件において民事における争いごとを、被害者と加害者による話し合いで解決することです。具体的には、慰謝料などを支払ってもらったうえで、加害者を許すことを明言することを求められるケースが多いでしょう。

    示談が成立すると、加害者が受ける刑事罰が軽減される可能性が出てきます他方で、示談を成立させないまま相手方が処罰を受けることになると、被害者側から改めて慰謝料の請求などを行わなければならなくなります。場合によっては、裁判で争うことになる可能性もあり、トラブルの解決がより遠くなってしまうことになる可能性が高いでしょう。また、経済的にも慰謝料などの支払いが困難になってしまうケースは少なくありません。

    もし加害者側から示談を持ち掛けられたときは、弁護士に相談することをおすすめします相手が提示した金額が適切かどうかも含め、アドバイスが可能です

  3. (3)脅さない

    慰謝料を請求する場合、速やかに解決したいという気持ちから、加害者を脅してしまうケースがあるようです。風俗店やその従業員、あなたのご友人などが、相手が支払いを拒んだときに「勤務先や家族に知らせる」「支払わなければ警察に通報する」などと脅してしまった、という可能性もあります。

    脅してしまうと、いくらあなたが受けた被害が事実であっても、適切な慰謝料などを受け取れなくなってしまう可能性が出てきますまた、その行為自体が犯罪とされる可能性もあります

    適切な金額を受け取るためにも、示談交渉は弁護士に依頼して進めることをおすすめします。

4、風俗トラブルを弁護士に相談するメリット

盗聴・盗撮など風俗におけるトラブルの被害を受けた場合、あなたひとりで相手方と交渉することは非常に難しいのではないでしょうか。場合によっては、あなたの味方であるはずの店舗側からも守ってもらえないケースも起こりえます。

被害を受けたとき、もっともおすすめできる方法とは、早急に弁護士へ相談し、あなたの代理を依頼することです

弁護士は、これまで述べたような慰謝料や損害賠償の請求についてすべての手続きを任せることができます。トラブル解決のためにあなたの代理を依頼された弁護士は、直ちに加害者との交渉に取り組みます。あなた自身が相手方と直接会って話し合う必要がなくなるのです。

5、まとめ

盗聴・盗聴などの風俗トラブルに被害者として巻き込まれてしまったとき、相談先がなくひとりで悩んでしまう方は少なくないようです。おひとりで対応しようとしたり、法律に詳しくないご友人に相談して何らかの行動をしたりする前に、まずは弁護士に相談してください。

あなたが単独で加害者と交渉する場合と比べてより良い結果が期待できるとともに、裁判などさまざまな手続きを弁護士に任せることができます。結果として、あなたの不安感や負担は大きく軽減されることでしょう。

ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスでは、盗聴・盗聴などの風俗トラブルに関するご相談を承っております。お困りの際は、ひとりで抱え込まず、まずは弁護士にご相談ください。あなたのために、ベストを尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています