債権回収を行う際知っておくべき法律とは? 法改正の内容や回収の流れ
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兵庫県企業倒産集計によると、平成31年の企業倒産件数は487件(帝国データバンク神戸支店)でしたが、新型コロナウイルスの影響により、令和2年以降は倒産件数が増加してくると予想されます。
経済の低迷が続くことを懸念し、相手が倒産する前に早めに債権を回収しておきたいと考えている個人や会社は多いでしょう。債権回収をめぐっては法改正により回収の実効性が高まると期待されており、これを活用して早めに回収を進めておくことをおすすめします。
そこで今回は、債権回収に関係する法改正の内容や具体的な回収の流れを、姫路オフィスの弁護士が解説します。
1、債権回収に関する法改正の内容とは?
令和2年、民事執行法と民法が改正されました。その中でも特に債権回収に関しては「財産開示手続きの見直し」「第三者からの情報取得の新設」「消滅時効の統一」という大きな変更がありました。それぞれ簡単にご説明します。
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(1)財産開示手続きの見直し
財産開示手続きとは、債務者の財産内容を明らかにする手続きです。裁判所に申し立てを行い、債務者が裁判所に報告する形で開示されます。
一般的に回収が進まない場合、最終手段として強制執行で財産を差し押さえ、換金して回収します。強制執行をするためには相手の財産を特定する必要があり、その手段のひとつが財産開示です。
この財産開示について、民事執行法改正により次の2点で規定が変更されました。- 対象債権名義の範囲拡大
- 財産開示拒否に刑事罰
【対象債務名義の範囲拡大】
これまで財産開示をするためには、確定判決や和解調書などの「債権名義」が必要でした。しかも、判決や和解成立にはかなりの時間がかかるため、なかなか強制執行までたどりつけないという課題がありました。
そこで法改正により、財産開示ができる債務名義の範囲が「仮執行宣言付判決」や「公正証書」にまで拡大されました。
特に公正証書であれば裁判をする必要がないため、財産開示が利用しやすくなると期待されています。
【財産開示拒否に刑事罰】
改正前の財産開示手続きでは、債務者が裁判所の呼び出しを無視したり、うその報告をしたりした場合でも、罰則は30万円以下の過料という行政罰にとどまっていました。そのため債務者が開示に協力しないケースがありました。
今回の法改正ではこの罰則が行政罰から刑事罰になり、内容も「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」に強化されました(民執法第213条1項5号、6号)。
財産開示に協力しないことが違法行為にあたるため、債務者が協力するようになると期待されています。 -
(2)第三者からの情報取得手続きの新設
民事執行法の改正により、債務者の財産を把握する方法として「債務者以外の第三者からの情報取得手続き」が新設されました。
これは裁判所が第三者である銀行などに、以下のような債務者の財産情報を提供させる制度です。- 金融機関からの預貯金や上場株式、国債などに関する情報
- 登記所からの不動産に関する情報(令和3年5月16日までに開始予定)
- 市町村、日本年金機構などからの給与(勤務先)に関する情報
なお給与に関する情報は「養育費や婚姻費用など」と「生命・身体の侵害による損害賠償」を求める場合にのみ取得できます。
また申し立てには執行力のある金銭債権の債権名義が必要です。 -
(3)消滅時効の統一
これまで債権の時効は、当事者の性質や債権の種類によってかなり細かく規定されており、わかりにくい側面がありました。
改正民法ではその細かい区分けをやめ、次のように時効を統一しました(民法第166条)。- 権利を行使できるようになったときから10年
- 権利を行使できるようになったことを知ったときから5年
なお契約が改正法施行前、つまりは令和2年3月31日までの債権については、改正前の時効が適用されます。また未払い残業代などの債権の時効については、経過措置が設けられています。
2、確実に回収するためにしておくべきこと
今回の民事執行法の改正は、債権者にとってメリットが大きいといえます。債権回収をできるだけ確実にすすめるためには、改正法を活用しながら次のようなことをしておきましょう。
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(1)迅速に手続きを進める
債権は時間がたてばたつほど回収率が低くなる傾向があります。
「来月には支払う」などという債務者の言葉を信じていると、倒産してしまったり、ほかの債権者に先に財産を差し押さえられてしまったりすることがあります。
そのためただ待つのではなく、迅速に回収に動くことが大事です。強制執行を視野に入れ、内容証明郵便の送付や財産確認などを早めに進めておきましょう。 -
(2)債務者の財産情報を集める
債務者にどのような程度の財産があるのか、債権者がその全容を知ることは困難です。財産を隠している可能性もあります。財産の内容がわからなければ、効果的な強制執行ができません。
