営業妨害をされた! 損害賠償請求は可能? 弁護士に依頼すべきケース

2021年12月23日
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営業妨害をされた! 損害賠償請求は可能? 弁護士に依頼すべきケース

令和3年9月、姫路市在住の男がイベントの開催を妨害したとして逮捕されたという報道がありました。お店を経営していると悪質なクレーマーや利用者などから営業妨害を受けることがあります。近年では、インターネット上の掲示板やSNSによる書き込みで営業妨害を受けることもありうるでしょう。

このような営業妨害を受けた場合には、お店の売り上げにも影響が出ることがありますので、営業妨害をした当事者に対して損害賠償請求をしたいと考えるのも当然です。では、営業妨害を受けたとしてどのようなケースであれば損害賠償請求をすることが可能なのでしょうか。

今回は、営業妨害を理由として損害賠償請求が可能なケースや弁護士に依頼すべきケースについてベリーベスト法律事務所 姫路オフィスの弁護士が解説します。

1、営業妨害をされたと主張できるケース

営業妨害を理由に損害賠償請求をすることができるケースとしてはどのようなものがあるのでしょうか。以下では、営業妨害を理由とした損害賠償請求が可能となる代表的なケースについて説明します。

  1. (1)インターネット上の書き込みによる風評被害

    インターネット上の掲示板やSNSなどに根拠のないうわさ話や悪意のある誹謗中傷が書き込まれた場合には、一瞬にして拡散されてしまいます。たとえば、多くの方が、お店や飲食店を選ぶ際には、口コミサイトなどを利用しますので、マイナスの情報が書き込まれてしまうと、「こんなに評判が悪いなら行くのをやめようかな?」と利用者が離れていってしまう可能性があります。また、「あの会社はブラック企業だ」などと書き込みがなされた場合には、従業員を募集しても優秀な人材が集まらないことも起こり得るでしょう。
    このようなインターネット上の書き込みによって営業妨害を受けた場合、生じた損害を請求できることがあります

  2. (2)名前や住所を偽って飲食店で宅配の注文

    宅配注文を受け付けているお店に対して、名前や住所を偽って大量の注文を行うことがあります。虚偽の情報による注文ですので、指定された場所に配達を行ったとしても当然代金を受け取ることができず、注文を受けた商品が無駄になってしまいます。

    このような虚偽の注文をしてお店に損害を与えた場合には、営業妨害を理由としてその損害の賠償を請求することが可能です

    なお、このようなケースは偽計業務妨害罪として刑事責任を追及することも可能です

  3. (3)店内で大声で騒いでトラブルを起こす

    お店に嫌がらせをする目的で店内で大声を出して騒いだりすることがあります。店内に他に客がいた場合には、トラブルに巻き込まれたくないと考えてお店を出て行ってしまいますし、新たに利用する客も利用を控えてしまいます。このようなトラブルが生じると売り上げが大幅に減少するなどの損害を受けることになりますので、トラブルを起こした相手に対し損害賠償請求をすることができる場合があります

    なお、このようなケースは威力業務妨害罪として刑事責任を追及することも可能です

2、損害賠償請求額の決め方と相場

業務妨害を理由に損害賠償を請求する場合には、以下のような決め方があります。

  1. (1)慰謝料・無形損害

    営業妨害によって法人や事業者の名誉、信用など社会から受ける客観的評価が低下することがあります。個人の事業者であれば、このような場合には慰謝料として請求することになりますが、法人の場合には無形損害として請求していくことになります。

    慰謝料や無形損害の金額については、諸般の事情を総合的に考慮して決めることになりますので、明確な計算式というものがあるわけではありません。そのため、示談交渉など当事者間の話し合いで決める場合には、お互いが合意をすれば100万円や200万円といった金額にすることもできます。他方、お互いの合意が得られない場合には、裁判を起こして裁判官に判断してもらうことになります。その場合の金額としては、事案によって異なりますので一概にいうことはできませんが、20万円から50万円といった低い金額になるケースは少なくありません

  2. (2)営業損害

    営業損害とは、業務妨害などがなければ本来得られたはずの逸失利益のことをいいます。営業損害というと業務妨害によって減少した売り上げのことをいうと考える方もいますが、実はそう単純なものではありません。企業や事業者の営業損害の場合には、売り上げの減少に伴い、水道光熱費や広告費といった経費が減少していることもありますので、それらを考慮しなければ正確な営業損害を算定することができません。そのため、実際には、売り上げの減少分から固定費を除いた経費を控除することによって営業損害を算定することになります