法改正により財産開示や銀行などからの情報提供により情報が得やすくなりましたので、これを活用したり弁護士に協力してもらったりして、情報収集に努めましょう。 -
(3)時効に注意する
債権には時効があります。時効期間が過ぎれば、原則として回収はできません。
そのため正確な時効完成の日付を把握し、それを念頭において回収を進める必要があります。時効完成が迫っている場合には、内容証明郵便などを使って時効の完成猶予の措置を取りましょう。
正確な時効完成日がわからない場合は、弁護士に依頼すれば確認できます。
3、債権回収の手順
債権回収には大きくわけて「法的手続きを使わない回収」と「法的手続きを使った回収」の二つがあります。それぞれご紹介します。
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(1)法的手続きを使わない回収
債務者が長年の取引先や友人の場合、裁判をしたくないと思う方もいるでしょう。
その場合には次のように法的手続きを使わない方法を検討してください。- 直接交渉
- 内容証明郵便で請求
- 和解
まずは対面や電話で、支払期限が過ぎている旨を伝えて支払いを促します。
それでも支払ってもらえない場合には、内容証明郵便を送りましょう。内容証明郵便を使えば請求内容などを記録として残すことができるため、その後裁判などになった際に証拠として活用できます。
ただ会社の経営が傾いているなど支払いたくても支払えない事情がある場合には、分割払いや担保の設定なども検討しましょう。
支払いについて債務者との話し合いがまとまったら、和解契約をします。
和解で強制執行について定め、その内容を公正証書にして残しておけば、支払いがなかった場合に強制執行ができます。 -
(2)法的手続きを使った回収
法的手続きを使えばより確実に回収できます。主に次のような流れで進めましょう。
- ① 直接交渉で督促
- ② 内容証明郵便で請求
- ③ 法的手続き(民事調停、支払督促、少額訴訟、訴訟)
- ④ 強制執行
法的手続きを使わない回収と同様に、最初は交渉や内容証明郵便で回収を目指します。
相手が応じない場合には、法的手続きに入りましょう。相手との関係や債権の金額などによって民事調停や、支払督促、少額訴訟、訴訟などが利用できます。
仮執行宣言付支払督促や確定判決などの債権名義が得られれば、強制執行ができます。
4、債権回収を弁護士に依頼すべき理由
債権回収は法律トラブルの中でも複雑で、ストレスになりやすい傾向があります。個人や会社で独自に行うことも可能ですが、次のような点から弁護士への依頼がおすすめです。
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(1)回収率を上げられる可能性が高い
債権者が単独で支払いを求めても、なかなか回収が進まないことは珍しくありません。そこで弁護士に交渉を依頼すれば相手に回収への本気度が伝わり、一気に支払いに応じてもらえることがあります。
債権回収に詳しい弁護士であれば、交渉ノウハウや効果的な回収方法についても知っているため、回収率が上がることが期待できます。 -
(2)法的手続きを任せられる
交渉がうまくいかない場合には支払督促や訴訟に移行しますが、利用するためには法律の専門知識が必要です。債権回収についての知見が豊富な弁護士に任せれば、事情に合わせて最適な回収方法を選び、迅速に進めてくれます。
交渉から調停、裁判まで任せることができるため、債権者の負担も軽くなります。 -
(3)債権回収会社ができない業務も任せられる
債権回収に関する法律事務を弁護士以外が行うことは、弁護士法違反に該当します。しかし、債権回収会社(サービサー)については、債権管理回収業に関する特別措置法に基づき、管理回収行為が許可されています。
ただし、回収できるのは銀行による貸付債権などの「特定金銭債権」に限られており、個人間の金銭の貸し借りは対象外です。
一方、弁護士は債権の種類や依頼者に関係なく、あらゆる債権を取り扱うことができます。 -
(4)ストレスを軽減できる
何度も「支払ってくれ」と催促するのは、債権者にとっても大きなストレスになるものです。特に債務者が旧知の仲で支払えない事情があることを知っている場合は、心がすり減ることでしょう。また、逆に支払いを求めると激怒されたり、脅されたりすることもあります。
弁護士に依頼すれば、あなたは直接相手とやりとりをする必要がありません。依頼を受けた弁護士は、交渉から裁判までほとんどの手続きを代行できるため、あなたの精神的負担を軽減でき、手間や時間も省けます。
5、まとめ
法改正により、今後債権回収はしやすくなると期待されています。とはいえ、たとえ法的に有効な債権名義をお持ちであっても、債権回収自体が大変な作業となることに変わりはありません。
進まない債権回収に悩んでいるのであれば、ベリーベスト法律事務所姫路オフィスにお任せください。ご事情に合わせて適切な回収方法を検討し、回収を進めます。まずはお気軽にお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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