3、営業妨害を理由に損害賠償請求をする手順

営業妨害を理由に損害賠償請求をする場合には、一般的に以下のような手順で行います。

  1. (1)損害賠償請求前の準備

    営業妨害を理由に損害賠償請求をする場合には、いきなり請求するのではなく、以下のような準備を行う必要があります。

    ① 相手方の特定
    営業妨害を行った当事者に対して損害賠償請求を行うことになります。そのため、まずは営業妨害を行った相手方を特定する必要があります。実店舗などで受けた営業妨害の場合は、防犯カメラなどから相手を特定しなければならないことがあり、まずは警察に通報したほうがよいというケースは多々あります。

    インターネット上での書き込みによる営業妨害の場合で相手方を特定する方法としては、発信者情報開示請求という方法があります。発信者情報開示請求とは、プロバイダなどに対して、書き込みをした人物のIPアドレス、住所、氏名などの情報の開示を求めることをいいます。一般的には、任意の開示は期待できませんので、仮処分や訴訟といった裁判手続きによって行うことになります。

    ② 損害額の算定
    損害賠償請求を行うためには、具体的に生じた損害を算定することが必要となります。虚偽の注文によって商品が無駄になってしまったという場合には、商品代金相当額が損害になりますし、営業損害を請求する場合には、売り上げと固定費を除いた経費を細かく計算する必要があります。

    ③ 証拠の収集
    営業妨害を行った相手に損害賠償請求をしたとしても、相手が営業妨害を否定することも考えられます。また、たとえ営業妨害をした事実を認めていても「そんなに損害が生じているはずがない」などとして損害額を争う可能性もあります。

    そのため、損害賠償請求を行う前に、請求内容を裏付ける証拠を収集する必要があります。裁判になれば証拠の有無によって結論が変わってきますので、証拠の収集は非常に重要となります。

  2. (2)示談交渉

    上記の準備ができた段階で、相手方に対して損害賠償請求を行います。口頭で請求することも可能ですが、後日の証拠として残すためにも、一般的には、内容証明郵便を利用して書面を送る方法で行います

    営業妨害を行った相手方が事実を認めるようであれば、金額や支払い方法などを話し合って、合意ができた場合には、合意書や示談書といった書面に残しておくようにしましょう

  3. (3)裁判

    営業妨害を行った相手方が事実を認めなかった場合や損害額に争いがあって示談交渉では合意に至らなかったような場合には、最終的に裁判所に訴訟を提起することになります。

    裁判では、お互いの主張・立証を踏まえて、裁判官が請求内容を認めるかどうかを判断することになります。また、損害賠償請求を行う原告の側で相手方の責任や損害の発生とその金額などを立証していかなければなりません。訴訟手続きは、非常に専門的な手続きになりますので、適切に手続きを進めるためにも弁護士のサポートを受けることが必要になります。

4、弁護士に相談したほうがよいケース

営業妨害を理由に損害賠償請求をする場合には、弁護士のサポートがなければ適切に対応することが難しいケースがあります。以下のようなケースに該当する場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)損害額の算定が難しいケース

    営業妨害を理由に損害賠償請求をする場合には、営業損害の算定など損害額の算定が難しいケースも多く存在します。適切な損害額を算定しなければ、営業妨害によって被った被害を回復することができません。弁護士であれば、営業損害を算定する知識とノウハウがありますので、弁護士に任せることによって適切な損害額を算定することが可能になります

  2. (2)相手方との交渉を行う余裕がないケース

    企業や事業者の方は、日常の業務に追われていますので、営業妨害をした相手と交渉を行う時間的な余裕がないということもあります。弁護士であれば、代理人として相手方と交渉を行うことができますので、このようなケースでは弁護士に任せてしまうのがよいでしょう。

    その他、営業妨害を行った相手が特定できないときも、弁護士であれば、弁護士会照会といった弁護士でなければ利用することができない調査方法や、発信者情報開示請求などを用いて、少ない情報しかなかったとしても相手方を特定することができる場合があります。

    弁護士は、法的観点から相手の責任を追及して、被害の回復ができるように全力でサポートします

5、まとめ

営業妨害を受けたとき、適切な対応を行わなければ、被害が拡大し、回復困難な損害が生じることもあります。また、刑事事件化できるケースもあるので、営業妨害行為を受けたときにはすぐ警察に通報することもひとつの手です。

さらに、営業妨害によって損害を受けたときは、損害賠償を請求できる可能性が出てきます。ただし、場合によっては費用倒れになりかねません。営業妨害を理由に損害賠償請求をご検討されているときは、ベリーベスト法律事務所 姫路オフィスまでお気軽にご相談ください。実際に請求が可能かどうかから、具体的な費用感まで、親身になってアドバイスを行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています